「わぁ……」

 袋から取り出した赤い宝石を手のひらで転がして見せると、ミュケが感嘆の声を漏らしました。

「なあに、これ。きらきらしてて、真っ赤で、すごい……」

「宝石というものなんですよ。これ、人間は指輪やペンダントにして身に着けているみたいなんです。ぼくにはそういった知識も加工できる知り合いもいないので、宝石だけになってしまいますけど……」

「ううん、すごいきれい……ほんとに貰っちゃっていいの?」

「もちろんです」

 そっと、割れ物を扱うように慎重に宝石を受け取ってくれたミュケが、光に透かして眺めていました。

 その横顔はとても綺麗で、宝石よりも見とれてしまうものでした。

「嬉しい……どうしよう、すごく嬉しいよ……」

「喜んでくれたのならよかったです。おっと」

 宝石を握ったまま、ミュケが飛びついてきました。抱きとめると彼女は強くぼくを抱きしめて、唇を押しつけてきました。

 さすがに落として割れてしまったらたいへんなので、さりげなく受け取って袋にしまうと、サイドテーブルに置きます。

「んむっ、ん……ちゅ、んんっ……」

 積極的に舌を絡ませてくるミュケに押し倒されて、馬乗りにされたあともミュケはずっとぼくと舌を絡ませ合っていました。

 呼吸が苦しくなってようやくミュケが離れました。唾液で濡れたミュケの唇が怪しく照って、ほほ笑みました。

 むさぼるように再び唇に吸いついてきたミュケがぼくの服を脱がしてくるので、脱がしやすいように協力しました。ぼくが脱がせるよりもはやく自ら脱いでいたミュケの温もりを直接触れるのはなんだか懐かしい気がします。

 柔らかいミュケの体がぴったりと寄り添ってきて、彼女は飽きもせずにずっとぼくの唇に吸いついてきます。口内を蹂躙するようだった動きは次第に落ち着いていって、ゆっくりと、味わうような動きに変化しました。

 キスをしながら、そっとミュケの控えめな胸に手を這わせると、むずがるような息を漏らしました。ならば、とくすぐる手つきで胸を撫でると、至近距離のミュケの瞳が弧を描きます。

 胸の頂点をつつくと、ぴくりとミュケの体が跳ねて舌の動きが少し激しくなりました。なんだか、ミュケの興奮と舌の動きが連動しているようでおもしろいですね。

 馬乗りにされた状況なので体勢的に下半身に触れることはできません。しかし、ぼくの怒張はすでに臨戦態勢で、ミュケの秘部に押しつけている状態です。

 腰を浮かすようにして動かすと、肉棒に愛液がまとわりつくのを感じました。ぬるぬると滑るので、少しずつ激しく腰を動かしていくと、とたんにミュケの息が荒くなって、素股をしている下半身の滑りもよくなっていきました。

「は、あぁ……気持ちいいところがこすれてっ、んっ……あ、やだ、入っちゃう……」

 あまり激しく腰を動かしたせいか、ミュケの膣口に亀頭が引っかかって危うく滑り込んでしまうところでした。ぼくとしてはそれでもよかったのですが、今日はミュケが積極的なのでされるがままにしておくことにします。

 ぬちゃぬちゃと、肉を打つ音に混じって水温も聞こえるようになってようやく、ミュケが唇を離しました。

「……もう我慢できないよ」

 一言だけつぶやくと、ミュケがかすかに腰を上げます。ぼくの怒張を手で固定すると、そのまま一気に腰を落とし込みました。

「──んんっ!」

 鈴口の先がミュケのいちばん深いところにぶつかって、ミュケはそれだけで軽く絶頂してしまったようでした。熱く、ほぐれきったミュケのナカはぼくを歓迎してくれているようで、しっとりと肉棒に吸いついて奥へと誘おうとしています。

