「ククッ」
「クッ」
そう鳴きながら、コッコちゃん達はみんな一斉にお座りをした。あっちでもこっちでもお座りをしながら、キョトンとして俺を見ている合計4羽のコッコちゃん。鳩が豆鉄砲を食らったような顔とはこのことだろう。コッコちゃんも、何が何だか分かっていない。
なのに、ちゃんとお利口さんにお座りをしている。条件反射なのか? 『お座り』が百発百中だ。
「ロロ!」
ディさんが、大きな声で呼びながらやって来て俺の両肩を
ドアップだ。イケメンのドアップは心臓に悪い。やっぱりディさんは良い匂いがする。
「どうやったの!? 何をどうしてこうなった!?」
「おしゅわりなのら」
「いやいやいや……」
おや、いつもより『いや』が多いぞ。
「ロロ、これは凄いことなんだよ」
「え……しょう?」
「そうだよ。一度に何羽テイムしたんだよ」
テイムなのか? そうなのか? ただお座りしただけじゃないのか?
「いやいやいや、テイムしているよ。試しに呼んでごらん?」
「え……しょう?」
そうか? そんなに言うなら試しに呼んでみようではないか。
「こっこちゃん、おいれ~」
「ククッ」
そう鳴きながら、コッコちゃんが4羽、俺を目掛けてやって来た。俺の頭より、少しだけ高い所にコッコちゃんの頭が四つ。コケッと鳴いている。ちょっと、引いちゃうよ。俺、コッコちゃんに埋もれてしまう。うぷッ。
「わふッ」
ピカが一鳴きすると、コッコちゃんは俺の前に整列してまた座ったのだ。
「ぴか、ありがと」
ピカが、整列してお座りだよとコッコちゃんに言ってくれた。
よし、ピカの首筋をワシワシと撫でてあげよう。
「アハハハ! ロロは本当に奇想天外だね~!」
とにかく、捕まえられたのだから良しとしよう。
それからも、コッコちゃんは次から次へと出て来た。ディさんやレオ兄の『お座り』と言う声が聞こえた。俺はまだ寝起きだから、お喉が渇いちゃった。マリーが持たせてくれた果実水を飲もう。
「お座りッ!」
「ん……?」
おやおや? この声はリア姉かな?
「ロロ、リア姉がダメだったぞ」
「え……」
リア姉が張り切って『お座り』と言った。なのにコッコちゃんは知らんぷりだ。ププーの実しか目に入っていない。
「ロロォ……」
リア姉が、お顔を真っ赤にして俺に抱きついてきた。おしおし、ナデナデしてあげよう。
「りあねえ、じゃんねんなのら」
「なんで? なんでなの? レオはできるじゃない」
「アハハハ。レオの方が魔力量は多いし、魔力操作も上手だからだね」
ディさんが冷静に分析した。でもそれは余計に、リア姉を追い込んでいるぞ。
「りあねえ、ポカポカぐるぐるしゅるのら」
「分かったわよぅ」
残念だったね。リア姉がテイムできなかったコッコちゃんは、レオ兄が無事にテイムした。
この日は結局、コッコちゃんを10羽も捕まえた。コッコちゃんも、もうププーの実が残り僅かなのを知っているのかな? 前より次から次へと出て来て、たくさん捕まえられた。
そしてコッコちゃんは、リア姉にププーの実を
「ロロ、嘴じゃ駄目なんだよ」
「れおにい、ろうして?」
「フォリコッコの嘴をよく見てごらん。先端が丸くなっているだろう?」
本当だ。鶏みたいに尖ってない。嘴の形自体はよく似ているのに、先端は微妙に丸くなっている。
「だからね、突かれても痛くないんだ。多分、力も弱いんだろうね。ププーの実を割ったりできないのだと思うよ」
「なるほろ~」
あらら、本当に弱っちいらしい。
「れも、きっくはべちゅ?」
「アハハハ、そうだね。意外に足癖が悪かったね」
だって、ププーの実を取るのも、木に蹴りを入れて実を落とす。その上、実をバキィッと踏み付けて割る。とっても足癖の悪い鳥さんだった。
「レオ、どうやって連れて帰ったの?」
「首に縄を掛けて、歩かせるんです」
「アハハハ! フォリコッコを、お散歩させてるみたいじゃない!」
「しょうなのら」
「でも、お利口ですよ。普通に付いて来ます」
「そうなんだ~」
またまたレオ兄が、バッグから縄を出してコッコちゃんの首に
「コッコッコッ」
「クックックッ」
何かコッコちゃん同士で、話している。何を話しているのだろう? ちょっと興味があるなぁ。
「ぴか、わかる?」
「わふわふ」
『付いて行ったら餌を貰えるかも知れない』と、話しているそうだ。まただ。とっても打算的なコッコちゃん達だ。前に捕まえたコッコちゃんもそうだった。コッコちゃんは、みんなこうなのか?
