……ああ、これはいい夢だと、
いつもと違ってなんだか甘い
「えっと、おはようございますご主人様♡」
視線の先ではクールに整った顔立ちの少女。
「朝ご飯の準備ができましたよ。そろそろ起きてくださいね、ご主人様」
「……おやすみメイドさん」
「ええ!? 反応がすごく薄い!?
どうやら夢の中でも聖はかおるんにまた
「忍くん──じゃなかった。ご主人様、早く起きてくれないと、すごい事をするぞ?」
「この状況がすでにすごい。もはや恐れるものなどなにもない。いい夢を見せて貰った」
しかしぼちぼち夢から覚めないといけないだろう。なんて思ってはいたものの、どうにも今日の夢は少し長いみたいだ。相変わらず
「……本当にしちゃうぞ? いいのか? 言っておくけど、私も恥ずかしいんだからな?」
「恥じらいは捨てなよベイベー」
今オレ少しクールに切り返した。夢だからこそできることだ。胸中で小さな満足感を覚えていたところ、なにやら不意にむにゅっと両
温かで豊潤な膨らみ。
「んんぅ……ご主人様、起きてくれないと……はぁ……もっと激しくしちゃうぞ?」
「──カモン」
「な、なんで英語なのかはよくわからないけど……よかった。これは
心なしか弾んだ声と共に、
「うぁ……なんだか私も、ちょっと気持ちいい……かも……はぁ……ご主人様はどうだ? ちゃんと……あぁ……気持ち良くなってくれているかな?」
もう感無量と言っても差し
「はぁん……ご主人様ぁ……私がしているんだから……動いちゃだめだ……やぁん……」
わずかに顔を動かしただけなのにも
もういってしまうのか。名残惜しさを覚えて
が、さすがに自分の目が丸くなるのを感じつつ、オレはおずおずと聖を見上げた。
「……聖? なにをしているんだ?」
「ご、ご主人様にぱふぱふしていました」
「──ワンスモアプリーズ」
やっぱりこれは夢だろう。聖がそんな赤い顔をして『ぱふぱふ』とか口走るわけがない。夢ということもあり、調子に乗って人差し指を立ててはみたものの、残念なことに続きはないようだ。聖は困ったように
「あの、
「なんだ、もうご主人様とは呼んでくれないのか。あまり都合のいい夢じゃないな」
「そ、そんな残念そうにされても困るけど、
優しく掛け布団を
しかし
「忍くん、昨日のことをよく思い出して欲しい──って、だから寝ないでくれ。朝ご飯はどうするんだ?
やんわりと注意を促し、聖が遠慮がちにこちらの肩を揺らしてきたが、なんだか妙に眠く、再び
● ● ●
……この先、氷雨ちゃんと仲良くやっていけるだろうか?
オレンジの陽が差し込む
優しい夕暮れ時。五行家へと帰宅し、氷雨ちゃんと温かな言葉を交わしたかおるん。彼女はオレのことを氷雨ちゃんに紹介するとかで、様子を見守っていたこちらの腕を取った。
しかしどうやら以前、氷雨ちゃんはかおるんからオレのことを聞いていたみたいで、
『あなたのことは薫様が持ち歩いている写真でも見ました。
と、ひとの顔を認めるなりいきなり宣戦布告。ひとまずオレも落ち着かせようと思い、
『なんだ、
なんて自分なりの大人の対応をしてはみたものの、図星を指されて恥ずかしかったのか、それとも悔しかったのか……思いっ切り氷雨ちゃんに
そんな中、かおるんが『氷雨ちゃん、噛むなら甘噛みにした方がいいですよ』と妙な注意を飛ばし、その後の自己紹介の間、氷雨ちゃんは無表情ながらも
けれど気持ちを切り替え、せっかくなので稽古をしてから帰ろうと考え、オレは五行家の道場にお邪魔し、現在こうして鍛錬に
……しかし今思えば、このときさっさとうちに帰っていれば、普段通りルナのいる日常にも戻れたのかも知れない。こちらが
「やはり君は……
樹とはオレの父親のことだ。けれど、宗悟さんの口から父さんの名前が飛び出るとは思わず、オレが軽く目を
「……
そう
「そういえば、うちのアホで適当な父さんと宗悟さんは知り合いなんですよね?」
「遺憾ながら友人であることは確かだよ。今でこそ言い争う程度だが、昔はよく樹さんと殴り合いの
「今度一緒にうちのバカをボコりに行きましょう──とか言いたいところなんですが、退魔の才があったということは、やっぱり父さんも退魔士のことを知っていたんですね」
