トップ5%社員は
まず単独行動する
75%が初動を重視
大炎上になる前に、迅速な対応が必要
仕事にトラブルはつきものです。問題は深刻化する前に手を打ったほうがいいことを「5%社員」は理解しています。
例えば、火事は初期消火によって延焼を防ぐことができます。火がくすぶっているうちに消火活動を開始すれば、火は消しやすいので、初動をどうするかが重要です。
ある重機メーカーで、会社と社員の間で起こったトラブルについて相談を受けました。あとの調査でわかったのですが、問い合わせをしてきたのはその会社の「5%社員」でした。
彼女は人事担当で、トラブルの対応に追われていました。彼女個人の判断で、社会保険労務士や産業医などの専門家、労働基準監督署に即座に連絡を取り、対象の社員に対して正しい対処をしていました。
私は、働き方改革のコンサルタントと謝罪のプロという両方の立場で彼女を支援しました。訴訟問題に発展しそうだった事態が、結果として大きな問題に至りませんでした。
私は、前職のマイクロソフトで最高品質責任者を3年半務めていました。
その就任期間中には500件以上の謝罪訪問を経験しました。お客様のシステムを止めてしまったり、誤った金額で請求書を送ってしまったり、トラブルは日々尽きませんでした。その中でも最も多かったのはクラウドサービスの障害です。
データセンターなどで問題が発生し、サービスが停止してしまい数百社から問い合わせを受けました。そのようなサービス障害では、発生から1時間以内に対処することで顧客へのインパクトを最小化できました。
例えば、問題の回避策は打てないか、代替手段はないか、問題はあと何時間で収束しそうなのか、といった情報を迅速に集め、すぐに顧客に提供するのです。SMS(ショートメッセージ)などを使って一斉送信する仕組みも整えました。
もちろん、問題を起こした側に不備があり、反省および改善すべき点は多くあります。しかし、初動を正しく行うことで、顧客ひいては自社のインパクトを最小化できることを500件以上の謝罪訪問で学びました。
トラブルになりかけた時に、最初の対応がうまくできれば大事には至りません。
ところが、初動を間違えてしまうと、互いの感情が対立してしまって、取り返しのつかない問題に発展してしまいがちです。このケースでは、迅速かつ正確な対応が求められたため、同じ問題を解決したことのある第三者に相談したことが問題を深刻化させないポイントになりました。部外者に介入されると、その分費用がかかります。
しかし、社内で関係者を集めて会議を重ねていると、くすぶった火は炎に変わっていくかもしれません。外部の専門家に依頼することに反対する人がいたら、説得に時間をかけなくてはいけないでしょう。その間に、火柱を上げて大炎上してしまうかもしれません。
今回のケースのように、社内外にかかわらず経験と実績を持っている人に依頼し、火がくすぶっている状態のうちに消火活動ができたのは、「5%社員」である人事担当の英断のおかげでした。彼女は、外部の専門家から正しい対処法と時間を買ったのです。もちろん、自分の責任外のことを勝手にやったらコンプライアンス違反です。
しかし、トラブル対応をするときは、自分の裁量の中で独断で決めていったほうがスピード解決できます。「5%社員」は、問題の対処をする際にプランB(当初のプランが失敗した際のバックアッププラン)を持っています。このケースで彼女は、弁護士とも連絡をとり、事態が悪化したらすぐに訴訟の準備ができるようにしていたのです。
課題を与えて動く
個人に裁量権を与えて、自らで考えさせ、率先して動くような組織は強いです。これまで605社の働き方改革に携わった中で、相談がきた時点で既に「成功しています」という流通会社がありました。
その会社は、問題を解決したいのではなく、さらに利益を上げるための「儲け方改革」を手伝ってほしい、とのことでした。働き方改革に関しては問題がないと言っていたので、確認したところ、現場に自由と責任を与えて自主性を重視する組織でした。
その会社の社員がよく口に出していたのが、「初動を早く」という言葉でした。
まったく何も考えずに行動を起こすのではなく、各社員が持つ経験を元に判断させていたのです。
「もちろん、全てがうまくいくわけではない」と言っていましたが、もし問題が起きたらチームとして支援する体制もできていました。その会社の「5%社員」は、次のように語ってくれました。
「考えてばかりいては、商機を失います。合議を取っていては問題が深刻化して手が付けられなくなります。この行動ポリシーが組織に根付いているので、ビジネス開発などの新たな挑戦をしたい社員がほとんどです」
複雑な課題を解決するには、多くの解決策が必要です。
その際には、多様なメンバーの力を借りてアイデアの量にこだわったほうが良いです。
一方、スピードを求められる緊急性の高い状況では、個の実現力(行動力+結果)が必要です。創造力は多様性重視のチーム戦で、実現力はスピード重視の個人戦です。
このバランスを取ることが各組織のリーダーに求められています。