「夢なら覚めて欲しくないな。ずっとこのままがいい……」
オレもこのまま
そんな中、オレを撫でているうちに少し落ち着いたらしく、聖はこちらの頭に優しく手を載せ、やんわりと口を開いた。
「
「オレがここに来たのはお前に会うためだ」
「うん、それはもうわかったよ。忍くんが甘えてくれているみたいですごく
かおるんならいま一階にいると思うよ? なんて言えたらどんなに楽なことか。こちらとしてはあまり触れて欲しくない話題だったのだが……多分、聖にとってはずっと気になっていたことなんだと思う。彼女はオレを撫でる手を止め、声音にぬくもりを
「薫さんのメールを見る限りだと、忍くんのうちで楽しくやっているみたいなんだけど、どうかな? また変な
「あいつを迷惑だと思うやつはうちにはいないよ。その辺りのことは心配しなくてもいい」
「……そっか。ルナさんたちも私と同じなんだ。よかった」と、そんな安心したような言葉とは裏腹に、聖は
「でも、薫さんならないと思うんだけど、少し寂しがったりしてないかな?」
「……そういうお前の方は、少し寂しそうだな」
穏やかにこちらが言葉を返すと、肯定の意味なのか、聖は小さなため息をこぼした。
「なんだか最近変なんだ。いつもならこんな風に私が遅くまで起きていたら、薫さんが『また忍様を
今度は声音に寂しさを滲ませ、聖はどこか甘えるようにオレの頬に手を添える。
「それでな忍くん、薫さん『どうせアホの
ふと言葉は途中で止まり、少しだけ間を空けたあと、聖は再びため息をつく。
「やっぱり薫さんがいないと変なんだ。薫さんも家を出る前、ちゃんと私たちに相談してくれたんだけど、詳しいことまでは話してくれなかったから……」
「それは不安にもなるな。しかしなんだ、あいつはお前にも事情を話さなかったのか?」
「うん、なにかあったら
一度言葉を止め、
「早く帰って来てくれないと……私も夜更かしばかりしちゃうかもな」
「そうか。やっぱりお前にとってかおるんは──」と、前から思っていた事を伝えようとしたものの、不意に階下から大きな物音が響き、さすがにオレは開きかけた口を閉ざした。
……ひょっとしたらかおるんになにかあったのかも知れない。なんか
「忍くん、ちょっと様子を見てくるから──」
「ま、待て! 早まるな聖! 相手が不審者だったらどうするんだ! もしお前になにかあったらかおるんに申し訳が立たない! 仮にお前を一人で行かせたりしたら色んな意味でかおるんにお仕置きされるかも知れん! ここはオレに任せて部屋で待っていてくれ!」
「えっと、少し
なにやら背後で聖が慌てたような声をもらしていたが、
……どうかかおるんが妙な騒ぎを起こしていませんように。
などという祈りも
が、
「え? なに? 殺人事件?」
「クククッ、見られてしまったからには仕方がありませんね。忍様も修くんと一緒に天国へと旅立って
「……お前もなかなかテンパっているようだな」と、少し冷静になって口を挟んだところ、かおるんも「そうみたいですね」と同意するように
「実は無事に目的を果たしたものの、居間に忍様の姿がなく、まさか本当に聖ちゃんの
「お前弟に妙なあだ名をつけるなよ」
「まあ、おそらくピーナッツこと修くんも居間の大きなテレビでエッチなDVDでも鑑賞しようとしていたのでしょうが、階段で目が合った時には心臓が止まるかと思いました」
「……修君の方の心臓は止まってないよな? なんかよく見たらぐったりしてるけど?」
「このようなことでくたばる
「ちなみにお前、今日の下着の色は?」
「いきなりセクハラですか──と言いたいところなのですが、お察しの通り純白です。それよりも修くんを部屋まで運ぶので手伝って下さい。きっとこのままベッドに寝かしつけておけば、おそらく修くんもいいメイドの夢を見たと勘違いして──」
言いながらはたと動きと声を止めるかおるん。その気持ちは痛いほどよくわかる。
会話の最中で間が悪いことに、一階と二階からほぼ同時に足音が
「た、多分、
「……オレがなんとかしておく。早いところお前は逃げろ」
「いえ、ですが、さすがにこの状況で
