15章 女騎士メルの突発的ストレス解消法


 森を出てからなにかと忙しく、滞在している町の地理をほとんど知らないというのはよろしくないと思いました。

 今日は幸い、「森の出口亭」はぼくの手を必要としないほど落ち着いた1日だったので、ひとりのんびりと町を歩いてみることにしました。

 店主のオリネさんが言っていましたが、本来は常連客が食事に来るだけで宿泊客はそうそうやってこないらしいです。外から見える宿内の様子が繁盛していて、それに惹かれた一見さんがやってきたため忙しくなったとのことでしたが……実際のところ、そんな言葉では済まないほど、忙しくなっています。

 というのも、クレナルさんの一件以来、ミュケとクレナルさんという見た目麗しい女性がふたりも働くようになって、男性客が一気に増えたのです。さらには草食で有名なエルフの作るヘルシーな料理が女性客のあいだで口コミとして広がり、結果驚きの増客につながったのです。

 クレナルさんとミュケもいまはお昼を食べているころでしょう。男のぼくと違って眉目秀麗びもくしゅうれいな彼女たちが宿から離れるのはあまりよくないのでしょう。こんなことを考えるあたり、すっかり従業員という気がしてなりません。

 給金を貰っている時点ですでに手遅れのようですが。

 とはいえ、金銭がない以上どこかで働かなければ森へ逆戻りだったので、オリネさんに雇ってもらえるのはたいへんありがたいお話です。

 お給料といえば、先日興味深いものを見ました。

 カップルと思われる男女のうち、男性のほうが女性に銀色に輝く指輪を贈っていたのです。指輪を贈られた女性は嬉し泣きに泣いていて、しきりに頷いている様子でした。男性はそんな彼女を照れくさそうに、嬉しそうに見ていて、周りの人々からは拍手が送られていました。

 聞くところによると、なんでも人間は得た金銭で他人に贈り物をするというのです。生まれた日や、婚約というつがいになる前儀式のときなど、人間は贈り物をするらしいですね。

 感謝を伝えるため、はたまた愛を伝えるため、贈り物をする理由はたくさんあるようですが、ぼくには贈り物という概念がいままでなく、非常に驚きました。しかし、よくよく考えてみれば確かに効果的で、目に見えるものを相手に贈る、というのは素敵なことだと思いました。

 そこで、ちょうど時間ができた今日、ミュケになにかプレゼントをしたいと思って、町を巡ることにしました。

 ときおり、いい匂いのする露店に近づいてしまうのはご愛嬌、森の近くだというのにこれだけ活気があれば獣たちも寄ってこないのでしょう。

 西から回り始めて、ちょうど「森の出口亭」の反対側にやってきました。ここの活気はいっそう激しく、客引きも活発ですね。歓楽街というところでしょうか。酒場や連れ込み宿が目立ち、高級感溢れる娼館なども存在しています。道ゆく人々がどこか殺気立って見えるのは戦闘したあとにここに寄ったからなのでしょうか。戦うと性欲が湧くというのはよくある話です。

 男性が多いですが中には女性も見えますね。多種多様な種族が集まる町だけあって、ごみごみとしています。こんなごった煮状態でよく治安が維持できるものです。

 と思っていると、娼館の前で喧嘩が起きたようでした。殴り合う男はふたり、どちらも酔っているようで周囲の声も届かないようです。

 喧嘩を止めるために飛び込んだ男が酔った男に殴られて、乱闘になるのはすぐのことです。血気盛んな男が逆上すればこうなるのはわかりきったことですが、あいにくこの歓楽街にはそういった男しかいないようですね。巻き込まれた男が次々と乱闘に参加していく様は見ものですが、これ以上は死人が出てしまいそうです。

「そこまでだ! 加減を知らん馬鹿者どもめっ、その素っ首を残らず叩き斬ってやろうっ!」

 止めようと近づいたところ、ぼくよりも先に声を張り上げる女性がいました。

 女性にしてはやや身長が高く、騎士の身分を表わす鎧をまとっていても押し上げるほどの双丘は目を見張るものがあります。吊り目には怒りの色を浮かべて、すでに抜剣して殺気立っています。