それ程この森で生きていくのは大変なのか? コッコちゃんにとっては厳しい環境なのだね。
「そろそろ帰ろう」
お魚も沢山捕ったし、ププーの実も採れた。コッコちゃんなんて10羽も捕まえた。不思議な白いマッシュも採った。育てられるかも知れないと、生えていた木を少しだけ切って持って帰る。
ニコ兄は、育てる気満々だ。うちの薬草畑がどんどんバージョンアップするのだ。
帰りもピカに乗せてもらおう。よいしょっと……足を上げてピカに乗ろうとしているのだけど、背中に足が届かないぞ。ピカが伏せてくれているのだけど、伏せていても大きいものは大きい。
「ほら、ロロ」
レオ兄にヒョイと抱き上げられて乗せられた。
「れおにい、ありがと」
「怖くない?」
「うん、へいきら」
「そう、良かった」
レオ兄は、俺がピカに乗っていて攫われたからそう言うのだろう。確かに、トラウマになっているかな? と、俺も考えたりしたのだけど、全然大丈夫だった。女神が癒してくれたからなのかな? でも、周りはそうじゃない。ピカに乗っている俺の両側に、レオ兄とニコ兄が付く。その後をリア姉が歩く。必ずだ。森の中で、ピカに乗っている間はずっとそうだった。俺より、リア姉達の方がトラウマになっていそうだ。
「だいじょぶなのら。もうへいきなのら」
「そうだね」
レオ兄が、優しく頭を撫でてくれる。心配を掛けてしまった。
今日捕まえたコッコちゃん達は、教会に3羽と『うまいルルンデ』に4羽を連れて行くことになった。残り3羽をうちで飼う。うちには既に4羽いる。今コッコちゃんのいる柵を大きくして、近所の数軒で一緒に面倒を見ることになった。卵は順に食べるそうだ。
「明日にでも教会と『うまいルルンデ』に連れて行こう。僕も一緒に行くよ」
何故なら、テイムの素養のある人がいるのか見たいらしい。でも、コッコちゃんはお利口さんだから大丈夫ではないかな?
ディさんは10羽のコッコちゃんを繫いだ縄を持って先頭を歩いている。コッコちゃん達は、お利口さんだ。『コッコッコッ』と鳴きながらちゃんと縄が絡まないように並んで歩いている。
これって何かの行事ですか? みたいな感じだ。
「コッコちゃんが、こんなにお利口だとは思わなかったよ。だから大丈夫だと思うけどね、ギルドで登録もしないといけないな。魔鳥だから、テイムしておくに越したことないからね」
そう、ディさんが話していた。
家に帰ると、またマリーが驚いていた。
「まあまあまあまあ! 今度は10羽もですか!?」
ふふふ。『まあまあ』がいつもより多いのだ。
コッコちゃんは、まさかお先に仲間がいるとは思わなかったのだろう。
「コケッ!?」
と、羽をバタバタさせていたのだ。柵の中に入れお水を入れる。そして、ニコ兄が育てたお野菜の切れ端をあげる。ちょっと柵が狭いのだけど。まさか10羽も捕まえられるなんて思わなかったから、広くしてもらうまで我慢してね。
「こっこちゃん、たべる?」
「コッコッコッ」
おお、寄ってきた。お腹が空いていたのかな? 森で、ププーの実を沢山食べていたのに。
俺が手に持っている、人参の葉っぱ。それをあげてみる。すると、嘴で器用に
「コケッ……コッコッコッ」
「クックックッ」
また何か喋っている。やっぱ、餌がもらえたね~。ラッキーだね~。なんて、言っていそうだ。
「わふッ」
「ぴかも、おみじゅのむ?」
「わふん」
「よしよし」
「ロロ、野菜をあげてたのか?」
ニコ兄が、両手に葉っぱを沢山抱えてやって来た。お野菜を作っていると、一番外側の葉っぱとかどうしても食べない葉っぱが出る。それを、コッコちゃんの餌にしている。
「うん、にんじんのはっぱ」
「食べるか?」
「うん」
ニコ兄が持ってきた山盛りの葉っぱに群がるコッコちゃん達。うん、食い気だね。
さて、ピカにもお水をあげよう。
「ぴか、おみじゅもらいにいこう」
「わふ」
「キュル」