やはり気が引けるのだろう。相変わらず伸びたままの修君に目を落とすかおるん。そんな彼女の肩に手を載せ、オレは声音を作って笑顔で告げる。
「
「忍様……わたくし……いつまでも待っていますからね!」
こちらの乗りに合わせてくれたのだろうか? それにしては妙に
するとその後すぐ、様子を見に来てくれたのか、二階から姿を見せた聖。彼女は階段下の修君を目撃したらしく、「しゅ、修くん!?」と目を見開き、階段から駆け下りて来た。
一方、騒ぎを聞きつけてきたのか、一階の曲がり角からはひとりの
などと現実から目を
「わかったわ。聖を
「第一声がそれかあんた──ではなく、夜這いじゃないです。ただ遊びに来ただけですよ。えっと、岬さんでいいんですよね?」
「ええ、そうだけど、そういうあなたは忍君よね? 薫や聖の写真で何度も見たし、ふたりからあなたの話も聞いているわよ? ワイルドかつキュートな上にお茶目でありながらも優しい男の子なんでしょう? 見た目もクールで素敵ね」
「まあ、どこに行っても、それはよく言われます。あとはじめまして」
こちらが動揺を隠して小さく頭を下げると、彼女──
「ところで
「か、母さん! 恥ずかしいから変なことを言うのはやめて欲しい! それと修くん! 修くんを踏んでいるから!」
「あら? なんでピーナッツがこんな所にいるの? 早く部屋で
かおるんが使っていたものと同じあだ名で修君のことを呼び、かおるん以上の毒舌を吐き、聖の注意も聞かずに自分の息子を
「せっかくだから忍君──今夜は
「いくかボケ! かおるんをさらにひどくしたような人だなあんたは──というのは冗談です。はい。夜分遅く失礼しました。これ以上は突っ込みという名の暴言を吐きそうなのでお暇させて頂きます。それから修君は階段で足を踏み外してこうなったみたいですよ」
言葉
さて、一体どんなものが出てくることやら。
五行家を出てすぐに外でかおるんと合流。続いてそのまま家に戻るかと思いきや、帰宅の途中で通り掛かった公園。そこに寄りたいとかおるんが言い出し、ここまで来たらどこまでも付き合ってやろうと思い、オレは彼女と一緒に園内に足を向けた。
その後、園内の淡い電灯の下、オレたちは
彼女が五行家に侵入した目的。
「……お前の欲しかったものは、ちゃんと見つかったのか?」
「はい。これも
言葉と共にかおるんが勢いよくリュックから取り出したものは……一本のDVD。
表紙では、SMチックなボンテージファッション姿の女性が男性を見下すように踏みつけており、しかしそんな状態であるのにも
が、問題はそんなことではない。さすがに
「……おい、なんだそのドヤ顔は。そろそろオレも少しだけ怒るぞ? お前はそんなものが欲しくてわざわざ家に侵入したのか?」
「あっ、いえ、下手な冗談でした申し訳ありません」
素直に頭を下げたのち、かおるんは軽く肩をすくめて説明をひとつ。
「これは先程
「修君がライトMって本当だったんだな。思いっ切りSMじゃねえか」
「……このDVDは付き合って下さった報酬としまして、
「ずいぶんとオレも安く見られたものだな。そんな置き場に困るようなDVDなど要らん。報酬ならお前の笑顔だけで十分だ。ほら、さっさと目的の品でも見てにっこり笑え」
「……冗談っぽいことを言いながら、そんな風に
いまの言葉がオレの本音だと気づかれてしまったのだろうか? かおるんは頬を桜色に染めてこちらから目を
その表紙には『
だけど、なんで急にアルバムなんて見たくなったんだ? 夕食前にオレのアルバムを見た影響だろうか? わずかな疑問を抱きつつも、ひとまず彼女と一緒にアルバムに目を落としていくと、そこには子供の
ただ幼少時のかおるんは今よりもずっと無表情であまり愛想もよくない。しかしそれでも、小さな
「うむ、聖は子供の頃から華があって
「忍様、このアルバムの主役であるわたくしはどうです? 可愛いですか?」
「子供の頃からふてぶてしい面構えをしていると思う」
率直な感想を述べつつ、オレは「ところで」とわりとマジなお願いをひとつ。
「お前らが一緒に写っている写真、一枚だけ
「ふふ、それでは忍様となずなちゃんが一緒に写っている写真と交換しましょう」
