忘れえぬ患者シリーズ:そうかそうか
石を投げれば必ず当たる、謎の団体SGI。私、わけあってSGIには敏感です。
散歩などしているとき、その「地域」がどのような「色」に染まっているか。政党ポスターの勢いを見れば一発で分かります。
ウチの近所は自民党7割。民進・共産が若干という具合。偏見かもしれませんが、貧困と言われる地域には共産党ポスターが多いですし、画一的な民家が密集する区画や、行き止まりの袋小路・送電線の下などには決まって公明党のポスターがベタベタ貼ってあったりするんですよ。
ごくまれに、マニアな友達のご要望で、ややこしい家が点在する我が家の近所を散策したりするのですが、ごちゃっとした薄暗い住宅街をショートカットするさい、なんとも言い難い違和感と圧迫感を察知したことがあります。
振り返れば、見渡す限り公明党ポスターの嵐! 緊張しながら歩き続けると、一帯の家々にはインド国旗を彷彿とさせる、でもちょっと違う三色旗が軒並み、風にはためいてました。
ピースしながら写メを撮っていると、カーテンの隙間からこちらの様子を窺う冷たい視線。小走りで去りましたが、くせになって何度か繰り返したのは良い思い出です。
それからしばらくして、お風呂カーのバイトをすることになりました。簡単に説明すると、組み立て式の風呂桶を運びながら寝たきり老人の家々を巡回し、洗ってあげるお仕事です。
この仕事で唯一楽しかったのは、普段入ることのない他人の家にズカズカ上がり込んで、端から端まで見放題なことでした。
さる大企業のオーナー夫人とか、庭に本人の銅像がある大政治家もいましたが、私に言わせれば、爺さん婆さんになったら皆ただのウンコ製造機。在宅介護してもらえるだけ幸せ者ですけどね。
大変過酷なバイトでしたが、年寄りを風呂に入れた瞬間、いい顔しながら「気持ちええのぉ」なんて呟いてくれた日には、こっちも幾分元気がもらえます。四肢麻痺で歪んだ人なんかは着替えが大変でしたけどね……。
そんな単調な日々が続いたある日、何の変哲もない木造の戸建て住宅に伺ったときのことでした。
初めての訪問に際しては、そこの担当だった同僚が申し送った情報シートを参照するのですが、ちょっと気になる「ある指示」が書き記してあったのです。
注意:風呂桶を設置するキッチンが狭いので、魔法陣はスクエアに敷いてください──。
魔法陣というのは、床のヨゴレや踏み潰されたゴキブリなどから介護者の靴下を守ってくれる、ブルーシートの隠語です。
その日も入浴介助を終え、隣室のベッドまで利用者を運びました。腰のあたりを抱きかかえるように、ヨチヨチと移動しながら隣室を覗き込んだ私は仰天しました。
6畳間にベッド──だけならただの優雅なお部屋ですが、そこにベッドを凌駕する、とんでもなくバカでかいSGIのお仏壇があったのです。
ベッドも相当でかかったけど、巨大な仏壇の存在感には圧倒されるものがありました。ああ、これが折伏大行進(しゃくぶくだいこうしん=当時社会問題になっていた、大規模かつ強引な勧誘運動)の成果か。そう思いました。
その家は死にかけの高齢バアさんと、初老になりかけた息子の二人暮らしですが、生活費のほとんどがバアさんの年金であったことは説明するまでもありません。
あんな巨大なお仏壇があっても、全く幸せそうに見えないのは印象的。息子さんの信心が足りないだけかもしれませんが……。
しばらくしてバイトを辞め、社会人として大病院で働き始めた私ですが、そのときも休憩時間中に「大勝利新聞」ばかり読んでいる困った同僚がいました。仕事は出来る女性だったんですけどね。
選挙の季節になると勿論、公明党への投票を依頼されるのですが、その依頼が彼女からではなく、普段全く口も聞かない、一味であることをおくびにも出さなかった通院バスの運転手さんだったりするのが恐怖でした。
「決まってなかったらさ、頼むよ……」
静まり返った人のいない廊下で、いきなり不意打ちで囁かれた時は鳥肌が立ちました。このばかでかい仕事場に何人の大勝利がいるのか、疑心暗鬼になったものです。
疑心暗鬼といえば、つい先日も、あるバンドをやっている知人から突然ラインが来ました。
普段付き合いがある人ではなく、半年に一度、ライブのお誘いが来る程度のゆるやかな知人ですが、何の用かと思えば、
「公明党の公約で実現して欲しいものは何?」
不意打ちのアンケートだった! 腐ってもビジュアル系バンドなのに……。
回答するから折伏は勘弁してよ……と返したら、「(笑)」とだけ返事が来ました。残念ですがこの先、彼のライブを観に行くことは二度とないでしょう。
(了)