「いい人」ばかりの組織は良くない


「いい人」ばかりの組織は危険です。

 組織の規律に従い、「なぜ、今それをやらなければならないのか?」を考えずに思考停止のまま、組織の指示に流されてしまうからです。

 忖度や過剰な気遣いが長時間労働を生んでしまいます。各クライアント企業で1年間に作成された資料の23%は過剰な気遣いによるものです。重要「そうな」資料を作ったり、怒られないように資料の作成枚数を増やしたりといった意味のない作業が横行し、実際使われもしないのです。

 また、「いい人」に限って、組織的な不正に加担してしまう可能性もあります。

「いい人」は、社会的な常識とか道徳といった感情的な判断基準に、簡単に自分の考えを預けてしまいます。

 そういうものを疑うことなく思考停止していると、自分なりの価値観など持てません。結果として受け身になり、上からの同調圧力に負けてしまいます。


「いい人」たちは、「自分たちは社会的規範を守る、常識的で模範的な存在だ」と勘違いしています。そして、「5%社員」は「いい人」たちにとって異質な存在です。

 規律よりも自由を好み、プロセスよりも成果を重視する「5%社員」は、ときに「いい人」たちにとって邪魔な存在です。「普通やらないでしょ」「それって常識でしょ」という言葉を使って、「5%社員」の尖った言動を抑制しようとします。常識的で多数派であることをいいことに同質を好み、多様性を受け入れません。

「5%社員」のように飛び抜けた成果を出し評価をされている人が際立ってしまうと、成果を出せずにいる「いい人」は、相対的に価値が下がり、存在が危ぶまれるので、陰で「5%社員」の足を引っ張ります。


「いい人」は他人と摩擦を起こすことを避けます。

 たとえ周囲と違う意見を持っていたとしても、避けられることを恐れて迎合します。そうすれば波風が立つこともなく、「いい人」にとって快適に過ごせるからです。

 しかし、ずっとそのままでは、いずれ「あの人、何を考えているかわからないね」と言われるようになり、「いい人」は「どうでもいい人」と化します。

 そうなってしまうと、会社が新しいプロジェクトなどをスタートするときに声がかからなくなったりして、活躍の場がだんだんとなくなっていきます。



摩擦を避けたら成果は生まれない


 摩擦は必要です。イノベーション(=新結合)も異質との摩擦から成り立っています。画一的なもの同士が迎合していても化学反応は起きません。

 私が20年以上前に新卒で入社した通信会社では、摩擦がご法度でした。

 当時は、製品やサービスの力が強かったので、需要に向けて供給することを実直に実行できる人が評価されていました。そしてその評価者は直属上司のみでしたから、上司に気に入られるかどうかで評価で分かれてしまうのです。

 当時は、深夜にメロンを買って来いと上司に言われたら、タクシーで買いに行ってくるような実直な社員が評価されてしまったのです。そのために、ノーと言わない人、実直で「いい人」が評価されていました。そうやって評価された人材は、社外で活躍できる能力は持っていませんでした。

 さすがに今は市場も顧客も変わり、人事評価の基準や方法も変わっていますが、過去の慣例にとらわれているオジサンは大企業に数多くいます。現在でも組織に迎合しないと「面倒くさいヤツだ」と言われるかもしれません。

 しかし、大事な時に「あいつちょっと変わっているけど何かアイデアが出てきそうだから呼んでみるか」ということになります。

 そうして、成果を残す「5%社員」にチャンスが巡ってくるのです。



相手に気持ちよくイエスと言わせるコミュニケーション術


 主張を一方的に訴えても周りは受け入れてくれません。

 上位20%ぐらいの若手エースに多い「これ絶対におかしいです、こうすべきです」と「べき論」を一方的に主張したところで、意見は通りにくいのです。

「5%社員」は意見をするときに、他者への配慮や感謝を当然忘れません。

「メンバーがどうしたら気持ちよく協力する気になってくれるか」を考えて発言します。コミュニケーションのツボを心得ているのです。

 また、そうした気持ちよいコミュニケーションの術だけでなく、率先してチームメンバーへの協力を申し出て、実際に協力することに労を惜しまない点も特徴といえます。

 つまり、日頃からそうした協力を申し出ることが、自分の意見をどうしても押し通したい場面でスムーズに賛同を得られる土台となっているのです。


 提案や意見については、「一発OK」をもらいたがる一般社員が多いものです。意見を少し否定されただけで、まるで人格を否定されたようにへこんでしまう。場合によっては、逆上してしまう人もいます。完璧にこだわりすぎる人は、摩擦をさけたがるのです。

「5%社員」は自分の意見を通したい時は、反対する人を説得するだけの根拠とロジックを用意します。他人の意見を取り入れて、自分の考えをより良くしようとする視野の広さと冷静さも必要です。ですから、はじめに「そうだよね」と相手の意見を受け入れて、そのあとに「私はこう思う」と主張するのです。

 会社という組織において、個々の社員が独力で完結させることができる仕事はむしろ限られています。従って周囲の協力をどれだけ得ることができるかも、仕事ができる人物かどうかを見定める上で重要なバロメーターとなります。

 つまり、優秀な人物の共通的な特徴は、他者への協力の仰ぎ方がうまいということです。自分一人だけですべて完結する仕事は稀で、多くの仕事は自分以外の人と関わりあい、相互に影響しながら行うものです。


 異なる意見の人たちとの摩擦を避けずに話し合うには、物事に対する自分なりの価値観と評価軸をしっかり持っていないといけません。突出した結果を出す「5%社員」は、一般社員が持ちえないほどのしっかりした信念と価値観を持っています。

「5%社員」が一般社員と異なるのは、自分に対する自信と強い信念があるからです。これと決めたらブレずに突っ走ります。そこが一般社員と最も異なる点です。



思考停止しないために常識を疑う


「5%社員」は絶えず「内省」を繰り返して、自分だけの価値観を磨いています。

 その価値観を元に、一般的に信じられている常識や道徳を疑っています。


 例えば、みんなが「イエス」というものを「ノー」の立場から考えています。多様なものの見方をして、その根拠を探し、自分の価値観と合っているか確認しています。

 ニュースを見るときにもそういう視点を持っているそうです。「新型コロナウイルスの流行により、トイレットペーパーが品薄になっている」というニュースを聞けば、「どういう根拠があるだろうか」と考えて国内のトイレットペーパーの原産地が中国ではなく日本であることを確認します。その上で自宅の在庫を確認して行動をとります。

 また、読書でもそうです。車を買おうと思ったら、「車の選び方」という本を読むのではなく、まったく反対の内容を主張している「車を買ってはいけません」という本も読むのです。すると、「車を買う」とだけ考えていたときに気づかなかったリスクが見えてくるので、より満足度の高い車の購入方法がわかるようになります。