 脳を揺らすような怒声に乱闘していた男たちは一瞬で動きを止めました。

 さながら、女騎士といった風貌の凛々しい女性が一歩近づくと、男たちは思わずといった様子であとずさりました。

「どうする? まだ続けるのであれば私が相手になるが」

 いかめしい言葉とぎらつく剣の輝きに、男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていきました。いえ、ひとりだけ残っていますね。あれは、最初に喧嘩を始めた男の片割れのようです。

「よう姉ちゃん。そんだけ勇ましいと相手もいないんじゃあねえのか?」

「……」

「あ、もしかして図星か? そりゃあそうだよなぁ。そのこわーい顔じゃあ男だって逃げていくもんなぁ?」

 千鳥足で近寄る男を蔑んだ目で見た女騎士さんは、無言で剣を振り上げました。ここまでされれば大抵の人は逃げるのでしょうが、よっぽど酔っているのか、男はにやにやと下卑た笑みを浮かべて、おもむろに女騎士さんの鎧の隙間に手を差し込み、わしづかみにしました。

「な、なにをっ」

「へへっ、いい乳だなぁおい」

「離せっ!」

「よおし、それじゃあ俺が相手してやるよ。極上なモンなのに使わねぇのはもったいねえからなあ!」

 男の行動に驚いた女騎士さんの硬直を見逃さず、男は彼女の手ごと剣をつかむとずいと体を密着させて人目も憚らず大きな胸をこねくり回しています。

 先ほどまでの雰囲気とは違い、顔を真っ赤にしてかわいらしい悲鳴を上げながら身をよじる女騎士さんでしたが、振りほどくことができないようです。

 婦女子に対する乱暴狼藉、これは止めねばなりませんね。

「まあまあ、それくらいにしませんか?」

「ああ!? んだてめぇ、俺の邪魔をしようっていうのかこの豚野郎がっ!」

「そのとおりです」

 ぼくを罵るあいだも女騎士さんの胸をいじり続けるそのぶれなさはすごいです。

 まず、男の頭をわしづかみにします。次に、力を入れました。

「っぎゃあああああっ! まて、おれ、おへがわるかっあああああああ!」

 それだけで男は泣き喚きながら懇願してきます。こういった荒事のときには、この体が頼もしいです。

 しばらく力を入れたままでいると、あまりの激痛に男は気絶してしまったようでした。股間部分がじんわりと濡れており、なんだかやりすぎてしまったようですね。

 ぶらんとぶら下がった男を離すと、女騎士さんの胸をつかんでいた腕も離れました。

 ぽかんとぼくを見上げる女騎士さんはどうやら大丈夫なようです。手を貸そうと腕を伸ばしましたが、ハッと我に返った女騎士さんがぼくの手を見て鼻で笑ってから立ち上がります。

「ふんっ、豚の手は借りんっ! だが、その、助かった……礼は言っておく」

 つんと唇を尖らせた女騎士さんは、不機嫌そうに去っていきました。なにか失礼なことをしてしまったのでしょうか。



 騒ぎが治まったあと、ぼくは当初の目的どおり散策を続けていました。騎士さんたちが後始末をすべて引き受けてくれたので、ぼくはあちらこちらを歩き回り、ときには店を冷やかして楽しんでいました。なぜかやたらと娼館の客引きに声をかけられましたが、ぼくはそちらには一切触れませんでした。

 ぼくが仲間と住んでいた穴倉周辺とは大違いの活気で、目がくらむほど人々の往来があります。きっと、仲間たちはこんな光景を一度も見ることなく一生を終えるのでしょう。いえ、彼らは日々の糧と性器を突っ込める穴があれば満足なのでしょうね。

 人混みの中を歩くには、ぼくの体は大きすぎて他人の迷惑になってしまいます。なので、できるだけ体を縮こめて歩いていると、すれ違った女性とぶつかってしまいました。

「あっと、すみません」

「いやなに、こちらこそ……む、貴様」

「あれ、さっきの騎士さん、ですか?」

 どうやら勤務時間を終えた女騎士さんとぶつかってしまったようです。ごつい鎧は着用しておらず、パンツルックの装いは私服でしょうか。すらりと長い脚は太ももを大胆にもさらけ出しています。上はぴっちりとしたシャツで、男の目を釘づけにするのが目的とすら思えてしまうほど胸が強調されています。

 正直に言って、全裸よりもよっぽど恥ずかしい格好に思えてしまいます。恥ずかしくないのでしょうか?

