失踪するアバズレ少女たち

 

 

 みなさまスオスダイ!(こんにちは) 前回触れた「妻の三番目の妹の旦那がクスリで捕まった話」ですが、懲役4年まで減刑してもらうことができました。ありがとうございます……。

 と、一息ついたのも束の間。さらなるトラブルを運んできてくれるマイ・ファミリー。今回もそんな傷心に染み入るクメール・ニュースをお届けします。

 

 キュー・カンニャリット情報大臣は、国内テレビ・ラジオ局向けに、以下二曲の過激クメール・ポップスを放送禁止とするお触れを出した。

 放送を禁止されたのは、カエウ・ヴィアスナーの「シーバーンチェッタエシータウ/ヤリまくればいいさ」と、マリスの「トワルタエユートゥープシーオーンバーン/いつになったら私を抱けるのかしら」の二曲。

 これらの曲はカンボジアの文化・道徳・倫理観にそぐわず、公序良俗に反し、女性を貶めるとのこと──。

 

 奔放アバズレ女を彼女に持った悲しき男の苦悩を歌い上げた「ヤリまくればいいさ」。

 その女性版「いつになったら私を抱けるのかしら」は、ろくでなしのヤリチン種馬男を彼氏にした女が、呆れながらも愛ゆえに改心を願う歌、というところでしょうか。抜粋するとこんな歌詞です。

 

 ♪あなたは私を求めるけれど、ヤリたいだけなら、尻軽女を漁ればいい。私を抱きたいなら誠実になることね。いつになったら私を抱けるのかしら〜

 

 目についた男を片っ端から誘惑せずにはいられない、真のアバズレ女が大活躍する「ヤリまくればいいさ」のMVも見ものです。

 アバズレ役のコル・ダヴィーという女優は、MVに負けず劣らず私生活も奔放で、常に男をとっかえひっかえ……。だから普通の女優が嫌がるアバズレ役も喜んで受けた──というのが市井の声。

 かつては首相の親族でもある某有力者の愛人でしたが、奔放ゆえエイズを患って捨てられた、という噂も……。実はこんな話、カンボジアには掃いて捨てるほどあります。

 

 貧しく無学なカンボジア女性にとって、貧困を脱するただひとつの武器が「美しさ」であり、これも家族を救う立派な才能です。

 美しいだけでは一流芸能人として大成は困難ですが、二流芸能人として金持ち男に囲われるのも「ある種の成功」。しかしながら「セフレ以上妾未満」のまま、飽きるまでヤラれ捨てられるケースも多く。それゆえ、保険代わりに不特定多数と並行して交際する女が大勢いるわけです。

 そういう男は大抵コンドームを嫌がります。そして立場上、女も拒否しにくい。そんな情事を繰り返すなか、やがてエイズとなり、ある日ポックリ死んでいくのは二流芸能人のよくある話。数年前に亡くなった友人の実話でもあります。

 

 学生を含む若者たちがゲストハウスの一室に集まり、冷たいのをキメながらのセックス・パーティーなどもあちこちで行われ、集団補導・逮捕も日常茶飯事のカンボジア。

 話が横に逸れましたが、近年、過激な曲が増えている背景には、このような若年層の「性の乱れ」があるようです。そんな荒廃っぷりを如実に示す事件が、都合よく発生してくれました。

 

 教科書のコピーをとってくると言い残し、所持金数ドルでふらりと家を出た14歳少女。

 同日夜、心配する親のもとに当の少女から「サッカーの試合を見て帰る」という一本の電話が……。しかし結局その日は帰宅せず。

 行方がわからなくなってから二日後の火曜日。心配する両親のもとに、トゥールコーク区のゲストハウスでおたくの娘らしき少女を見た──という目撃情報が入ったことから、警官を連れた母親が現場に急行。問題の部屋の扉を開けたところ──。

 

 くしゃくしゃになったベッドの上で、全裸になった自分の娘が4人の若者とグチャグチャにまぐわっていた……そうです。その瞬間の、お母さんと娘の顔。さぞかし見ものだったことでしょう。

 同行した警察は、娘の恋人(?)と名乗る4人の男(1518歳)と、ともに乱交中だった13歳少女(娘の友人)も補導。

 放送禁止の過激曲はこうした現実を憂いたもので、必ずしもカンボジアの道徳・倫理を根拠なく貶めているわけではなさそうです。

 日本も欧米も昔はそうだった……。と言われれば身も蓋もありませんが、特にプノンペンの若者は、男も女も己のリビドーの赴くまま性に対して大変貪欲です。まさに青春の暴走列車。

 

 プノンペン在住で、思春期のお子様をお持ちの親御さん。お子様はどうか、無理してでも高級インターナショナル・スクールに通わせるべきでしょう。

 プノンペンにもちゃんとした学校はあります。高額な授業料をケチっても、お子様の貞操をお金で取り戻すことはできません。今もなお悔恨の念に苦しむ、ペニーからのお願いです……。

 さて、なぜ私がここまで悔恨の念に苦しんでいるのか? 17歳になる私の愚息もまた、この暴走トレインに飛び乗った一人だったからです。しかも運転席に!

