「では、私たちはどのように……」

「ん? いつも通りでいいよ。えっとね、きっと魔王たちの暗躍で人間種が窮地に陥れば、間違いなくこの世界の創造神が出しゃばってくる事になると思うんだ。僕が見たいのはそれなんだよ」

魔神の少年は語る。

彼曰く、今のままで自分たちの計画が成功する事なんて微塵も思っていないし、むしろ行動の指針はこの失敗を見てから始まるのだという。

「そもそもね、僕の親友である無敵の龍神と、あの創造神を相手にたかが魔王級の一匹や二匹で勝負になる訳がないんだ。そんな事で揺らぐような世界なら、とっくに僕が滅ぼしてるよ」

「…………」

世界を滅ぼす事など何でもない事かのような魔神の物言いに、魔王龍はその真意を悟ろうとじっと瞳を見つめる。

魔神はその視線に気づきつつも、あえて相手にはせず雄弁に語りを進めた。

「だから僕は知りたいんだ。世界の脅威として暗躍する魔王を相手に、彼らが『どう解決するのかを』ね。ただ機械的に創造の神が人類の敵を薙ぎ倒すのか、それとも傍観し人間たちの手にその世界を委ねるのか、もしくは別の何かなのか。それをこの目で確認したい」

まるで外見相応の子供のように目を輝かせ、とても楽しそうに魔神は笑った。

決して相容れない仇敵であるはずの龍神や創造神を、とても大切な友達かのように、愛しき存在であるかのように。

そして上位存在である魔神の方針に、魔王龍の方も『やはり我が君はお変わりないようだ』と納得する。

彼には魔神の思惑が読み切れていないが、世界の敵として君臨すると決めたその日から、自分の主の本質だけは今も変わっていないと安堵したのだ。

「でもそうだなぁー。このままだと、今の時代の勇者がいつものように強権を振るって邪魔に入りそうだし、残念だけどそちらの方は僕が相手をしようか。あくまでも僕が見たいのはこの世界に降り立った創造神の思惑と、親友である龍神の行動指針だからね」

まったく面倒だなぁと愚痴りながら、少年は勇者を計画の舞台となる大陸から引きはがし、同時にこの魔大陸におびき寄せるべく、瘴気による奇跡を行使する。

もともと瘴気とはマナという創造神にしか扱えない奇跡の力を依り代にし、不正な手段で自身の権能として行使する事を可能とした状態だ。

故に瘴気の根源とも言える魔神は、限定的ながらも魔法という概念を超えた、ある種の奇跡を起こせるのである。

「やっぱり創造の神に愛されている人間種って本当にズルいと思うよ。なんだよ職業勇者って、完全にバランスブレイカーじゃないか。せっかくいい感じに僕の部下が賢者を煽っているのに、ここで勇者に登場されちゃったら全部台無しになっちゃう」

ぶちぶちと文句を垂れながら勇者を大陸に誘導し、準備を整える。

この世界でもぶっちぎりの実力者であり、また人間の希望である職業勇者を片手間に誘導できるあたり、やはりただ者では無いのは明らかだった。

それからある程度の誘導を終えて一息ついた魔神は、仕事は終わったとばかりに創造神のいる騒動の中心地、人間大陸に目を向けその成り行きを見守る。

「さあて、今度の問題は一筋縄ではいかないよ創造の神。あなたがこの騒動をどう鎮めるのか、お手並み拝見といこうじゃないか。こちらの手札は魔王と魔族、そして世の混乱そのもの。対してそちらの手札はこの世界だ」

まともに戦えば最終的な敗北は必至。

だがだからこそ、やる意味がある。

そう意味ありげな言葉を零し、魔大陸の中心でくつくつと静かに笑う姿は、まるで創造の神と世界を舞台にして戦う盤上遊戯ボードゲームを楽しむ子どものようであった。

そして魔の者が暗躍する中、時を同じくして魔神の動きに気づいた存在が二人。

……いや、二柱いた。

「この瘴気の流れ……。どうやら魔神が動き出したようですね」

「ふむ」