妄想が23%の無駄な資料を生む
資料に関するアンケートを行ったところ、95%の一般社員の回答は、次のようなものでした。
「資料をしっかり作らないと上司に怒られるのではないか」
「しっかり伝えるために資料を作る」
「重要そうな情報を盛り込んでおきたい」
「質問されそうな内容は資料に入れておく」
例えば、経営会議では気合を入れて資料を作成する人が多いです。しかし、頑張って作成した資料の20%程度は経営会議で使われていませんでした。従業員800名以上のクライアント企業67社では、役員会議を1時間開催するのに、現場の社員たちは70~80時間かけて資料作成を準備していました。
しかしながら、実際に議論されるどころか、めくられることすらなかった資料は23%もあり、それを用意する時間は不要だったわけです。
資料をたくさん作れば評価されるだろうという妄想を持ち、夜遅くまで頑張って資料を作成して完成したら充実感を得て、本番では使われず評価もされない……これが95%の一般社員によくあることなのです。
重要「そうな」資料の93%は必要なかった
製造業と情報通信業のクライアント3社で、重要「そうな」資料がその後本当に使用されたのかを検証したことがありました。
このクライアント3社はペーパーレスを強く推進するために、保管する紙資料を減らすプロジェクトを進めていました。最初はペーパーレスに反対する社員が多く、1~2年目は正直うまくいきませんでした。
そこで、組織変更や部署異動、オフィス移転の際に、その後に使用するであろう重要「そうな」資料にラベルを張り、それが1年以内に使用されたかどうかを確認しました。
調査対象は720文書で約1・2万枚におよぶ資料でしたが、その93%は使われるどころか触られることすらありませんでした。重要「そうな」資料は、保有者の勝手な思い込みであり、保管スペースを奪う元凶になっていたのです。
評価の対象は努力ではなく成果に
20年前に営業担当であった私は、大型案件を獲得するためにパワーポイントで提案資料を作り込み、入札に参加しました。
第一次審査で、先方の担当者は私の資料の中身を見ずに作成枚数を数え始めたのです。
すると「他社よりも50枚少ないので、再提出してください」と言われました。
その事実を知った当時の上司は、提案書の中身を見なかった相手を批判するのではなく、資料枚数が少なかった私を激しく怒ったのです。
「本当にその案件を受注したいのであれば、魂を込めて資料をたくさん作れ」
と質ではなく量の指示をしてきました。
その案件をどうしても受注したかった私は、徹夜して資料を作り直し、翌日に提案資料を再提出して、何とか次の選定フェーズに進むことができました。20年前は、成果ではなく努力で相手を評価してしまう傾向がありました。
その流れをひきずっている中高年社員は大企業に多く存在しています。世界の中で競争力があった20年前の日本企業では、「言われたことだけやる」部下が求められていたのです。
上司から言われたとおりにすれば売上げが右肩上がりで伸びていく少品種・大量生産の時代ですから、上司や会社への忠誠心が問われていました。言われた通りに動く働きアリをたくさん集めたほうが会社は儲かるのです。
このビジネスモデルでは、どれだけ会社に忠誠心があるか、どれだけ汗をかいて頑張ってきたが人事評価につながっていたのです。
しかし、今多くのビジネスパーソンが苦労しているのは、「自分たちで考えてやれ」と言われること。
商品の機能ではなく、その機能が生み出す価値や体験にお金を出す「コト消費」に変わった現代では、顧客の欲しいものが複雑で見えにくくなりました。そうなると現場の社員が市場のニーズを把握し、その需要と供給のギャップを即座に埋めることが求められているのです。商品をサプライ(供給)することではなく、顧客の課題を解決するソリューションやイノベーションが必要になったのです。
会社は成果に対して評価するようになり、徹夜して苦労したというだけでは評価されにくくなっています。
むしろ、働き方改革関連法案の影響で、残業する人は評価が低くなっているのが実情です。各社で評価されている「5%社員」は、より短い時間で成果を出し続けています。