 

 暴走列車のレバーを握る我が豚児、出稼ぎ滞在中の隣国タイを密出国し、カンボジアの僻村に住む彼女のもとをこっそり訪ね、2人で村を出奔しました。

 駆け落ちしたのは良いけれど、国内をあてどなく回るうち所持金ゼロ。生活力のない自分らの行き場が無いことを悟り、元の村に戻ったところを、怒り狂った彼女の父親(軍人)に締め上げられて大号泣……。

 父の剣幕に圧倒される娘。娘にすがりついて泣き叫ぶ母。そんな修羅場を呆然と眺める村人たち。

 愚息は留置場で夜を明かし、翌日あらためて持たれた話し合いの結果、相手側にとっては不本意ですが、無理矢理引き裂いて自殺されても困るし、古い因習の残る村において娘はすでに「傷物」だし……というわけで、婚約という形で無理矢理妥協したのでした。

 

 やれやれ、一件落着というわけで、こんなニュースも他人事とは思えません。

 

 家出? 誘拐? プレアヴィヒア州パルハール村で14歳少女が早朝、姿を消した。

 異変に気付いた母親は、親戚宅はじめ、周辺各州をくまなく捜索するも、手がかりは見つからず。ところがその半月後、「コンポントム州のカラオケ店で、おたくの娘らしき少女が働いてるよ」という匿名の知らせを受け、問題の店に急行。

 店主はシラを切るも、母親は軍警察を帯同して店を急襲。すると奥から行方不明となった娘を含む4人の女性がゾロゾロ発見され、因業店主は即刻逮捕された。

 娘によれば、ショート50ドル・ロング100ドルで売春を強いられ、客一人当り10ドルを店主に支払っていたという。取らされた客は3〜4人とのことだが、母親は5千ドルの慰謝料を求め、訴えを起こしている。

 

 少女が己の意志で家出したのか、誘拐されたのか、失踪の理由については一切語られていません。

 カンボジアでは週に数回、行方不明のニュースを目にしますが、失踪者の多くは子どもや女性です。

 人知れず溜め池で溺死したとか井戸に落ちたなどの事故を除き、子どもの失踪のほとんどが誘拐で、攫われた子どもたちは男女問わず、売春を含む労働力として酷使されます。

 これが成人女性の場合、貧困やDVからの脱出などを除き、理由のない失踪者は行方不明のまま、発見されることはまずありません。

 

 子どもや若い女性が行方不明になれば、(当然ですが)家族は必死で行方を捜します。警察を動かすには袖の下が必須ですし、注目を集める事件でない限り、形だけの捜査となります。

 すなわち、ほとんどのケースで家族が自身で情報を収集し、捜索に当っているのが実情です。行方不明の娘を捜し、全国を行脚するおじさん──なんてのも、この国では珍しくありません。

 

 カラオケ店で発見された少女が失踪した理由は謎ですが、行間を読むに、少女自身の意思を感じます。

 封建的な家庭・村社会に嫌気が差したのか、友達のスマホが羨ましくなって、手段を選ばず買う気になったのか、いずれにせよ、身分証も後見人もない若い女が仕事に就くとなれば、水商売か建築現場の作業員、食堂の雑用くらいしかありません。

 

 作業員や雑用は月給100ドルがいいところ。都市部では一人暮らしもままならない額ですし、仕事もきつい。

 こうして、女性たちはごく自然に水商売へ流れ込み、酒とクスリを覚え、売春にのめり込んでゆく……。というのが、鉄板の特急コースです。

 カンボジアの伝統的な宗教観・道徳観において、売春という選択肢はありえませんが、昨今は若者の性意識が大きく変わり、あまり抵抗なく、売春ありきの仕事に就く女性が増えている気がします。

 

 とりとめのない話になってしまいましたが、平和になったとはいえ、ほんの些細なきっかけで、都市部でも農村部でも一寸先は闇。カンボジアでは、子どもや家族から目を離せません。

 うちの息子、マジ、無理してでもインターナショナル・スクールに入れとくべきだったわ……。

(了)