あとがき


 本書をお買い上げ下さり、誠にありがとうございます。あとがき担当の梅原と申します。

 さて、この一巻のあとがきでは、少し複雑な事情になっている本シリーズ、『Vivy prototype』の成り立ちまわりについて説明しようと思います。

 元々本シリーズは、文字通りアニメーションの『Vivy -Fluorite Eye's Song-』のプロトタイプとして企画されました。いきなりアニメーションの脚本を書くのではなく、その叩き台となる物語をまず小説で作ろう、という試みでした。

 つまり本シリーズは所謂「アニメーションのノベライズ」ではなく、かと言って「原作小説」でもありません。あえて言うなら、「原案小説」が一番近いでしょうか。

 その証拠に、既にアニメーションの前半話数をご覧になって下さっている方はお気づきかと思いますが、物語の内容が小説とアニメーションではかなり異なっています。そもそも主人公であるヴィヴィの設定からして違いますし、小説の色々な要素を、どちらかと言えば削ぎ落とす方向で脚本にしています。

 ですので本シリーズは、大きな流れ自体はアニメーションと同じながらも、構成や設定、登場するキャラクターなどは小説独自のものになっていることが多々あります。エピソードによっては結末自体が違います。

 ぜひアニメーションと小説、両方をご覧ください。「小説のこの話がアニメーションではああなるのか」という楽しみ方、逆に「アニメーションのあの話は、元々はこういう話だったのか」という楽しみ方。いずれにせよ、より深く『Vivy』の世界に触れることができると思います。


 そして、重要なことをもう一つ。

 ここまであとがきを書かせておいてもらってなんなのですが、実は一巻に関しては、梅原は本文を一文字も執筆しておりません。全て長月さんが執筆されました。

 というのも本シリーズは、まず全体のプロットを長月さんと梅原で作成し、以降は個々のエピソードをそれぞれ別々に執筆するという手法を取っているからです。続く二巻は一巻と逆で、梅原が本文を執筆し、長月さんがあとがき担当となっています。

 一つの小説を複数人で書くというのは、梅原としては初めての経験でとてもわくわくしながら書かせて頂いたのですが、同時に結構なプレッシャーでもありました。

 なにせ、相方があの長月さんなのです。

 小説に対する経験値が違いますし、なにより長月さんの小説は面白い。この巻で特に印象に残っているのはヴィヴィとモモカの関係性とその展開で、このエピソードのトーンや雰囲気がこの物語を描いていく上で、一つの大きな指針となったと言っても良いと思います。最初に読ませて頂いたとき、モモカに降りかかる急激な運命に驚かされ、その展開の理由を長月さんに尋ねると、「いや、これはここで読者さんや視聴者さんをいきなりぶん殴るためにあるんですよ」と返ってきたことは今でも鮮明に覚えています。

 あと、長月さんのファンの方ならお分かりかと思いますが、やっぱり双子の物語が上手い(笑)。

 正直、サンライズのエピソードに関しては、二人でプロットを作ったときには、


長月「AIものだったら、同型機のドラマは鉄板だと思うんですよ」

梅原「探査機のはやぶさが好きで。宇宙で役割を全うしながら燃え尽きるAIって良くないですか」


 くらいしか決まっていなかったのですが、それをこんなお話に仕上げて頂けるとは。

 梅原のお気に入りはエリザベスで、今後も登場するシスターズも含めて、唯一「ザベっさん」という愛称をつけて呼んでいます。

 この巻のクオリティに負けないよう、次巻を執筆しています。

 何卒、今後もヴィヴィの旅にお付き合い下さい。


 最後に、謝辞になります。

 エザキシンペイ監督以下、WIT STUDIOの和田さん、大谷さん、アニプレックスの高橋さんをはじめとするアニメーションスタッフの方々。貴重なご意見、大変助かりました。

 編集の佐藤さん。変則的な執筆体制の中、様々なコントロールと調整、本当にありがとうございます。

 イラストを担当して下さったloundrawさん。ご一緒出来て大変光栄です。この巻の表紙が送られて来たとき、「うわ、loundrawさんの画だ」(当たり前)と思ったのを覚えています。好きです。

 執筆者の長月さん。面白い物語をありがとうございます。先陣を切って物語を紡いでいく方が圧倒的に難しいのにもかかわらず、その壁を見事に飛び越えて本シリーズを走り出して頂きました。引き続きよろしくお願いします。


 そして、本書を手に取っているあなたに最大級の感謝を。

 この物語があなたにとってなんらかの糧になるのであれば、それに勝る喜びはありません。

 それでは、また。


梅原 英司