実録! 自国の中の異国感

 

 日本のとある大都会、コンクリートジャングルの一角に流れる川のほとり。そこにそびえるスーパー銭湯で働く整体師の群れ。

 整体師とは接客業にして、人との距離が近すぎる職種である。今回は休憩室の雰囲気を通し、整体師たちの日常をノンフィクションでお伝えしよう。

 

 ビール片手に「元気出ルー!」とサンバイザー二重被りでママチャリ出勤する中国人のオバヤン整体師は、この軍団の指名女王。

 昼時には決まって、タッパーにいれてきた犬鍋を電子レンジで温める。窓のない、埃まみれの扇風機がカタカタ回る三畳間の休憩室に獣の香りが立ち込めると、狭い空間に座り込んだ約6名が吐き気を堪える。

 

 女王の隣では、偽装結婚で日本に帰化した小柄な元韓国系中国人が、携帯電話片手に早口のハングルをまくしたてていた。相手は母国の母だ。

 彼女は電話を握る反対側の腕を伸ばし、図体のデカいイガグリ頭の日本人が、毎日その手を揉まされている。

 猪木的にアゴを付き出し、半分白目を剥きながら揉み続ける彼はここへ来て早5年、いつからか無口になり心を閉ざしている。

 

 向かいでは、赤らんだ頬のつややかさが際立つ、恰幅の良い軍隊カットの中国人整体師が、古臭いサッカーゲームに気を取られ、空返事ばかりするイケメン整体師に向かい、昨日パチンコで11万9千円負けた話を血眼で熱く語っている。

 そんな中、アカスリルームがキムチ臭い──との苦情を受け、昼食キムチ難民となったアカスリ師のオバヤン達が、整体師休憩室へどっと流れ込み、人口密度は更に上がる。

 

 スーパーで買うのとはわけが違う、オバヤンご自慢の自宅の甕で漬け込んだキムチと、温まった犬鍋の香りが融合。

 加えて、日本に20年も住みながら上海訛りが抜けない指名女王が、おもむろに納豆のパックを開いて混ぜ始めるや、誰も望まない日中韓の香りが臭結。

 

 真夏の真昼のとあるスーパー銭湯。窓のない従業員休憩室。日本にいながら日本にあらず、東洋のリアルがひしめいている。

 彼らが読み捨てた中華フリーペーパーの居酒屋広告にでかでかと記された「食べる、飲む、遊ぶるの店!」のキャッチコピー。今もあのセンスが忘れられない。

 

DEEYAN(ディーヤン:ボールペンアート&彫刻家)

 元整体師。あまり人と関わり合わず、黙ってモクモクできる仕事を探したつもりが、あまりに人と関わりまくるハメに。

 数千人の身体をほぐしながら、共に過ごした仲間たちは、まるでマンガに出てくるような猛者達ばかり。

 謎の集団 "HRIDAYAM.crew" に所属。

 

公式サイト http://deeyanartworks.blogspot.jp/