「貴様、まだこんなところでうろついていたのか? ……もしや、性欲を発散する相手を見繕っていたわけではあるまいな」

 胡乱うろんな眼差しを向けてくる女騎士さんにぼくはあわてて弁解しました。ぼくの特異性は置いておいて、普通のオークの性欲の強さを滔々とうとうと語って聞かせました。我慢できるような種族でないことも、我慢するつもりもない種族であることも。

 なによりも、

「ぼくが普通のオークであれば、貴女のように綺麗な女性を前にして襲いかからないことがその証拠です!」

 そう力説してしまってから後悔しました。ぼくのような醜いオークからそのようなことを言われたところで、顔をしかめるか眉を寄せるか、どちらかにひとつしかないでしょう。おそるおそる女騎士さんの様子を窺うと、予想したように眉を寄せて、顔を赤くして激怒しているではありませんか。

「わ、私が綺麗……? ふんっ、オークだけあって目は節穴のようだな! 誇れるのはそのはた迷惑な性欲だけか?」

 やっぱりこうなってしまいました。そう言われてしまえば否定する言葉は持ち合わせていません。なにせ性欲の権化と語られてしまうほど、オークはそればかりなのですから。

 知らずのうちに視線が下がってしまいました。ここにいては女騎士さんも不快でしょう。いえ、この馬鹿でかい図体なのですから、通行人の方にも迷惑だったのでしょう。おとなしく宿に引きこもろうと決意しました。

 できうるかぎり体を縮こめて、うつむいたまま立ち去ろうとすると、女騎士さんに肩をつかまれました。

「ま、待てっ、その……さすがに言いすぎた、と思う。すまない。今日は気が高ぶっているんだ……あのとき助けてくれた恩人に失礼なことをした。本当にすまない……」

 そう言ってぼくに頭を下げる女騎士さんは、本で読んだように誠実でした。誰だって感情が先走ってしまうことはありますから、ぼくは気にしないように言いました。

「ゆ、許してくれるのか……? どうやら本当に私の目が曇っていたみたいだ。そうだ、夕飯は食べたのか?」

「いえ、まだです」

「そ、そうか! なら、お詫びといってはなんだが、ご馳走させてくれないだろうか? 助けてくれた礼も兼ねて……」

 しばらく考えましたが、ごはんを食べるだけなら平気でしょう。

「わかりました。それじゃあお言葉に甘えて」

「そうかっ、ではさっそく行こう! 実は近場にいい店があってなっ」

 さきほどとは打って変わってはしゃぐ女騎士さんに驚きながら、先導する彼女についていきました。どうやら、本当に機嫌が悪かっただけのようですね。とはいえ、彼女の言葉はこの町に暮らす人間の本音でしょうから、気をつけないといけません。

 オークはオークなのですから。



 確かに美味しい食事でした。

 新鮮な魚料理を出すお店です。店内も清潔感溢れていましたし、店員さんの対応も、人間ではないぼくを見てもちっとも嫌な顔をせずに丁寧に対応してくれました。また来たい、と思わせるには誠実な仕事がいちばんなのだとあらためて感じました。

 向かいに座る女騎士さん──メルさんは葡萄酒の注がれたグラスを上品に傾けてはどこか上機嫌にほほ笑んでいます。

「ご機嫌ですね」

「ん? まあ、そうだな。こうして誰かと食事に行くのはひさしぶりなんだ。なにせ、きみも知ってのとおり私はきつい性格だから、気安い友人がいないんだ」

 悲しいことをさらりと言って笑うメルさんに同情を禁じえませんでした。涙を堪えながらグラスに葡萄酒を注ぐと、メルさんはさらに機嫌がよくなったようでつまんでいる小魚のフライを頬張りました。

