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 世界が太陽のギラギラした光の中に消えると、ヤルダはほっとした。長いお別れはとうとう終わったのだ。一ステイント 後、観測室に戻ったときには、ジェンマさえ肉眼では見えなくなっていた。経緯儀の望遠鏡越しに見る太陽とかつての惑星は二重星のうちのひとつにすぎず、この明るい主星とぼんやりした伴星を縁取る紫色と赤はやがて広がっていって、完全な色の尾となるだろう。もし疾走星がヤルダの生まれ故郷の空を照らしているとしても、膨大な距離のせいで、そうした色のすじはかすかになりすぎていて、まったく見分けられなかった。

 ヤルダは計測をして、〈孤絶〉の針路を保つのに必要な調節の計算をした。彼女にわかるかぎりでは、ロケットは漆黒の闇の領域へむかっているが、ここは判断を下すための観測ができる場所ではない。給剤機室に指示を出すには便利な位置だが、エンジンの排気から広がる靄のせいで視界が利かないのだ。山頂付近では天文学者の一団が、澄みわたった宇宙空間の中で、もともとそこにあった望遠鏡──エウセビオは大学からそれも買いとっていた──を使って、ロケットが近づいていく回廊を細かく調べている。〈孤絶〉内でこの先、光学に大きな進歩があるかもしれないが、長い直進のために自分たちが選んだ針路にふつうのガスや塵が存在しないことは、いま 確認しなくてはならない。ひとたび全速力で飛行をはじめれば、そのような障害物は疾走星と同様のものになる。その来歴が──搭乗者たちの認識からすると──広大な空間に瞬時に広がり、前もって探知することが不可能なものに。

 ヤルダにとって、しだいに視界がおかされるこの現象は、完璧に説明がつくと同時に、異様きわまりなかった。〈孤絶〉と、それが踏破しようと計画している領域とのあいだの見通し線は、さえぎるものがないままだろう──しかし、〈孤絶〉の来歴が回廊へむかってカーブするにつれ、視線はそこから無理やり逸らされていく。自然は万人に前眼と後眼をあたえたもうたが、その対称性は三次元でしか保持されない。四空間では、後ろしか見えないのだ。いま現在、回廊方向で前方にある塵からじゅうぶん遠い昔に散乱した光は、四空間内でそれが──〈孤絶〉から見れば──過去からの光になる角度で届く。しかし、もうすぐに、そのような光源から出た光は、〈孤絶〉の未来から届くことになるだろう──従って、光が搭乗者たちの目に落ちるときには、目は光を吸収するのではなく、発することになるだろう。