「元々、南条は退魔の家柄の分家だからね。樹さんだけではなく、君のお爺さんも退魔士のことは理解している。ふたりとも退魔士として働いていた時期もあるぐらいだ」
しかしオレは爺ちゃんと父さんからなにも聞かされていない。なんで話してくれなかったんだろう? こちらが疑問に思う中、宗悟さんはわずかに
「君に話さなかったのは、きっと親心だろう。退魔士の仕事には危険がつきものだ。家族を巻き込む可能性を考えたに違いない。だが樹さんは家の道場も継がず、仕事中には悪魔の女性を口説いたり愛人にしようとしたりと、やりたい放題やったかと思ったら……」
言葉の途中でため息を挟み、宗悟さんは
「今度は奥さんとの結婚を機に突然『もう退魔士辞める! 働きたくないでござる! 絶対に働きたくないでござる! ボクは
「やっぱり今度一緒に、その阿呆をボコりに行きませんか?」
渋い表情を見せてはいたものの、宗悟さんの言葉の中には
「先日、その阿呆から電話が掛かってきた」
「電話? うちの母さんと妹以外には電話もメールもろくにしないあの父さんがわざわざ?」と、意外に感じて聞き返したところ、宗悟さんは苦笑を浮かべて小さく
「おそらく君のことが心配だったのだろう。一体どこで聞きつけてきたのか、君がうちに来て退魔の
「……なんか嫌な予感がするんですけど、うちの父さんはなんて?」
「確か、『テメエ! よくも
「多分、父さんなりの冗談だと思いますよ?」
「もちろんそれはわかっているのだが、
もしかしたら
「しかし樹さんは本当に君のことが大切みたいだな。私の話を聞くなり、『それじゃあボクの忍君はいま悪魔と一緒に暮らしているの!? これはダメだ! 早く帰らなきゃ! まあ本当は
「今度父さんから電話が掛かって来たら『いつ死ぬんだ?』と聞いておいて下さい……って、そういや宗悟さん、確か道場に入って来たとき『やはり君は樹さんの息子なんだな』とか言っていませんでしたか? あれはどういう意味なんです?」
自分の表情が若干硬くなるのを感じていたところ、宗悟さんは少しだけ気まずそうにこちらから目を
「いや、私も最初は似ていないと思っていたんだ。君は樹さんと違って誠実だからね。しかしなんだ、君には退魔の才もある上に冗談も好きで……樹さんと同じ天然ジゴロだ」
「あの、大変失礼だとは思うんですが、ちょっと脳天を砕いてみてもいいですか?」
「……樹さんもよくそんな冗談を口にしていたな。それに女性から好意を寄せられることも多かった。君と同じだ」
こちらとしては違うと思いたかった。けれど宗悟さんは再び複雑そうな表情で言う。
「さっき居間で
「……また
「残念ながら否定はできないな。実はこれからまた仕事でね。妻を連れて二、三日ほど家を空けるつもりなんだが、そのことを薫にも話したらひとつ頼まれてしまったんだ」
「かおるんが頼み事とは珍しいですね」
きっとかおるんも宗悟さんに甘えているのだろう。
「薫が言うには『我が家に男手がないのは不安です。宗悟パパが留守の間、忍様に泊まって
「はあ、
早々に
「きっと
「な、なんで急に呼び方を変えたのかはよくわかりませんが……案外宗悟さんも親バカなんですね。まあ、少しの間泊まるぐらいなら別にいいですよ」
宗悟さんに頭を下げられてしまったら断るわけにもいかないだろう。しかし男手がないと不安って……それならこのうちの
● ● ●
ベッドに腰掛けたまま目を閉じ、メイド服姿の聖に優しく肩を揺さぶられているうちに、昨日の記憶が
確かあの後道場から居間に向かい、
けれど、どうやら彼女はオレのうちに顔を出していたらしい。戻って来たときには、かおるんはこちらの着替えが入ったバッグを手にしており、手際がいいことにルナたちにもオレのことを説明してくれたようだ。
それからそんな彼女に誘われるまま、夕食と
そのあたりのことはちっとも覚えていない。少し残念なような気もする。などと考えていたところ、聖が控え目にこちらの肩を揺らし、
「忍くん、もう起きてくれないと、その……勝手に着替えさせちゃうぞ?」
「靴下は最後に脱がしてくれよ?」
「えっと、むしろ靴下は最初だと思うんだけど……あ、忍くん靴下を履いたまま寝ちゃったのか。ちょっと待っていて欲しい。ちゃんとしてあげるからな?」
……なにをするつもりなんだ?
