横浜のインドシナ(神奈川県・いちょう団地)
横浜市のさいはて、川向こうの大和市にもまたがる、総面積27万平米の「県営いちょう団地」。完成から50年近くが経過。総戸数3600の約3分の1が外国人という国際アパートだ。
80年代、ベトナム戦争の影響から、ベトナム、ラオス、カンボジアのインドシナ三国に大量の難民が発生。この一部を日本が受け入れた。
一時収容施設のあった神奈川県内には大勢の難民が定住したが、なかでもこの「いちょう団地」と後述する「横内団地」は別格で、県内でも特殊な地域として知られている。
──実家がいちょう団地のすぐそばでね。親戚もいたから良く知ってるよ。
当時(1980年頃)は外国人より不良が目立ってた。治安は昔から悪かったけど、あの頃は公園の遊具も「ブラックエンペラー」とか「スペクター」とか、族の落書きだらけだった。
近藤真彦の一家もいちょう団地に住んでてね。マッチの弟が親戚と同い年で、俺も何度か遊びに行ったことがあるけど、荒れ狂った一家だったわ……。
それからしばらく後に、境川の河原で勝手に畑をやる外国人が増えてね。団地の住人で共産党員だったKさんが文句を言いに行ったら逆襲されて、怪我をした事件もあった。
そのKさんの娘のYちゃんがいいオンナで惚れてたんだけど、事件の後に引っ越しちゃった。今どうしてるかなぁ、Yちゃん……。(いちょう団地に詳しい40代男性)
特集冒頭の「保見団地」で、ポルトガル語の看板に驚いた私だが、いちょう団地の標識は更にレベルが高く、日本語、英語、カンボジア語、ベトナム語、中国語、ラオス語の多言語表記。
これらの言語がごっちゃごちゃに交じり合い、進入禁止の標識が5カ国語表記だったり、小学校の壁にラオスの坊さんの絵が描いてあったり、カオスという言葉しか浮かばない。
団地内の商店街ひとつとっても、カンボジア雑貨屋に中国人の占い店など、さびれてはいるが国際色豊か。中でもベトナムのおばさんが営む「タン・ハー」という店にはイートインスペースがあり、雑貨屋ながら本場仕込みのベトメシが食べられる。
ベトナム料理に縁がなくても、備え付けの写真メニューで心配無用。ベトナム風サンドイッチ500円。丼もの600円均一という低価格からか、地元のベトナム人からも普段使いの店として親しまれている。
最寄りの小田急・高座渋谷駅から徒歩10分。ほんのり辺鄙なところだが、異国情緒は保証付き。東京から片道千円でインドシナ周遊ができると思えば安いものだ。
いちょう団地:神奈川県横浜市泉区上飯田町