比率に関するかんたんな計算で、ふたつの辺の値は求められる──それが導く新しい三角関係式は、最初のものよりもエレガントで対称だった。時間における光の周波数の二乗と空間における周波数の二乗の和は一に等しい 。確かに、和が になるのは、ヤルダがいま選択している単位によるものだが、微離スキヤント あたりでも歩離ストライド あたりでも区離ソーンター あたりでも、そこに含まれる周期の数を使って計算される二乗の和は、光の色とは無関係なままだ、という事実に変わりはない。

 それは、一本のすき を引いてできた鋤き跡のあいだの真の距離は、だれかがたまたまそれを斜めに横切って測っても変化するわけではない、という話とじつのところ違いはない。光の波面はすべてが同じ鋤で引かれた鋤き跡だ。光の速さ、色、波長、周波数は、その鋤き跡を横切る角度を測っているにすぎない。

 だが、もし光がそうした幾何学のルールに従ってふるまうとしたら、光が触れるあらゆるもの──光を作りだしたり吸収したりするあらゆる機構、光を曲げたり、散乱させたり、歪めたりするあらゆる物質──も、同じかたちで機能する必要があるだろう。究極的なことをいえば、世界を無矛盾に保っておくためには、あるひとつの角度で起こるあらゆる種類の物理的現象 が、それを四次元的に回転させたときにも、まったく変わらずにちゃんと起こる必要がある。

 光の単純さを説明するためには、科学の半分を書きかえることが必要になるだろう。

 ヤルダは顔をあげた。色褪せゆく空を背に、シーサが姿をあらわしはじめていた。色はまだ弱々しいが、尾の紫色の先端部分は、長串虫の剛毛のように目立っていた。

「あなたはわたしになにをしたの?」ヤルダはいった。

 それから、自分と星のあいだには空気がないことを思いだして、その言葉をあらためて胸の上に描書した。