「もちろんそれはいいんだが、なんだかお前の写真、少し変じゃないか? よく見たらどの写真でもポーズを取ってない上にカメラにも目線を向けてないし、妙に自然体だな」
「わたくしは写真嫌いでしたからね。おそらくほとんどが
「……さっき岬さんとも会ったけど、お前ほんとにあの人の影響を受けちゃったんだな」
なんてやり取りを交わしながらアルバムを眺めているうちに、オレはふとあることに気がつき、自然と小さな笑みがこぼれた。
「なんか、オレのアルバムと少し似ているな。お前のアルバムにも妹がよく写ってるぞ?」
「……おかしな話ですよね。小学校の友達に退魔の家のことがバレるまで、
アルバムを眺めたまま、かおるんは微苦笑混じりに「それなのに」と続ける。
「遊び相手ならいくらでもいましたのに、わたくしが仕事中でも、よく後ろをくっ付いて来てくれたんです。それからお手伝いまでしてくれて、それで聖ちゃんも家事が得意になったわけなんですが……どうしてあんなにも、わたくしの
「いまならその理由も、よくわかるんじゃないのか?」
そっと口を挟み、オレはアルバムに視線を移す。
「きっと聖もなずなと同じだったんだよ。写真を見ればオレだってわかる。お前と一緒にいるとき、聖はいつも楽しそうで、こんなにも
オレのアルバムの写真に写っていたシーンとどこか似ている。これも岬さんが盗撮したものだろうか? 家の庭先で大粒の涙をこぼしている幼い聖。そんな妹の頭を
「……これはわたくしが
「お前も刺されちまったのか?」
「はい。確かあのとき、聖ちゃんが蜂に追いかけられていまして、それで助けてあげようと思ったんです。けれど、『当たらなければどうということはありません』なんてふざけて、
「はは、お前にしては珍しいミスだな」
「子供の
多分、当時のことを思い出しているのだろう。
「あのとき、蜂に刺されてもなんとも思いませんでした。わたくしは半人半魔の悪魔ですからね。蜂に刺された程度でどうにかなるわけでもありません。ただ……」
柔らかく目を細め、かおるんはアルバムの写真を
「珍しいことに聖ちゃんが泣き出してしまって大変でした。わたくしなら大丈夫ですのに、聖ちゃんは『痛くないか? ごめんな』ってすごく心配そうで、道具として泣くことを許されなかったわたくしの代わりに、
わずかに
「子供の
「
ようやくうちに来た事情を話してくれるつもりなのか、彼女は静かに言葉を続ける。
「以前、マキナの生徒会選挙のとき、我が家で会議を行った際、わたくしは忍様に冗談で注意しましたよね? 新しいメイドの
「あのときは、約束はできない──と答えたと思うが、オレも冗談だからな?」
「……忍様は天然ジゴロなので心配です」
ほんのりとジョークめかして、かおるんは穏やかに話を戻す。
「その新しいメイドさん──
言いながら表情を曇らせ、
「その辺りのことは、昔のわたくしと似ているのかも知れません。ただ、わたくしとお話ししているとき、一度だけでしたが、氷雨ちゃんが少し笑ってくれました。その小さな笑顔を見ていたら、不思議ともっと笑わせたくなって……そのときふと思ったんです」
すっと目を閉じ、かおるんは声音にぬくもりを乗せる。
「もしかしたら、わたくしとはじめて会ったとき、聖ちゃんもこんな気持ちだったんじゃないかと。そう考えたら、聖ちゃんがわたくしにしてくれたことを思い出したんです」
過去に
「これから一緒に暮らして、赤の他人に過ぎない
言葉と共にそっと目を開き、かおるんは「けれど」と苦笑を見せる。
「色々と思い返してみたら、わたくしはお姉ちゃんなのに、聖ちゃんに
「それでうちに来たのか?」
「わたくしは……もっと変わりたかったんです」
こちらの問いに
「
握り締めた拳を
「わたくしは変われないままで、ルナさん達のようにもなれそうにありません」
「……前にも言ったけど、お前の場合は、無理に変わらなくてもいいんじゃないのか?」
「どうしてですか? わたくしはもっと
言葉を挟んだオレに、弱々しく反論を返すかおるん。そんな彼女を眺めながら、オレはもう一度温かく言葉を挟む。
