眺めているうちに、傾向がつかめた。商品画像と施主には関係がある。このコムズ白山に入っているテナントが施主だと、恵み札が商品画像つきになる。商品画像のない恵み札は、「講中」が施主になっている。
講中? なにそれ? と思いながら掲示板を見ていくと、端のほうに説明があった。「恵まれ講 恵まれさんを支える団体、それが恵まれ講です。施主が『講中』になっている恵み札は、恵まれ講のお布施によるものです」。説明に続けて、コムズ白山恵まれ講のメンバーリストが書いてある。コムズ白山のテナントのうち四分の一くらいの名前がずらりと並んでいた。
メンバーリストと恵み札を比べてみると、施主として名前を出しているのはみな恵まれ講のメンバーだ。恵まれ講のメンバーの店が売っていないものだけ、団体として費用を出して買っているらしい。
テナントは営利企業だから、ご利益じゃなくて宣伝が狙いなんだろうけど、恵み札は冷蔵庫でも一枚、ボールペンでも一枚。値段が何桁も違うのに、どちらも同じサイズが一枚。これでスポンサーが納得するの? 不思議だわ。
それにしても、恵み札が百枚。
箸、ボディソープ、靴、下着、ドライヤー、机、掃除機、ゴミ箱、洗濯洗剤、蛍光灯、やかん、ベッドのシーツ、アイロン、セロハンテープ、かばん、フライ返し、爪きり……、人間が暮らすのって、こんなにたくさんのものが必要なんだ。二十枚くらい見るまでは「へー」と思ったけれど、その先は「うーん」で、半分くらいのところでもうずっしり重たくなって、見るのをやめた。
突然ですがここで私の推理をお知らせします。恵み札の品目のなかに、冷蔵庫やドライヤーや掃除機があるということは、絵藤真名は一人暮らしです。それも、恵まれさんになると決まってから一人暮らしを始めることになったのでしょう。
そういえば、『風来包丁』に出てくる恵まれさんは、孫娘(ヒロイン)が近所に暮らしていたのに、一人暮らしだった。もしかすると、恵まれさんは一人暮らしと決まっているのかもしれない。
大量の恵み札を見たら、なんだかもう、お腹いっぱい、という気分になってしまった。恵まれさん本人を見るのはまたにして、買い物を済ませて帰ろう。
と思って、書店に行くと。