「──実は
冬休みの昼下がり。オレが図書館に行っている間に、旅行バッグを持参してひとの自室にあがりこんでいた
なにやら彼女はうちの母さんから許可を
が、とりあえず事情を聞くべく、オレは改めてかおるんに目を向ける。
「五行家と縁を切ってきたって……一体なにがあったんだ? またいつもの──」
冗談なのか? と続けようとしたのだが、不意に鳴り響いた携帯電話の着信音がこちらの声をかき消してしまった。ちなみにオレの携帯電話ではない。こちらが言葉を止める中、かおるんはメイド服のスカートから携帯を取り出しつつ、真顔で淡々と
「文学的な状況描写を致しますと、わたくしの携帯が
「……なかなか官能的だな。でもお前、あんまり文学を
半ば
「一体なによあんた! こんなところにまで電話を掛けてきて! 言っておくけど、あんたのそのゴキブリをスリッパで
電話に出るや否や、彼女は演技でもするように声音を変えて
「いい? わかった? わかったのなら二度と電話してこないで……え? いまちょっと困っている? そんなの知らないわよ! これ以上あたしに構わないでちょうだい!」
不愉快そうに
「……誰からだったんだ?」
「
「お前の弟とも言うな」
五行家の長男こと修君。彼の本名は五行
「しかしなんだ、わりときついことを言ってたけど、おまえ修君と
「そんな生易しいものではありません。わたくしと修くんはいま戦争状態なのです」
「戦争とは穏やかじゃないな。まさかお前……それが原因でうちに来たのか?」
軽い乗りで思いつきを口にしたところ、意外にもかおるんは大きく
「とりあえず宣戦布告とばかりに、『夜な夜な修くんがセクハラをしてくるのでもう耐えられません。五行家とは縁を切らせて頂きます。いままでお世話になりました。P.S.こちらの本は修くんのベッドの下に隠されていたお宝です。
「……弟の世間体を粉々にすんなよお前」
呼び方がいつの間にか『お坊ちゃま』から『修くん』に変わっているのはいい。多分二人の関係がいい意味で変わったんだと思う。けれど喧嘩中とはいえ容赦がなさすぎる。
「もしかしてさっきの電話、修君からのSOSだったんじゃ……」
「いえ、違いますよ。戦争中ですのでわたくしも素っ気なく電話に出てみたのですが、修くんは『いまちょっと困ってるんだ。薫さんの置手紙とあのエロ本のおかげで家族会議がはじまっちゃったよ』と
「なんで嬉しそうなんだよ。家族会議なんだろう? 楽しむ要素がどこにあるんだ?」
「まあ、置手紙の内容を考えてくれたのも修くんですし、きっと家族会議という名のお仕置きタイムにわくわくを隠せないのでしょうね。我が家のライトMは
「おいおい、ライトどころかドMじゃねえか。というか、修君が手紙の内容を考えたってどういうことだ? お前らは一体どんな
「さて
「……なんだそのお茶目な顔は。冗談も大概にしろよお前。どうせ
「残念ながらそれは本当です」
「ほんとに残念だな」
「ちなみに正解は、わたくしと修くんが戦争状態であるというのがウソです。実際は喧嘩のふりをしているだけなんですよ。おそらく修くんからの電話も、『計画通り家族会議がはじまった』という報告だったんだと思います」
「計画通り? なんだよそれ? 弟と仲良く
「今回は悪戯ではありませんよ。わたくしはこれでも一応、
どうやら、いつもの悪ふざけで家を出て来たわけではなさそうだ。かおるんは静かに姿勢を正し、心持ち声音を真剣なものに変える。
「実は前々から、また忍様のうちでお世話になりたいと考えておりまして、思い切って
「……
「どうなんでしょうね?」
ちょこんと小首を傾げ、かおるんは
「修くんは『それなら僕と喧嘩したことにすればいいよ。父さんと母さんならうまく誤魔化しておくから、遠慮しないで行っておいで。あと別に
「お前よりもずっとわかりやすい照れ隠しだと思うんだが……なるほどな。お前が家を出る理由を作るために喧嘩のふりをして、両親を誤魔化すために修君も変な置手紙を考えたわけか。姉思いのいい弟だな。それで、聖の方はなんて?」
「聖ちゃんなら、『はぁはぁ、私も薫さんと一緒に忍くんの家に行きたい。恥ずかしいけどちょっと強引に迫って忍くんとエッチなことがしたい。そのあとはふたりで夜明けのモーニングコーヒーを楽しむんだ』なんて妄想をしていました」
「……聖には『いやらしい妄想は控えなさい』というメールを送っておく」
「ちょっと待って下さい忍様! そんなことをしたら聖ちゃんが泣いちゃいます!」
携帯電話を取り出したオレに慌ててストップを掛けてくるかおるん。対してオレは小さく息を吐き出し、わずかに口調を正す。
「だけど、お前もただ遊びたくて家を飛び出して来たわけじゃないんだよな?
そろそろ当初の目的通り事情を聞いておこう。オレが再びかおるんに目を向けたところ、しばしの間のあと、彼女はぽつりとこぼした。
「……
「ん? あのときっていつだ?」
「先日のクリスマスの、少し前ですよ。忍様とエルニさん、
「そういえばお前……」
話を聞いて少し前の出来事を思い出し、オレはそっと口を挟む。
「新しいメイドさんのことで悩んでいるとか言っていたよな?」
確かみんなで星を眺めていたとき、かおるんはもうじき新しいメイドさんがうちに来るみたいなことを口にしていた。かおるんが大学の受験勉強に専念できるようにと、聖の父親、
などと思い返しつつ、オレは腕を組んで質問を続ける。
「もしかしてだけどな、新しいメイドさんのことと、お前がうちに来たこととなにか関係でもあるのか?」
「はい。彼女がうちに来る前に、一度ルナさん達のことを見ておきたかったんです」
「……ルナ達のことを?」
オウム返しにそう
「ずっと考えていた事があるんです。わたくしはその答えを見つけるために来ました。このうちにいれば、ルナさん達の姿を見ていれば、きっと何かわかるはずなんです」
「ご迷惑かも知れませんが、しばらくこのうちに置いて頂けないでしょうか?」
「お前のことを迷惑だなんて、本気でそう思ったことは一度もないよ」
多分、かおるんなりに色々と悩んでいたんだと思う。正直、詳しい事情はわからない。しかし、それは彼女が自分から話してくれるまで待てばいいだけだろうし、そもそもそんなことを聞かなくても、はじめからこちらの答えは決まっている。
オレは迷いなく
「気の済むまでうちにいてくれていい。なにかあったら遠慮なくオレに声を掛けてくれてもいい。ただ、その代わりと言ってはなんだが──ひとつだけ条件がある」
「……わたくしにエッチなことをするつもりですね」
「そう、お前にいやらしいことを強要する──わけないだろうが。ひとが
「
先程までの真剣な面持ちはどこへやら。なにを勘違いしたのか、かおるんは
「今日からわたくしもこの部屋に住まわせて頂いて、夜には一緒のお布団で眠るわけでしょう? ですから忍様が望まれるのでしたら……わたくしの口や胸やお
色っぽい
なかなか刺激的な仕草である。両腕に挟まれた美乳はむっちりと形を変え、そのまま悩ましくサイズアップ。さらに、かおるんは弾力感を見せつけるかのように自身の乳房を柔らかく揺らし、上目遣いにこちらを見つめてくる。
「ふふ、これから毎日、お姉さんが優しくご奉仕してあげますからね」