「お前は、あまり自分のことが好きじゃないんだな」
「……
「足りないところばかりか。お前も少し前のオレと同じことを考えていたんだな」
「忍様は……いつも自信満々に見えますよ?」
「お前と同じで、そう見えるように振る舞っていただけだよ。本当は自分に自信がなくて、弱い自分を知られたら、またみんなが離れていくような気がして、それが怖くて……」
話しているうちに、オレも昔のことを思い出して、
「ガキの
言葉を続けているうちに、今度は少し前に見た夢のことを思い出した。
「そんなオレにある人が言ってくれたんだ。弱くてもいいんですよ。弱いからこそわかることだってあるでしょう? ってな。それからこうも言ってくれた」
ふと夜空の月を見上げると、七年前にルナがくれた言葉が鮮明に
「弱いからこそ苦しんでいる人の気持ちが痛いほどわかって、傷ついて泣いている
……あの日ルナがくれたものを、オレは言葉にしてゆっくりと紡いでいく。
「あなたは自分のことが嫌いなのかも知れませんが、私はあなたのように、弱くても優しい人が──大好きですよ」
あの時のことは二度と忘れたくない。大切な思い出を語り、オレはそっと視線を戻す。
「……自分の長所なんてよくわからない。嫌いな自分を好きになるのも難しい。だけどな、
視線の先、かおるんを見つめながら、オレは彼女にやんわりと言葉を掛けた。
「
「聖ちゃんが、そんなことを?」
「多分、子供の
「……わたくしもアルバムを見て、大切なことに気づきました」
「
「ああ、そうみたいだな。お前なら無理して変わる必要なんてない。きっとそのままでも、新しいメイドさんの姉にもなれると思うぞ?」
「そうでしょうか?」
「自信がないのなら、聖の代わりにオレがお前のいい所をたくさん言ってやる」
いつもの冗談もなく、オレはしっかりと
「よく妙な
「……嫌いじゃないのなら、なんなんです?」
「そんなの言わなくてもわかるだろう?」
「ちゃんと言葉にして下さらないと……
「聖のことが
「……わたくしも……忍様のことが……すごく……すごく……大好きです……」
ひどく声を震わせ、滲んだ瞳から涙を溢れさせるかおるん。そんな彼女にそっと手を伸ばし、優しく頭を
七年前、オレのことを好きだと言ってくれたルナ。彼女が笑顔でオレの弱さを受け容れてくれて、オレも嫌いな自分を少しだけ許せた気がして、もう
あのとき本当に
公園からの帰り道。月明かりがふんわりと照らす住宅街。家路を
「……
「まあ、お前も大事なことに気づいて、それで悩みも解決したわけだしな」
しかしもう帰っちまうのか。ちょっと残念だ。なんて言葉をこちらが
「忍様にだけは言いますけど、実はわたくし、
「確かに元気がなかったように見えたが、お前でもホームシックになったりするんだな」
「恥ずかしい話ですよね。だんだん寂しくなってきて、もう忍様をさらってうちに帰ってしまいましょうか? いっそのこと南条家&
「有りの方向で頼む」
わりと本気でオレが
「そんな風に楽しいことを想像しているうちに、
言葉の中に
「それで改めてわかったんです。どうやらわたくしは自分の家族のことが、忍様と同じくらい大好きで仕方がなかったみたいなんですよ。家族のことばかり考えて、なにかしてあげたいと思って……この気持ちがなによりも大切だと気づきました」
迷いなく晴れやかに、彼女は表情に笑顔の花を咲かせる。
「昔のアルバムを見て、忍様もおっしゃってくれましたけど、たとえルナさん達みたいになれなくても、この気持ちがあれば姉としては十分でしょう。ですからもっと姉であることに自信を持って、
「……いい答えを見つけたな」
「これも忍様のおかげですよ。今夜もわたくしがどんなに迷惑を掛けても、冗談は言っても文句は言わずに付き合って下さいました。それにわたくしのことがすごく嫌いじゃないと、そうおっしゃって下さいましたから……」
言葉を止めてオレの腕に抱きつき、かおるんは耳元で
「帰る前に
「……寝ていたらごめんな」
と、冗談で応じながらも、ちゃんと待っていてやろうと思った……。
お礼がしたいと口にしていたが、かおるんはなにをしてくれるのだろう?
