「しゅごいね~!」

「ロロ、凄いね~じゃないぞ!」

 だって、他に言葉が出ないのだもの。どうして動いているのだ? しかも、強い。あんなに小さいのに、大きなボアを弱らせている。だが、ボアは最後の力を振り絞って逃げようとしたのか、向きを変えて俺達がいる方に向かって突進して来た。

「ふぇッ!」

「ロロ!」

 ニコ兄がとつに俺を庇うように抱きついてきた。俺達が突然のことで動けないでいると、リア姉とレオ兄が武器を構えて俺達を庇うように前に出た。リア姉は剣を、レオ兄は槍をボアに向かって構えている。そして、ピカが吠えた。

「わぉぉ──んッ!」

 周囲の空気を震わせるかのような声だ。何かを指示しているのかも知れない。ピカの鳴き声が合図だったのか、雛達や土人形が素早くボアから飛び降り距離をとった。すると、ピカから風の槍が飛んでボアの喉元を貫いた。ボアは鳴き声にならない悲鳴を上げながらドサッと音を立てて倒れた。

「おおーッ!」

「ふぇぇッ!?

「ピカ、つえーッ!」

 お見事ッ! ピカさん、相変わらずお強い。思わずニコ兄と一緒に拍手だ。

「わふッ」

「アンアン!」

「キャン! キャン!」

 鳴きながら、小さなピカの土人形がワラワラと走って来た。ピョンピョンと跳ねるように走って来る。ピカのことを親だと思っているのかな? と、見ていたらピカを素通りし、俺の足元までやって来てちょこんとお座りをして整列した。土でできた尻尾をブンブンと振りながら。

「ロロ、褒めて欲しいのじゃないかな?」

「え……れおにい、しょお?」

 そうなのか? なら、ご期待には応えないといけない。

「よくやったねー。えらいえらい」

 そう褒めながら、土人形の頭を指で撫でた。うん、土なのだ。ほんのり温かいけど。

「ピヨッ!」

「ピヨヨッ!」

「ピピッ!」

 雛達まで俺の足元に集まってきた。もうわちゃわちゃと訳が分からない。小さな雛と土人形が入り乱れて、我先にと俺の足元に寄ってくる。

「ちゅよかったねー」

 取り敢えずナデナデして褒めておこう。

「もう、意味が分かんないわ」

「アハハハ。姉上、ロロだから」

「まさか、土人形と雛なのよ」

「わふん」

「え、ぴか。むりら」

 土人形にもお名前を付けてあげてよと、ピカに言われた。そんなの無理だ。俺にそんなにホイホイと名付けできるキャパはないぞ。そうホイホイと、カッコいいお名前を考えたりできないのだ。

「きゅうん」

「くぅん」

 あ、土人形がめっちゃ残念そうにしている。さっきまでブンブンと尻尾を振っていたのに、ペトンと力無く下ろしている。

「あとれかんがえるのら」

「わふん」

 だってピカさん。俺には無理。無茶を言ってはいけない。

「アハハハ! 5体もいるからね」

「れおにい、むりなのら」

「ゆっくり考えるといいよ」

「レオ兄、こいつが畑を荒らしていたのか?」

 そう言いながら、ニコ兄がそこら辺に落ちていた小枝で倒れているボアをツンツンと突いている。

 それは、リア姉が亀さんにやっていたぞ。二人はやっぱ似ている。息がないのだから、もう突いたって動きはしない。固まったように横たわっているボア。

 倒してすぐに血抜きをしておけば、美味しく食べられるぞ。こんな時は、ドルフ爺だ。

「どぉーるぅーふぅーじいぃー!」

 どこにいるのだ? 俺はドルフ爺を大きな声で呼んだ。するとすぐ近くで返事が聞こえた。なんだ、近くにいたのか。

「おう! 倒したか!?

「ドルフ爺、ピカが倒したぞ!」

「よし! 血抜きするぞー! レオ、そこの木に吊るすぞ!」

「分かった!」

 ああ、なんだ。そのための鉈なのか。納得だ。それをじぃーッと見つめる小さな小さなもの。

 ピカを模した小さな土人形達なのだ。真剣な眼差しで見ているのだ。食べたいのかな? ドルフ爺に注目しているのかな? ドルフ爺はこの辺りの畑のドンだ。覚えておくのだよ。

「おぉぉッ!? な、な、なんだぁッ!? なんで土人形が動いてんだッ!?

 ドルフ爺が5体の土人形に気付いた。とっても驚いている。また入れ歯が外れなければ良いけど。

 俺もびっくりしちゃったよ。ふふふん。

「ドルフ爺、あの土人形が攻撃してたんだ」

「なんだとッ!? そうなのか!?

「ロロが作ったのが動いたんだ」

「またロロか!? こいつら強いじゃねーか!」

「うん、びっくりしたのら」

『また』と言われてしまった。何故に? ドルフ爺は、驚きながらちゃんと手を動かして血抜きをしている。今日の晩ご飯はボア鍋だね。こんな大きなボアだと、ご近所にもお裾分けが決定だ。

 ご主人さまー! と、言いながら土人形達が5体集まっている。コネコネと作った土人形。そう、土でできた人形だ。なのにどうして動いているのだ? 俺には理解できないぞ。

 尻尾を千切れそうな位にブンブンと振っている。俺が拘って作った尻尾だ。小さいのに、手足を動かして走っているのを見ると、とっても可愛い。

「かぁわいいね~」

「アン!」

「キャン!」

 鳴き声はまだ子犬みたいなんだけど。みんなであんなに大きなボアを足止めできるなんて凄いぞ。走りながらジャンプしてキックまでしていた。

「ロロ、朝ごはんが途中だっただろ」

「あ、にこにい。しょうらった」

「戻って食べよう」

「うん」

「レオ兄、ロロと戻るよ!」

「ああ! 気を付けるんだよ。もしかしたら、まだいるかも知れないからね! ピカ、頼むよ」

「わふん」

 さあさあ、戻って朝ごはんの続きを食べよう。あのオムレツ、超美味しかったから全部食べたい。

 ニコ兄に手を引かれて家に戻る。ピカや土人形達と雛達も付いてくる。コッコちゃんファミリーだけでも大所帯なのに、5体の土人形がふえちゃった。ご飯は何を食べるのかなぁ?

「わふぅ」

「え、しょうなの? わかったのら。いちにちいっかい?」

「わふん」

 俺が作った土人形達は、俺の魔力がご飯なのだって。だから、日に一度魔力を分けてあげてね。て、ピカに言われたのだ。もし忘れても2~3日は平気らしい。どうなっているのやら。

 しかしなぁ、まさかのまさかだ。まさか動くなんて思わなかった。寝耳に水なのだ。

「土人形、いつの間にか無くなってたもんな」

「うん、しょうなのら」

「もしかして、畑のパトロールをしてくれてたのかな?」

 なんですとッ? それこそ、まさかのまさかだ。

「わふん」

「え……ほんとに?」

「わふわふ」

 そうなのか。それはでも助かるね。土人形達は、本当に畑を守ろうとパトロールしてくれているらしい。今まで獣が家に近づけないように撃退してくれていたのだという。俺に危険が迫らないようにらしい。なんて健気なのだ。