少し気に掛かって
……止める間もなく、聖の太腿に足を乗せるような形になってしまった。足の裏に弾力のある太腿の感触を覚え、一気にこちらの眠気も吹き飛ぶ。
「聖、さすがに悪い。そこまでしなくても大丈夫だ。というかその脱がし方は……」
「
それでは本当に聖の太腿を踏んでしまうことになる。そんなことができるほどオレは図太くない。しかしそれにしても、いま着ているメイド服といい、先程のぱふぱふといい、おそらくまたかおるんに妙なことを吹き込まれたに違いない。
ただ、聖本人はお世話ができて
けれど、聖のようなクールビューティーにこんなご奉仕をされると妙に落ち着かないというか、少し心が躍るというか……いずれにせよ気恥ずかしいことには変わりない。
そんなこちらの心情を
「……
「優しくしてね──じゃねえよ。ズボンまで脱がせてなにをするつもりだ。オレはお前をそんなエッチな娘に育てた覚えは……そういやお前、ムッツリスケベだったっけ?」
「わ、私は別に変なことをしようとしたわけじゃないぞ! 勘違いしないで欲しい! ただの着替えだ! ルナさんだって毎日忍くんにこうしてあげているんだろう!?」
「いや、全然。ルナはここまで過激じゃない」
よくひとの耳を
「でも薫さんが『忍様の家で見てきました。ルナさんはメイド服姿でぱふぱふをして忍様を起こし、その上お着替えまで手伝い、さらに夜のお
「……お前はその話を聞いて、夜の風呂ではなにをするつもりだったんだ?」
「薫さんにも言われたんだけど、ルナさんと全部同じだと芸がないだろう? だから私はその──おっぱいで忍くんの胸を洗ってあげるからな! 恥ずかしいけど頑張る!」
「だ、大胆だな。そういうのは嫌いじゃないぞ。ただ、お前はどこまでかおるんのことが好きなんだよ。姉を信じたくなる気持ちはわかるが、少しは疑った方がいいと思うぞ?」
心持ち優しくそう告げると、
「それじゃあ……やっぱり
「ん? ちょっと待て。『やっぱり』ってなんだ? お前も半ば気づいていたのか? ということはつまり、実はお前がオレに少しエッチなことをしたかっただけなんじゃあ……」
「ち、違うぞ
どうやら動転しているらしく、聖は赤い
「私はただ忍くんを喜ばせてあげたかったんだけど……でも、言われてみれば確かに、いつも私ばかりが
……
が、改めて見るとこの体勢は非常にやばい。聖は床に正座したままこちらの
と、胸中で少し焦っていたところ、不意にノックもなく勢いよく扉が開き、間髪を
「
どこか不機嫌そうに早口に切り出した氷雨ちゃんだったが、こちらの様子を認めると目を見開き、もしかしたら
「か、かかか薫様! 聖様がエッチです!
「ええっ!? ひ、氷雨ちゃん! 私はそこまでエッチじゃないぞ! 誤解だ! 物凄い誤解だ! お願いだから薫さんに変な報告はしないで欲しい!」
慌てたように裏返った声をあげ、氷雨ちゃんを追って廊下へと駆け出して行く聖。
対してオレは再び
ある意味夢から覚めても夢心地である。
五行家の居間での朝食時。テーブルに並べられているのは、湯気の立ち上る真っ白なご飯。だしのきいたワカメの
まあ、聖の場合はかおるんに唆されてのコスプレではあるが、メイドさんたちに囲まれるというのも悪くない。覚えず
「ふむ、この場にルナがいたら最高の
「……
こちらの図星を指しつつ、かおるんは心持ち
「先日お世話になったお礼に、わたくしも忍様にたくさん気持ちいいことをしてあげたいんです。
「はは、そいつは楽しみだな。でもお前の隣でオレのことを
「怖い娘? そんな娘どこにもいませんよ? わたくしの隣にいるのは、この先ギャップ
「お前ずいぶんと氷雨ちゃんに甘いんだな。まるでこの卵焼きのようだ」
料理の手伝いをしたということは、この少し焦げた卵焼きは氷雨ちゃんが作ったんだと思う。かおるんにため息で応じつつも、オレはその卵焼きを口に含み、「
「……
「そのときは笑顔で
「──わかりました。噛み付きます。南条様が泣くまでやめません」
おっかねえ会話してるなあおい。しかも氷雨ちゃんの目が本気だよ。オレは助けを求めるように隣の聖へと目を向けたのだが、彼女はどこかぼんやりと眠そうにしており、こちらの視線に気づくとなにを勘違いしたのか、にっこり笑っておかずの魚へと目を落とす。
「よかったら、骨を取ってあげようか?」