深夜の長い散歩を終えて家の前まで戻ると、こんな時間なのにルナの部屋に電気が
とりあえず家の中に入ると、かおるんは「すぐに行きますから、寝ないで下さいね?」と念押しして客間に戻っていき、彼女の後ろ姿を
おそらくかおるんのことだ。まず、お礼に
図書券とかくれたら
が、彼女は細身の
「……シャワーを浴びて来ました」
「うん、風邪を引くから早く服を着た方がいいと思うよ?」
「し、忍様に温めて
そう言うが早いか、彼女はバスタオルの
「あの、もう時間も遅いし、そういう冗談はなしで頼む」
「……忍様のバカ」
オレとしては悪気もなかったのだが、彼女は
「だ、だから、そういう冗談はいいから、早くお礼に図書券か本をくれ」
……どうしてか、その言葉が逆効果になってしまった。
こちらの言葉を聞くどころか、彼女は
その白い桃尻はかおるんが腰を揺らすたび、高級プリンのようにぷるんと震え、さらに彼女は円を描くようにして甘いヒップをオレの
「な、なんだ? なんでずっと無言なんだ? なにか怒っているのか? よくわからんが、頼むからそろそろ本当にやめてくれ」
今度は切にストップを掛けたところ、ようやくかおるんも動きを止めてはくれたものの、こちらの隣に腰を下ろすや否や、すっとオレの後頭部に手を回し、そのままゆっくりとベッドの上で仰向けに寝転がってしまった。
……なんだこの体勢? まるでオレがかおるんをベッドに押し倒しているみたいじゃないか。かおるんは一体なにがしたいんだ? 若干だが
どうにも胸の中の動揺が強くなったが、オレは理性を振り絞って彼女に声を掛ける。
「あのさ、一応オレも男なんだぞ? お前は冗談のつもりかも知れないけど、これ以上はダメだ。オレが変なことでもしたらどうする?」
「……して欲しくて、わたくしは来たんですよ」
ベッドの上で消え入りそうに
「大好きな人にして欲しいと思うのは、当然でしょう? 確かにお礼というのは建前です。本当は、さっき公園で
潤んだ切れ長の
「
「……お前、本気なのか?」
正直なところ戸惑いが大きい。自分の脈が速くなるのを感じていたところ、かおるんは静かにバスタオルを解き、ベッドの上で白く透き通った滑らかな肌を
丸みを帯びた形の良い乳房。
「どうですか忍様。すごくドキドキしているでしょう? わたくしは
「今夜だけでもいいですから、わたくしにたくさん……して下さい……」
──シャンプーの
「
「あ、いや、その、なんと言うか……」
「もしかして、はじめてでどうすればいいのかわからないんですか? そうでしたら、焦らなくても大丈夫ですよ? お姉さんが優しくリードしてあげますからね?」
いかん。見事に理性が働いていない。ダメだと思っているのに胸から手が離せない。
しかもかおるんは本気でオレに身を
などと胸中で慌てふためいていたところ、小さく自室の扉がノックされたと思ったら、こちらの返事を待たずしてドアが開き、
「忍さん、借りていた小説を読んだんですけど、すごく面白くて、これの続きは──」
いまだけは一番会いたくなかった人。晩飯前にオレが貸した小説を胸に抱えたルナ。
彼女にしては珍しく『入りますよ?』の断りもなく、なにやら興奮した様子で第一声をあげてはいたものの、オレたちの様子を認めるや否や、顔を
「あ、あの、廊下で話し声が聞こえて、それで忍さんが起きているんだと思いまして、でもまさか……
「ま、待ってくれルナ。これはそうじゃなくて、その……ただのスキンシップなんだよ」
「ふぇええ~ん! 忍さんが思いっ切りウソをついています! 薫さんの胸を触りながらそんなことを言われても説得力がありませんよぉ!」
今度は泣き出したと思ったら、ルナは
一方、オレが扉に目を向けたまま
「忍様、心配しなくても大丈夫ですよ。いまからきちんとルナさんと話をつけてきます」
「……お前、ルナになんて言うつもりなんだ?」
「わたくしは聖ちゃんと忍様のメイドとして生きます。正妻の座は聖ちゃんかルナさんにお譲りしましょう。ただしその代わりに、忍様のはじめてはわたくしが頂きます──と」
「実はオレ、はじめてじゃないんだよね」
「なにを言っているんですか童貞様──ではなく忍様、わたくしはすぐに戻って来ますので、少しの間待っていて下さい。ちゃんと忍様のはじめてを
先程の恥じらいの表情はどこへやら。かおるんはいつもの
が、その後どんな話し合いをしたのだろう?
明け方
● ● ●
……こいつはいつ帰るんだろう? 夕日が差し込む我が家のリビング。
『いま