「うむ、うまい」

 本当にご満悦のようで、見ているぼくもなんだか嬉しくなってしまうくらいです。

「そういえば、ルトはどうして森を出たのだ? こう言ってはなんだが、人間の住む町は暮らしにくいだろう」

「それは、確かにありますけど、ぼくは群れの仲間たちの中では異端でしたから。彼らはそれこそ野生的ですけど、ぼくはついていけなくて」

 女性を見かければ襲いかかり、すぐさま腰を振る種族です。その生活だけで仲間たちは満足なのでしょうが、ぼくは途方もない疎外感を覚えていました。

「なるほどなぁ。確かにルトは人間よりも理性的なほどだからな。しかし、この町ならまだしも、よそへ行くのは控えたほうがいいだろう。とても言いづらいが、オークは歓迎されないからな」

「それは……確かにそうなのですが」

 以前、人間の領地へ足を運んだことでぼくはそのことを学びました。あそこは人間のための町です。ぼくではなじめないでしょう。

 ですが、同じところに留まって本物の紳士になれるとは思えませんでした。

「なに、この森の境目にあるヌヌの町は唯一きみたちを受け入れている町だからな。ここならば安泰に過ごせるさ」

 だんだん、グラスを傾けるペースが上がっているようでした。顔は紅潮しているものの、呂律ろれつはしっかりしていますし酔った様子はありません。メルさんはお酒に強いようですね。

 と思った矢先のことです。

「むぅ……暑いな」

 そうつぶやくと、メルさんはぴっちりとしたシャツをおもむろにたくし上げ始めました。

「ちょ、ちょっと、ここお店ですよ」

「む? そうか……なら涼みにいかないか? ここは暑くて仕方がないんだ」

 ただの飲みすぎですよ、と告げる前に、メルさんは会計を済ませてさっさと店から出てしまいました。


 酔っているのかいないのか、しっかりとした足取りで進むメルさんを追いかけていくと、噴水のある公園に到着しました。

 静かで清涼な雰囲気のある公園には人気ひとけがありませんでした。こういう雰囲気のよいところにはカップルが目立つものですが、今日は運よく誰もいないようです。さすがに逢引あいびきの最中に酔っぱらいを追加するのは忍びないですから、好都合でした。

 大きなベンチに座り込んだメルさんは、短いシャツをひらひらと扇いで涼んでいるようです。

 目の毒ですね。形のよいへそが見え隠れして、そこらへんの男性が目撃すれば生唾を飲み込んでしまうような光景です。

 ずいぶんと異性の目にも無頓着というか、鈍感というか。もしかしたら羞恥心に興奮する露出癖なのかもしれませんが、さすがにそういった様子は見られません。単に鈍いだけなのでしょう。

「ん……」

 思わず凝視してしまって、あわてて顔を上げるとメルさんが流し目でぼくをちらりと見ていました。この人の性格だと、怒鳴られてしまうと予想したのですが、いくら待ってもメルさんが怒る気配はありませんでした。

 それどころか、先ほどよりもわずかにシャツを強く扇いでいるような気がしました。そのおかげでへそはおろか、下乳のほんの少し下まで露出しています。ぼくはそこで、ふと思いつきました。

 もしかしてこの人、見られると興奮する性癖なのでしょうか。


『紳士たる者、些細なしぐさで相手の欲するものを見極めるべし』


 その一文を思い出しました。

 じっと見つめるのはどこか違う気がするので、それこそ、階段を先に上る女の子のスカートの中がちらりと見えてしまってついつい目が向かってしまうような、そんなちら見を試してみました。

 すると、ぼくに見られていることに気づいたらしく、メルさんはわずかに息を弾ませました。

「そういえば、騎士さんは普段どんな仕事なんですか? ぼくはその、ずっと森にいましたから興味があって」

「んんっ……そうだな、交代制の見回りや、その最中で起こった争いや事件の解決、あとは訓練も仕事のうちだ」

「縁の下の力持ちみたいですね」

 ちら、とメルさんに目を向けると、彼女は扇ぐのをやめてショートパンツのボタンをひとつ外していました。薄暗いためよくは見えませんが、フリルが見えたのであれはショーツも露出してしまっているようですね。

「は、ふぅ……」

 思わず、といったふうにメルさんが熱い吐息を漏らしました。やっぱり、見られて感じる性癖なのでしょうね。町中で再会したときの私服がやたらと露出気味だったのは、男の視線を理解しながら楽しんでいたからですね。