「──そのあと口移しで食べさせてあげるからな。忍くん大好き♡」
いつもの冗談だろう。聖の
「……わたしは目を
「いや、そんな赤い顔で気にするなと言われても困る。というか、かおるんもやめろよ。こんな小さな娘がいる前で」
「わ、わたしは小さくなどありません!」
ひょっとしたら地雷を踏んでしまったのかも知れない。珍しいことに
「確かに小ぶりに見えるときもあるでしょう! ですがこれから大きくなるんです! もうバインバインです! 絶対に
声を荒らげながらも自分の胸元に視線を落とし、微妙に切ない顔になる氷雨ちゃん。彼女のその控えめな胸に目を向け、オレが心の中で『頑張れ』とエールを送っていたところ、
「
「お前よく氷雨ちゃんに好かれたよな。普段からそんな風に変態メイド全開なのに」
「薫様は変態ではありません!」
また地雷を踏んでしまったのか、氷雨ちゃんは一度言葉を止め、声を大にして続ける。
「──薫様は痴女です!」
「なお悪いわ! お前なんてことを言うんだ! さすがのかおるんも涙目じゃないか!」
思わずオレが勢いよく突っ込みを入れると、眠そうにしていた
「以前テレビかなにかで、痴女とは男性に人気のあるすごい女性だと聞いたことがあるのですが……もしかして違うのでしょうか?」
今後の氷雨ちゃんのためにも誤魔化さずにきちんと伝えておこう。オレは優しい口調で彼女に痴女の意味を教えてあげたのだが、それを聞くなり氷雨ちゃんはしょんぼりと見事にしょげ返ってしまい……なんだか気まずくなってきた。
慰めるように氷雨ちゃんの頭を撫でるかおるん。彼女に再び睨まれ、オレは深い謝罪のあと、この重い空気を変えるために素早くかおるんに話を振る。
「そ、そういや、
「修くんなら……
「なんで急にホームレスみたくなってんだよ。まさかお前、追い出しちまったのか?」
「そんな冷たいことはしませんよ。公園は冗談です。修くんなら今朝方、『友達から借りたDVDがなくなっちゃったんだ。あっ、でもSMチックなDVDじゃないよ? 女王様とか出てこないから安心してね? だけどDVDをなくしたお
……なんてこった。修君の言うDVDには心当たりがある。確か一昨日の夜中、
そんな悲しい思い出を呼び起こしつつ、オレは
「お前、まだあのDVDを
「あ、いえ、これには
● ● ●
それは昨日の
ルナさんたちに
これは昨夜修くんが胸に抱いていたライトSMチックなDVDです。わたくしは弟をSM好きな子に育てた覚えはありませんが、こんなときのために隠し持っていて良かったと思いました。さて、それではこのDVDを忍様のベッドの下にセットしておきましょう。
きっと忍様もわたくしの
実はあの笑顔が
もう繊細なハートが止まるかと思いましたよ。まあルナさんも目を丸くしていましたが、ふとある予感が脳裏を
「やはりルナさんは天然エロスのようですね。忍様が留守なのをいいことに、ベッドの上でエッチなことをするつもりだったんでしょう? それはよくないと思いますよ?」
「な、ななな何を言っているんですか
「か、薫さん、それってまさか……忍さんのベッドの下にあったんですか?」
「……ルナさんも見てみます?」
「いえ、そんな勝手に見るのは──って、SM!?」
わたくしの悪い癖です。慌てる様があまりにも愛らしく、ついからかってしまいました。
おもむろに立ち上がってDVDの表紙を突きつけてみたところ、ルナさんの表情に
「ルナさん、趣味や性癖は人それぞれです。たとえ
「私だって──喜んでSMプレイに付き合います!」
「ま、まさかの対抗!?」
これは予想外です。けれど負けるわけにもいかないでしょう。こんな
「ルナさん、冷静になってよく考えてみて下さい。SMですよ? 女王様ですよ? 癒しキャラのルナさんには荷が重いでしょう? こういった部分はわたくしに任せて、ルナさんは違う方法で忍様を喜ばせてあげて下さい」
「そ、そんなのいやです! 私も忍さんが一番喜ぶ方法で忍さんを満足させて忍さんに笑って欲しいです! 私だって女王様ぐらいできますよ! ちょっと見ててくださいね!」
ひ、
彼女はまるでガラスの仮面的なものを
「──
「い、いまわたくしのことを呼び捨てにしましたか? いつも優しく丁寧なルナさんが? あ、あら? ルナさんなんですよね? もしかして怒っているんですか?」
