別の調査で、3817名の社員に「働く上での不安や不満があるのはどういう時ですか」と聞きました。

 すると、「上司や同僚が自分のことを見下していると感じたとき」と回答する方が17%もいたのです。

 その回答をする社員がいくつかの組織に集中していたので、追加ヒアリングをしました。すると予想外にも同僚を見下す社員はほとんどおらず、むしろ同僚を尊敬している社員が多くいました(秘密厳守で答えてもらったので、本音で話してくれたと思います)

 後日、心理学を勉強したところ、「見下されている」と感じることが多いのは感情一致効果の可能性があることがわかりました。

「見下されている」と感じて他人の些細な言動から、自分を見下していると思われる情報ばかりを集めてしまうそうです。このために落ち込んだり、疑心暗鬼な状態から抜け出せなくなったりしてしまう……という状況に陥るそうです。

 ただ、無意識のうちに被害者のポジションを取る人も多く、そういう人は周りの人に攻撃的になり、組織の輪を乱すこともあるようです。


 こういった「見下されている妄想」を取り除くにはどうしたらいいかを突き止めるために、行動心理学とコミュニケーション学について調べました。

 専門家を交えてディスカッションした結果、解決策として「ザイオンス効果」を使うのがいいだろうという仮説を立てて実験しました。

「ザイオンス効果」は、単純接触効果とも呼ばれており、繰り返し接するとその人に対する好感が高まるといった心理効果です。対面して笑顔で対話するとザイオンス効果が高まることもわかったので、調査で問題のあった4つの組織で上司と同僚全員に対して2週間のうち15分は1対1で会話するように依頼しました。抵抗する人もいましたが、67%の社員が実践してくれました。


 2か月実施したところ、「上司や同僚が自分のことを見下していると感じた」と過去に回答した人の78%が行動実験後に「思い違いであった」と答えたのです。

 コミュニケーション頻度を高めると不要な思い込みや過剰な気遣いがなくなることがわかりました。ちなみにこの実験を行った4社では、その後「上司と部下の1対1の対話」を毎月実施することが社内ルールとなり、それを怠った管理職はマイナス評価となるように人事評価制度も変更されました。この変更から1年以上経過した4社は、社員満足度調査の結果が対前年比で18%以上アップしました。中には30%以上アップした会社もあったほどです。

 このコミュニケーション頻度を高める施策は、社内会議の時間を減らし、顧客からの評価が上がるという相乗効果も確認できました。


 組織内で円滑なコミュニケーションを取るためには、特段の用がなくても同僚に話しかけて相手に関心を持ち、良好な人間関係を構築する必要があります。

「5%社員」はその効果を知ってか知らずか「今ちょっといい?」をよく使います。

 そして、このカジュアルなコミュニケーションを組織に浸透させると、働きがいや満足度が増し、業務にもプラスの影響が出ます。