「そういえば、この公園って雰囲気いいのに人がいませんね。なにかいわくでもあるのでしょうか?」

「……いや、そんなことはない。ただ単に夜も遅いからな」

 ちらり、とまたメルさんから視線を向けられました。そんな物欲しそうな目をしなくても平気ですよ。

「これだけ人通りがないと、結構な穴場ですね。人目につかないからこう、カップルはいちゃいちゃできますし」

「そ、そうだな」

「本で見たことあるのですが、人間の中には真夜中の人がいない時間に裸で外へ出る性癖の人がいる、っていうのは本当なんですか?」

「えっ、え、ああ。そうだな、そういった性癖の人間がいることは確かだ。私も、人前で脱ぎたがる癖の人間を何人か検挙したな」

 もぞもぞと太ももをこすり合わせながらメルさんが言います。

「いるところにはいるんですね。……ぼくたちオークでも、そんなやつはいないけどなぁ」

 これは独り言です。メルさんに聞こえるような声量の独り言です。

 すると、熱に浮かされた目でメルさんがぼくを見ました。

 言外に、貴方はオーク以下ですね、と言われたも同然でしょう。ぼくに露出癖がばれていないと思っているメルさんには、ちょうどいい蔑みの言葉ではないでしょうか。

 見られて喜ぶ性癖の人は、少なからず被虐的です。見られることが広い意味で被虐ですからね。

 予想どおり、メルさんはぼくの言葉に背筋を震わせて、思わずといった具合に小さな嬌声を漏らしました。

「そういえば、メルさんもずいぶんと派手な私服ですよね。目のやり場に困るくらいですよ」

「そ、そうか? わたしとしては普通なのだが……」

「だいぶ男性の目を引くと思いますよ?」

「そ、そうなのか。以後気をつけよう」

 なんて心にもないことを言いました。そろそろ、遠回りに責めるのはまどろっこしいですね。

「いえ、そのままでもいいんじゃないですか? だって、メルさん見られて喜ぶヘンタイですよね?」

「なっ……」

 ぼくは見逃しませんでした。冷たい声色のぼくに、メルさんが一瞬だけ歓喜の表情を浮かべたのを。

「いくらオークが考えなしのその日暮らしだからって、それくらいはわかりますよ? もしかして、気づかれないと思ってあんなに服をぱたぱたさせてたんですか? 下品な目で見られることに喜んでいたんですか? それとも、ぼくが見ていることに気づいて、わざとショーツまで見せたんですか? ……まあ、どちらにしてもオーク以下のヘンタイですが」

「ち、ちが……」

「違いませんよね? だって、オークのぼくに見られることを望んでいたんですよね? それはつまり、自分がオーク以下だって証明しているじゃないですか」

 蕩けたような表情でいまにも喘ぎ出しそうなメルさんが、震える指で自らの服に手をかけました。

「あれ、脱ぐんですか? ぼくにここまで言われて、それでもなお脱ぐんですか? ……そこまでヘンタイだったとは思いませんでしたよ」

 ごくり、とメルさんの喉が鳴って、彼女はおそるおそる服をまくり上げます。

 あたりを気にしながら、意を決したようにシャツを首元までぺろんとまくりました。

 ぷるん、と豊かな双丘が揺れ、痛々しいほどに立ち上がった桜色の乳首が精一杯自己主張しています。

 どこかすがるようにぼくを見つめるメルさんに、もっとも求めているであろう言葉を投げかけました。

「あーあ、初対面のときはあれだけ凛々しかったのに。ご両親が泣いているんじゃないですか? ああそうだ、どうせならその格好のまま詰所に連れていってあげますよ。これがお堅い騎士様の本性だってわかれば、みんな仲良くしてくれるはずですよ」

「あ、あ、そ、それだけは……」

 と言いながらも、メルさんはひどく嬉しそうに瞳を濡らしています。それにしても、自主的に脱ぐとは思いませんでした。形といい、ボリュームといい、整った乳房が丸出しなのですから、通行人がいたらいろんな意味で終わってしまいそうな姿です。