「うるさいですよ薫。騒いでいないで、早くそのDVDを私に寄越しなさい」
「あ、いえ、なんと言いますか、今更なんですが、実はこのDVDは
「──薫、私に何度も同じことを言わせる気ですか?」
「も、申し訳ありません許して下さい! このDVDはルナ女王様に差し上げます!」
なにやら
「ありがとうございます薫さん。それじゃあ私、早速
「あの、お言葉なのですが、ルナ女王様なら特にSMについて勉強しなくとも……」
「──
「いいえ、どうか勉学にお励み下さいませ。ご健闘をお祈りしております」
チラリと
けれど自分で
一体どう
● ● ●
「──なんてことがありまして、現在ルナさんはSMについて勉強中というわけです」
昨日のことを思い出しているのか、かおるんは小さく震えつつもぎこちなく
「忍様、おうちに戻ればルナさんとのSMプレイが待っていますよ。良かったですね」
「……それがお前の最期の言葉になるというわけだな」
冗談で
「あぁ! おやめ下さい忍様! 本当に足が
うん、ほんと止めて欲しい。オレがかおるんの頬をぐりぐりしている最中にいきなり攻撃を仕掛けて来た氷雨ちゃん。彼女はかおるんの注意を受け、渋々といった様子で噛み付きをやめたものの、『薫様を
……なんなのこの
普段しっかりとしているだけに、無防備な姿はとても微笑ましい。こちらが頬を緩める中、かおるんがそっと聖に近づき、彼女の頭に手を載せてやんわりと声を掛けた。
「聖ちゃん、無理せず部屋で少しお休みになった方がいいですよ?」
「あ、でも、せっかく忍くんが来てくれているから……」
「忍様なら逃げたりしませんよ。それにそんな状態では満足に遊べないでしょう? お昼にはちゃんと起こしてあげますから、少しだけ横になりましょうね。果報は寝て待てともいいます。どうかお昼を楽しみにしていて下さい。きっとお昼にはいいことがありますよ」
非常に優しい口調とは裏腹に、かおるんは悪巧みでもしているような怪しい顔をしていたが、
そんな聖の背中を見送ったあと、かおるんはくすりと笑みをこぼしてオレに視線を戻す。
「聖ちゃんも
「……オレも昨日はなかなか眠れなかったぞ。お前が離してくれなかったからな」
「たくさん遊びましたからね。ですが忍様もベッドの中でわたくしを離してくれなかったではないですか。眠りこけてしまった様子でしたのでベッドまでお運びしたら、突然忍様が嫌がるわたくしを無理矢理に抱き締め……あ、冗談ですよ?
素早く
「わたくしもお世話になったお礼をきちんとしますからね。どうかお昼を楽しみにしていて下さい。特に昼食後には素晴らしいことが待っていますよ。もし待ち切れないということでしたら、いまからわたくしがキスをしてあげてもいいです」
「……また氷雨ちゃんに噛まれそうだから遠慮する」
しかしかおるんのお礼となれば……申し訳ないが不安しか感じられない。特に昼食後には注意だな。楽しむどころか、オレは少し警戒しながら昼を待つことにした……。
……昼食前ということもあって油断していたのかも知れない。
明るい
また下着姿のため、黒のブラジャーに包まれた豊かな果実。そこからは深い谷間が確認でき、細いウェストやあでやかな
けれど間違いなくこの状況のせいだろう。聖は滑らかな
「……おい、これはどういうことだ? これがお前の言うところのお礼なのか?」
「忍様、本番は昼食後ですよ。これはジャブ気味の特別訓練です」
ジャブ気味とは初耳だが、昼食前にかおるんから聞かされた特別訓練。それはきっと退魔士の
昼食後にはなにが待っているというのだ? 微妙に冷や汗が
「忍様もご存じの通り、聖ちゃんは退魔士です。悪魔の封印や退治を生業にしております。そんな退魔士は恨みを買うことも多く、時には仕事に失敗して悪魔に捕らえられてしまうこともあるそうなんですよ。なんだかちょっと怖いですよね」
「……オレはお前の方が怖いよ。
「わたくしも泣く泣く心を鬼にしたのです。悪魔に捕まった際、退魔の情報を吐かせるため、退魔士が拷問を受けることもあると──以前、
「その妄想力ちっとも
「ですが岬ママ
「……お前はもっとピュアな精神を養った方がいいんじゃないか?」
多分これもかおるんなりのお礼なんだとは思う。確かにある意味で男心を
「さあ聖ちゃん、これから
「あの、起きたらすでに
「……場合によっては、聖ちゃんの方が喜んでしまうかも知れませんね」