 心地よい感触をさらに心地よいものにしたくなって、余韻に浸って瞳を閉じるミュケの腰をがっしりとつかむと、下から思いきり突き上げます。

「んああ! ちょ、いきなりはだめっ」

 なんてミュケの制止もすぐに嬌声に飲まれて消えてしまいました。

 奥の奥、鈴口が存在を教えてくれる女体のいちばん奥をノックするように、何度も何度も叩くと、突然ミュケの膣が強烈に締めつけてきました。

 見れば、ぼくの上でミュケは背筋を反らして絶頂しています。

 ひときわ熱く蕩けた膣の感触を味わいながら、今度はゆっくり、優しく最奥を叩いていきます。

「──は……ああああだめっ、それだめっ! そこ! 奥っ、ぐにぐにしたらまたすぐに……んんんん!」

 ぎゅぎゅ、とまたナカが収縮して、やっとぼくは腰を止めました。

 倒れ込んできたミュケを抱きとめて髪を優しく撫でると、ただでさえ垂れ下がっていた目尻がゆるゆると色づいて、蕩けてしまいました。

「もうっ、またわたしばっかり気持ちよくなっちゃうじゃない!」

「あはは、すいません。でも気持ちよかったでしょう?」

「この! いまに見てなさいよっ」

 頬を膨らませたミュケが上体を起こそうとしますが、そうはさせません。

 馬乗りにされた状態から、ミュケを抱きしめて1回転。すると体勢が入れ替わって、ぼくがミュケを見下ろす形になりました。

「あ、ずるい!」

「ずるくないですよ」

 またしても頬を膨らませるミュケの頭を撫でて、腰の前後を再開させました。

「あ、ん……は、ああ……」

 緩く腰を使っているだけでミュケが喘ぎ声を抑えきれないようでした。正直なところ、ぼくもそろそろ限界が近いです。スクレットさんのお家では健全極まりない生活をしていましたから、すでに吐き出したい衝動でいっぱいです。

「やあ……そんなにゆっくりじゃやだよぉ」

「ぼくも、もう限界ですっ」

 それでも抽送を速めることはなく、肉棒が根元まで埋まるほど深く挿入し、ミュケのいちばん奥を突いてからゆっくりと引き抜いていきます。

 ねっとりとまとわりついた愛液がてかてかと光り、シーツにこぼれたぶんを補給するように挿入します。

「なにっこれぇ! すご……あ、だめ。これだめっ、なんでこんなゆっくりで、こんな……あ、んっくううううぅううぅ!」

 ぎゅ、とミュケの膣がぼくの肉棒を締めつけ、いちばん奥に鈴口がくっついたとき、堪えていた劣情をすべて注ぎ込みます。

「ああぁぁぁあ……おなかいっぱい……たくさん出してくれたんだね……」

 と、至極嬉しそうにつぶやくミュケに、入れたままの怒張が急激に反り返りました。

「やあんっ硬くなったぁ……」

 仲直りというには少し激しく、夜が明けるまで長く続きましたが、ぼくの勘違いはすっかりと消えて、またミュケとともに過ごすことになりました。

 プレゼントした宝石はいつもミュケが袋に入れて持ち歩いていて、まるでお守りのようでしたがぼくはそれで満足でした。



 一度は逃げ出したぼくを、ミュケが再び受け入れてくれた翌日、いつもどおり、と呼ぶにはいささかうしろめたいですが、変わらない朝がやってきました。

 日中は「森の出口亭」でお手伝いをしたり、空いた時間にミュケとともに町を見て回ったり、以前よりもずっとミュケと一緒にいる時間が多くなったような気がします。

 ぼくもミュケもあまり離れたがらないのだと思います。

 ミュケの笑顔を見るたび、後悔で胸が締めつけられましたが、それも徐々に薄れていって、そのうち記憶の奥に消えてしまうのでは、と危惧するばかりです。この痛みはたぶん、忘れてはいけないものなのです。二度と繰り返していけないもので、ずっと痛み続けてほしい、と勝手ながら願ってしまいます。

 今回の出来事で、いくつか学んだことがあります。

 早とちりをしてはいけない、話もせずに逃げ出すのはいけない。ほかにもいろいろとありましたが、いちばん大きいのはこのふたつでしょうか。

 ぼくの勘違いで、ミュケやほかのみなさんにたくさん迷惑をかけてしまいました。サラサさんのところで本を読んだとき、ミュケに直接聞いていればこんなことにはならなかったのでしょう。

 結果的に何事もなく解決したとはいえ、学ぶことは多くありました。

 そして、ぼくはまだまだ紳士には程遠いことを、痛感しました。

 女性を泣かせる男は紳士ではありません。ミュケを泣かせてしまったぼくは、紳士失格です。

 だから、もう一度、あらためて紳士を目指してみようと思いました。

 今度は教本だけを頼りに目指す道ではなくて、ぼくなりの、ぼくがなりたい紳士につながる道。

 とはいっても、この教本だけは手放すことはできないのですが。この本は、そう、いまのぼくを形作った本といっても過言ではありません。紳士を目指す前は、ちょっと頭の回るいちオークでしたからね。

 これから先もきっと手放すことはないのでしょう。ですが、頼りきってしまっていては意味がありませんからね。道に迷ったときには参考にしたいと思います。

 人間と亜人、そして魔獣の価値観。

 それぞれ違うことは今回の一件でよく理解できたつもりです。

 種族の価値観が違えば、個人の価値観も違う。それを知ることができて、よかったと思います。

「ルトっ、ほらはやくはやく!」

「いま行きます」

 なので、これからはたくさんの価値観と触れ合うことも目的に入れて、ぼくは先に進もうと思います。


 紳士なオークを目指して。

<了>