プロローグ
──Side『***』──
ああ……。
ダメだ、またしても失敗だ。
やはり上手くいかぬ。
何度創造しようと、何度やり直そうと彼らは滅んでゆく。
万能の創造主たる私を
何故なのかは分からない。
ただ唐突に、時代の節目節目に彼ら特異点は世界に現れ、その時代をかき乱していくのだ。
問題を解決へと導くため、私はその度に自らの手で特異点への終止符を打ってきた。
当然、創造主たる私にとってそのような事は造作もない事である。
しかし、それは一時
かの特異点は時を経て同じ問題を抱えた存在として、何度でも生まれ変わるからだ。
まるであるべき解決法が他に存在するかのように、まるで何かを待っているかのように、創造してきたどの世界でも特異点は問題を抱えて生まれ直し、いずれは世界を滅ぼす。
私はこれを『創造の
そしてどうやら、この破綻を回避するには私のやり方では上手くいかないらしい。
唯一安定した星として成功を収めたこの地球でさえ、もう特異点は存在しているのだから。
もはやこの『創造の破綻』は、この創造主たる私の想定を超えたものである。
だが、だからこそ面白い。
私の想定を超えたこの特異点に、ある意味では可能性とも言える『創造の破綻』に、期待しよう。
かの星で世界と共に滅び、唯一私の心にこの疑問を残したあの者に、世界を託そうではないか。
◇
「なあ、魚って空を飛んだりすると思うか?」
「何言ってるんですか先輩? というかなんで魚が空を飛ぶんですか、完全に物理法則とか無視してますよ」
とある会社のオフィスで、二人の男が呟く。
片や黒髪に黒目の標準的な出で立ちの中年男、三十二歳独身の
最近ちょっと腹が出てきたのが悩みらしい。
片や茶髪にカラコンの、一見するとガラの悪い不良にも見える出で立ちの若手社員、後輩の
ちなみに斎藤の部下である。
「そ、そうか……、そうだよな。いや最近やってるゲームでな、そういう生き物がいるんだよ」
「へぇ~、ファンタジーものですかね? ちなみにタイトルは何ですか?」
「異世界創造のすゝめ」
「え?」
宮川は聞き返す。
「いやだから、『異世界創造のすゝめ』っていうアプリ」
「いや、知らないゲームですね。俺が知らないなんて、よっぽどマイナーなのかなぁ」
斎藤の言葉を聞いて宮川はさっそくアプリを検索するが、どうやらヒットするものが無いらしく、険しい表情を浮かべる。
「……見つかったか?」
「いや、見つかりませんね。……もしかして先輩、俺の事からかってますか?」
「そうか。いや、見つからないならいいんだ。忘れてくれ」
「はぁ、そうすか?」
二人は斎藤の持つ謎のアプリ『異世界創造のすゝめ』について議論を交わす。
宮川は何か
そして切り替えるように次の話題へと移る。
「というか先輩、今日の昼ヒマですか? メシ食いに行きません?」
「いやパスで、今日は残業したくないしな」
「えー、たまには後輩を連れてってくださいよ。もちろん先輩の
その言葉を聞いた斎藤は
「ダメったらダメだ。また今度な。せっかく仕事も残さず帰れるんだ、俺にもプライベートの時間くらいくれ」
「へーい、分かりやしたー」
「なんか山賊の下っ
「気分ですよ、気分」
斎藤は部下の軽い態度に溜息を吐きつつも、確かに飯くらい奢ってやるべきだったかと反省し、この埋め合わせはまた今度しようと考える。
一応は上司としての責任も感じているようだ。
なんとも苦労人な性格である。
意外と真面目なのかもしれない。
しかしそんな日常を満喫しながらも、『異世界創造のすゝめ』をやり繰りする平凡な中年の男性である斎藤健二は数日後、突然地球上から姿を消す事となる。