「ちろも?」
「キュ」
よしよし、ピカもチロも可愛いぞぅ。チロは以前よりずっと速く移動できるようになった。
家の周りくらいなら自分でチョロチョロと移動している。と、言ってもスピードは俺が歩くのと大して変わらないんだけど。それでも、成長している。
「まりー、ぴかとちろに、おみじゅちょうらい」
「はいはい。待ってくださいね」
ピカとチロ専用の器にお水を入れてくれる。
「はい、どうぞ」
「わふん」
「キュルン」
お喉が渇いていたらしい。ペロペロと飲んでいる。
俺はキッチンでマリーを見ている。これから今日のメインディッシュ、魔魚の唐揚げを作るのだ。
マリーが、魔魚の鱗をこそげ取る。
「ひょぇ~」
「ふふふ。ロロ坊ちゃま、びっくりしましたか?」
「うん、しゅごいおとなのら」
「そうですね、骨がありますからね」
「へぇ~」
びっくりしたと言いながら、俺は台に乗ってマリーが魔魚を
鱗を取り、頭を落として三枚におろす。骨の部分はスープに使うからお鍋にドボン。
身は一口大に切り分けて、
「ピカだけじゃありませんよ。レオ坊ちゃまやニコ坊ちゃまも食べ盛りですからね」
「ほぉ~」
俺なら、三切れほどあれば充分そうだ。なんせ一口大と言っても、マリーの一口大は大きい。
「ロロ坊ちゃまはこれからですよ」
「ふぅ~ん」
それより、俺はマリーの手元に注目なのだ。俺もできないかなぁ~?
「魔魚じゃない時に練習しましょうね」
「しょうなの?」
「はい、魔魚は骨が大きくて頑丈ですから。坊ちゃまの力では無理ですよ」
そうなのか。狂暴なだけじゃないのだね。それからマリーはワッシワッシと、お魚の切り身を調味料と馴染ませるように混ぜる。そして、粉をドバーッと投入。
「え……」
一切れずつ
手にはニコ兄の育てたお野菜が、超たくさん入ったボウルを持っている。しかも、ニッコニコだ。嬉しそうなお顔をしている。
「今日のサラダはディさん特製だよ。ププーの実のトッピング付きだ」
小躍りしているぞ。絶対に自分が食べたいのだ。その量は何だ? 多すぎないか?
ああ、そうだった。ディさんのサラダは特盛だった。みんなとお皿の大きさが違う。超大きい。
「ロロ坊ちゃま、もうできますからお席に座っていて下さい」
「わかったのら」
「ロロ、座らせてやるよ」
「にこにい、ありがと」
な、俺のそばに絶えずニコ兄がいるだろう? なんだか申し訳なくなってしまう。
「さあさあ、できましたよ!」
マリー特製、魔魚の唐揚げができあがった。今日は晩ご飯もディさんが一緒だ。自分で作った、ププーの実のトッピング付きの超特盛サラダを目の前にデデンと持ってきている。
「ニコは天才だ!」
なんて言う位に、ニコ兄の育てたお野菜がお気に入りだ。
テーブルには、山盛りの魔魚の唐揚げだ。それにお魚の骨で
「いたらきましゅ」
「いただき!」
ニコ兄と二人で、フォークにお魚の唐揚げを刺し、あぁ~んとお口に入れる。
嚙むと、サクッと音がする。そしてお口の中に、ほんのりと甘みを感じるお魚さん。
「ぴょぉ~! うまうまッ!」
「な、超美味いな!」
「あら、本当。美味しいわ」
魔魚の唐揚げ、みんな大絶賛だ。お魚なのに口に入れるとジュワッと旨味が
「しゃくしゃくふわふわら」
伝わるかな? 俺の
これはあれか? 沢山作るとなんでも美味しいと言う法則なのか? 美味しいから良いのだけど。
「ぴか、うまうま?」
「わふッ」
「キュルン」
とっても美味しいらしい。今日はチロも唐揚げを食べている。いつもは胸肉を茹でたものなのだけど、唐揚げをブチッと嚙み切りながら食べている。
みんな笑顔だ。こんな平和がいいね。ちょっと事件があった後だから余計にそう思う。
その日エルザが、お仕事から帰ってきて驚いていた。
「やだ、めっちゃ増えてる!」
アハハハ、そうなのだよ。コッコちゃんのことを言っている。
その日、ディさんはお泊りして行った。