はじめに
働き方改革で目指すべきは、残業を削減することでも、有休を消化することでもありません。限られた時間の中でより大きな成果を残し、より多くの報酬や幸せを得ることです。
早く家に帰れる人がすごいのではなく、早く帰っているのに突出した成果を出し続けられる人がすごいのです。
かつては、実直に実行できる人が評価されていました。そしてその評価者は直属の上司のみでした。結果として、上司に気に入られるかどうかで評価が分かれてしまうケースが散見されました。
極端な話、深夜に「メロンを買って来い」と上司に言われたとしても、タクシーで買いに行ってくるような実直な社員が評価されてしまったのです。
そのため、上司のご機嫌取りがうまい人、おべっかを使う人、上にやさしく下に厳しい中間管理職、愛想がよい人、社内政治がうまい人、NOと言わない人……が評価されることが多々ありました。
しかし、そうやって評価された人材は、社外で活躍できる能力を持っていませんでした。
顧客の嗜好が変わり、新たなテクノロジーが出現し、変化の激しい中で、儲け方(=ビジネス)が変わったので、それに応じて評価制度も変わりました。直属の上司のみの評価を絶対評価としていた時代とは異なり、上司以外の管理職が評価を行う360度評価を採用する企業も増えてきたのです。
そうなると、上司だけに気に入られるだけでは出世できず、同僚や他部門の関係者などから評価されないといけませんから、より公平な評価がされることになります。
またコミットメント制度やタレントマネジメントなどの普及により、各社員が定量的な目標を持たされる機会が増えたので、上司から寵愛されているだけでは評価されないのです。
私が代表を務めるクロスリバーでは、これまでに605社に対して働き方改革の支援を行ってきました。その過程で各社の人事評価「上位5%」の社員は、どのような行動・働き方をしているか」について調査をしてきました。
顕著な成果を出した「5%社員」たちは、優れた働き方を実践しており、そこに再現性の高いルールが存在し一般化できる要素があるはずだ、と考えたからです。
クライアント企業25社にご協力いただき、「5%社員」と、そうではない95%の一般社員の働き方をリサーチしてきました。サンプル数は、「5%社員」とそれ以外の社員約9000名、計1万8000名です。
各社にご協力いただき、「5%社員」の働き方を徹底的に調査しました。
対象となる「5%社員」には、いつもどおりの行動をお願いして、デスクに定点カメラを設置したり、ICレコーダーやセンサーを装着してもらったり、クラウドサービスや対面ヒアリングなどを通じて行動や発言を記録したりしました。
それ以外にも個人を特定しない形でメールの内容を分析したり、チャットやオンライン会議などの利用履歴も集めました。
これらのデータをAIと専門家によって分析して、「5%社員」の共通点や、95%の一般社員との違いを抽出したのです。
「環境など条件が違うから、一般化なんてできるわけない」と言われることもありました。
しかし、「5%社員」の調査を元に導き出した成功ルールは、その後、29社で実証実験を行い、「5%社員」以外でも効果を出したのです。中には効果が出なかった失敗例もありましたが、再現できた成功例は多数ありましたので、本書では両方とも紹介しています。
この再現実験でわかったのは、成功は失敗との二者択一なのではなく、失敗の先に成功があるということです。失敗を積み重ねて学び、行動を変えていくことで成功に到達することができるのです。
つまり、選択にいつまでも悩んでいるのではなく、リスクを抑えながら行動の数を増やしていったほうが成功にたどり着きやすいのです。変化の激しい中で生き残るには、何もしないで止まっていることがリスクになるのです。
突出した成果を出した「5%社員」は、しばしば「できるやつ」と特別扱いされるかもしれません。しかし、彼らが会得したコツは他の人でも活用できます。そうすることで、「5%社員」の成果は別の個人や組織の成果となり、拡がっています。
お伝えしたいことは、「シンプルな行動と思考のルールをつかんでしまえば、それは再現できる可能性が十分にある」という事実。
だからこそ「5%社員」は別の部門に異動しても成果を出しています。きっと彼らは、全く別の業種に転職しても成果を出し続けるでしょう。
社内で評価される人は、自分の意思で選ぶことができる権利を得ます。会社や上司から「自由と責任」を得て複数の選択肢を持つことができるのです。同じ部署で昇進するのか、異動して新たな職種の挑戦するのか、昇格して自分のやりたいビジネスに携わるのか、といった選択肢が得られやすいのです。
選択肢が複数あれば、「自分のしたいこと」と「自分のできること」を元にして自分で選べるのです。
上から言われたから嫌々仕事することが少なくなりますので、我慢労働をする働きアリから脱却できます。
「5%社員」のシンプルな行動と考え方を自分とを照らし合わせてください。同じで安心することもあれば、違って学びになることもあります。
そして自分にはないものを見つけて、自ら行動実験をしてみてください。自分の行動を変えたら、振り返ることを忘れないでください。うまくいったら続ければよいですし、だめなら止めれば良い。このように内省によって得た学びを次の行動に活かしていけば、必ず成功に近づきます。
本書で紹介する成功パターンは、すぐにパッと魔法のように成果が出るわけではありません。ダメージを低減させながら、成功に向けた行動実験をするための材料です。
読んで終わりではなく、ぜひ行動をしてみてください。
「あ、意外と良かった」という感覚を持てたら、あなたの意識が変わった証拠です。
この改善行動を繰り返していくことで変化に対応でき、錆びることなく長い人生を楽しむことができます。
上位「5%社員」のシンプルな考えと行動を参考にするだけで、短い時間で成果を出し続けることができるようになります。
2020年9月