以下、ヤルダが選択した単位での話。速度の逆数の二乗に、一の二乗を足したものは、波長の二乗に等しい。この単純な方程式が、ヤルダがグラフ化したデータを通る直線に該当する。だがそうなると、この関係は、その振動が光としてあらわれる仮説上の媒体の仮説上の特性から生じるものである必要はなかった。直角三角形の直角をはさむ二辺の長さの二乗の和は斜辺の長さの二乗に等しい 。そういうことだ。ヤルダが何夜もかけて苦労しながら観測した結果から導いた波長-速度の関係はすべて丸ごと、かたちを変えた初等幾何学の定理にすぎなかったということなのだ。

 ただし……そんなことをいうのは馬鹿げているということを除いて。幾何学とは空間における図形に関するもので、時間の中にも伸びる線に関するものではない。こうした結果がどれほど幾何学を連想させるとしても、それはどうがんばっても、アナロジーにしかなりえない。

 たとえ、数学的に完璧なものであったとしても、だ。もしヤルダが、自分はほんとうに平面上の幾何学をやっているのだというふりをしているのならば、赤いパルスの物理構造全体を──波面の間隔を厳密に維持したまま──単に回転させる だけで、より速い紫色のパルスに変えることが可能だ。