ではこの矢印が数式でどう書き表されるかを考えて見ます。速度ν の物体は時間が1進む間に距離ν 移動するような向きに進みます。この向きで長さが m のベクトルというのは( , )の順にその成分を書くと、( , )となります。実はこれ、相対性理論において四元運動量と呼ばれているものに相当します。空間成分 は物体が光速に近い場合でも使えるように拡張された運動量になります。ここで運動量は質量と速度の積、という定義を思い出して質量を計算すると、 になることが分かります。止まっている人から見て、動いている物体の質量は速度が速くなる程どんどん軽くなることを示しています。これが我々の宇宙では となり、光速に近づく程質量が無限まで大きくなりそれ以上加速できないことになります。

 では作中の宇宙ではなぜ、質量が軽くなるように見えるのでしょうか。質量の別の定義として、物体の速度をちょっと増やすのがどのくらい大変かを表す尺度、というものもあります。たとえばいま速度が一億で、来歴が時空の図でほぼ真横に近い方向を向いているとします。ここから加速して速度が二億になったとします。速度はすごく増えますが、図に描くとどちらもほぼ真横であり、あまり違わないため、ちょっと押すだけで二億に速度を増やすことができます。そうなると質量は「ちょっと押す大変さ 一億」になり、ほとんど0です。これが質量が軽く見える原因です。ちなみに物体と同じ速度で移動している人から見ると質量は m のままです。


E =mc 2

 四元運動量の時間成分 はエネルギーに対応していて、作中では「真のエネルギー」と呼ばれています。図5のように、質量 m の物体が二つ左右からぶつかって合体する場合を考えます。二つの物体は反発して接近させるにはエネルギーが必要だけれど、十分に接近したら反発しなくなる、とします。合体の前後で矢印の合計が変化しないという条件から、合体後の矢印は長さ=質量が で、単純な合計である より少なくなっています。また、合体前に二つの物体が持っていた運動エネルギーは接近するための位置エネルギーに変換されています。このように、物体の持っている位置エネルギーが増減すると質量も変化します。有名なE =mc 2 の式です。ただし回転物理学においては位置エネルギーが増えると質量が減るため、E =mc 2 となります。