絶滅寸前!コリアンスラムで世の中の仕組みを学ぼう
村田らむ
ホームレス、ゴミ屋敷、新興宗教、事故物件、廃墟など……。アングラな場所ばかり取材するライター(漫画家・イラストレーター)。「禁断の現場に行ってきた! 」「ホームレス・スーパースター列伝」など著書多数。2016年は初の同人誌「樹海の写真集」を出版。死体写真たっぷり!
コリアンスラムというと、東京の大久保や大阪の鶴橋にあるような風景を思い出す人が多いと思う。
たしかに怪しげなお店も多いし、それぞれ興味深い街なのだが、今回は商業型スラムではなく、独特の雰囲気に包まれた「居住型スラム」を紹介したい。
京都府宇治市のウトロ地区
戦時中に建てられた労働者用の飯場に、そのまま住人が住み続けている特殊地域だ。地区に入ると、廃屋の周りにデカデカと『オモニのうた』という看板がかかっている。
いやや! どんなことがあっても私はよそへは行かないよ。あの世からお迎えが来るまでは──
「ここには、めんどくさい奴らがいるぞ~」
そんな雰囲気をあからさまにバリバリ出しまくる歌である。隣には世界各国の人たちが手を取りあう、24時間テレビっぽい下手くそな絵が貼ってあった。
戦後70年を経て、どの建物もボロボロ。とある家は風雨に耐えかねて壁が崩れ、部屋の中が丸見えになっている。まるで映画のセットのようだ。
家の前には洋式便器、ビニル製のパイプ、石材、ゴミなどが野放図に積まれている。トタンは腐って穴が空き、窓は崩落してただの穴になっているし、雨漏りを防ぐため天井に敷いたビニールシートは年月が経ちすぎてボロボロになり、無残に垂れ下がっている。
あまりにボロすぎて絶対に人が住んでいなそうだが、洗濯物がかかっている所を見ると、どうやら人が住んでいる。
「あれ? この映像どこかで見たことあるぞ?」
僕はデジャブーを感じた。
思いおこせば、韓国のスラム街、タルトンネにソックリなのだ。数十年超えの汚い建物の周りに、拾ってきたゴミをどんどん積んでいくケセラセラスタイル。
日本にあるコリアンタウン、コリアンスラムは、どこも似たような雰囲気を醸し出している。やはり、国民性、民族性みたいな物が出るのだろうか?
スラム大好きの僕は非常に満足して帰宅した。そして月日が流れた今年、2016年夏に知ったのが『ウトロ地区解体』というショッキングなニュースだった。
『ウトロ地区除却工事を行っています』
慌ててウトロ地区に急行すると、見慣れた風景のあちこちが黄色い金網で囲まれ、このような看板が建てられていた。除却工事──怖い響きだ。
ウトロ地区全体ではないが、かなりの部分が潰されて空き地になっている。
【ウトロ地区小規模住宅地区改良事業 平成28年度除却工事(その1)】──と書いてあることから、その2、その3と順次、取り壊していくのかも。
歴史や政治は知ったことじゃないが、僕好みのボロい家がなくなってしまうのは残念でならない。
ちなみに新たに建てられた住宅には、これまで住んでいたウトロ住人が優先的に入居するそうだ。飯場に70年居座ったら新築のマンションをもらえるって、なかなか羨ましいシステムである。