※ 本連載は、日本の社会保障政策における抜け道を検証する目的で執筆されたものです。真似をして読者に不利益があっても、著者および編集部は一切の責任を負いません。
起業家に変身して融資をゲットしよう!
こんにちは、サボールです。今回は、超低金利で金を借りる秘法──その名も「創業支援融資」についてお教えしましょう。
収入も担保もないスーパー貧乏人が、10年間の分割返済で、最大2千5百万円も借りることができるという、まるで魔法のようにヤバい錬金術です!
家族揃って日本に帰国したものの、賃貸住宅の入居審査に落ちまくり、結果、一年分の家賃を現金で前払いするという屈辱の流れで、ようやくUR団地に入居。
ライター収入は月数万円……。少ない貯金はあっという間に底を尽き、当然のように銀行の融資窓口では門前払い。途方に暮れておりました。
そんなとき、役所で偶然見つけたのが今回紹介する「創業支援融資」のチラシ。こいつを手に取った瞬間、ピンときたのです。
──低所得で信用ゼロの俺だって、開業すれば金を借りられるんじゃないか?
創業支援融資とは、都道府県が実施する支援制度。個人事業主として開業届を出すだけで、どこの馬の骨とも分からない貧乏人でも低金利の融資が受けられるというものです。
新規創業の育成が日本の国策になっていることから、早い話、ゆる~い審査で金を貸してくれる、そんな噂を聞いていました。
しかし20万円の教育ローン審査さえ落ちた私が、数百万円もの開業資金をホントに借りられるのでしょうか。確かめてみました!
創業支援融資
都道府県、信用保証協会、金融機関の三者が協力し、新規創業に必要な資金を融資する制度です。
通常の融資であれば、借りたお金を返せなくなった場合、お金を貸した金融機関が損を被ります。だから教育ローンでもカードローンでも、借金する人に返済能力があるか、貸す前にしっかり審査が行われます。
ところがこの「創業支援融資」では、融資先が破綻しても信用保証協会が代わりに返済をしてくれます。
信用保証協会とは、中小企業・自営業者の資金繰り円滑化を目的とした公益法人で、利益を追求する民間金融機関と異なり、そもそも一定の損失は織り込み済みで、最初から予算に組み込まれているのです。
金融機関にとっては願ってもない話。何の実績もない個人にノーリスクでバンバン融資して損失が発生しても担当者はへっちゃら。信用保証協会が全ての尻拭いをしてくれるというわけで、借金するのに必要なのは独創的な事業プランでもコネでもなく、単に「適正な書類」だけなのでした。
要求される書類さえきちんと提出すれば、審査はほぼパスしたも同然。開業直後であれば売上実績がないのも当たり前で、審査のしようもありません。ここでは低所得・信用ゼロの個人という人格を捨て、起業家の仮面を被り、創業計画をあれこれ考え、まとまった開業資金を借りてしまいましょう。
神奈川県の創業支援融資
同様の融資制度は各都道府県にありますが、今回は神奈川県の制度を利用しました。
①対象……1ヶ月以内に新たな個人事業を開業予定の者。また、開業から5年未満の中小企業者(個人事業主を含む)。
②融資限度額……2千5百万円。
③融資利率(固定金利)……年2%。申込前に商工会議所の経営指導を受け、かつ、融資後概ね二度以上の経営指導を受ける場合は年1・6%。
④融資期間……1年超10年以内
⑤返済方法……分割返済(一年以内の据置き可)
⑥担保──不要
⑦保証人──原則不要
収入も担保もない貧乏人に、年1・6%の固定金利・10年間の分割返済で、最大2千5百万円も融資してくれる。なんて素晴らしい制度なんでしょうかね。必要書類は次のとおりです。
・個人事業開業届出書の写し
まずは税務署で開業届を提出しました。この書類一枚で、貧乏ライターの私も起業家に変身です。
事業所は自宅。屋号はサボール商店。事業の内容は「HP制作、翻訳、コンサルティング」としました。開業しただけで大金が転がり込んでくるような気がして、ニヤニヤしながら帰宅したことを覚えています。
・神奈川県中小企業制度融資申込書
サイトから申込書をプリントアウト。氏名・希望金額・希望金融機関名を記入するだけ。
・納税証明書
事業税の未納がない旨を証明できるもの。県税事務所で簡単に取得できます。
・「企業化支援資金」創業支援融資【創業特例】確認申請書
年1・6%の特例金利で融資を受けるために必要。最寄りの商工会議所で事業計画を相談し、記入してもらいましょう。
・印鑑証明書および住民票
役所で印鑑登録して、窓口へ行くだけです。
・企業化支援資金事業計画書
いわゆる創業計画書は大胆に記入しました。
参考までに私の開業動機は「長年タイに住み、タイ語に習熟。フリーランスで翻訳仕事をした経験を活かし、翻訳業を開業する」といった感じ。「タイ語翻訳経験多数。在タイ日系企業でのタイ語通訳など、業務経験も豊富」と少々大げさな文言を記入しました。
資金計画の欄には「営業社員とアシスタントを雇用。人件費と宣伝広告費で300万円が必要」と記入。初年度の予想売上高は4千2百万円としました。ま、このへんの書き方は商工会議所で親切に教えてくれます。
ちなみに融資が行われた後、「計画通り資金が使われているか?」という点については、別段追及されないそうです。いいのかな。こんなんで……。
必要書類をそろえたら、いよいよ指定金融機関で融資の申込をします。大手銀行でもいいですが、地元に密着した信用金庫のほうが親身になって進めてくれるでしょう。
自分の場合は3百万円の融資を申し込みましたが、担保も保証人も不要の制度なれど、融資額は自己資金の三倍程度まで──という目安があります。
ゼロは三倍してもゼロなので、仕方なく親や友人から百万円を集め、その二ヶ月後に3百万円が振り込まれました。
カードローンの審査にすら落ちてしまう無職・無収入のダメ人間でも、低金利で手堅く借金できてしまう──本当に素晴らしい「創業支援融資」ですが、書類を揃えるのは手間ですし、各種の証明書を取得するにも僅かながらお金がかかります。さらに「相応の自己資金が必要」という点もハードルと言えましょう。
私の場合は申請から振り込まれるまで二ヶ月かかりましたので、「今月分の家賃が無い!」となってから申請しても全然間に合いません。そういう人は生活保護に頼ってください。
最終的に、3百万円の現金を手にしてほっと一息。ただこれはあくまで借金です。収入が増えないと返済もままなりませんが、ライターの仕事は少なく、出版社へ営業する交通費すら惜しい……。
ここは他力本願。日本語がたどたどしい妻に働いてもらうか? それともやっぱり生活保護? というわけで次回は、「妻の仕事探し」「生活保護について調べてみた」あたりを書くつもりです。お楽しみに!
(つづく)