「ねえねえ、ソナちゃん。ハルちゃんたちは大丈夫かしら……」
「ユグ……そんなに心配なら、一緒についていけば良かったのではないか?」
しかし、部屋の中にいるのは、黄金の髪を持つエルフの少女のみ。
その会話の相手は、
「だって、ハルちゃんが、妖精たちも親離れする時が来たって言うから……」
虚空から聞こえたその声に、エルフの少女は深いため息をつく。
「それならばついでに、子離れもしたらどうだ? あまり過保護なのもよくないだろうに」
「ううぅ……ソナちゃんのいじわる!」
「そうか、それならば、意地悪な私は黙るとしよう」
エルフの少女は
しかし――
「ああ、ハルちゃんたちはいじめられてないかしら。他のダンジョンは恐ろしいところだっていうし、もしかしたらモンスターに食べられちゃうかも……ねえ、ソナちゃん。ほんとに大丈夫なのかしら?」
「知らん」
「ソナちゃんが冷たいよう。ハルちゃんも、最近はめんどいって言って、ぜんぜんかまってくれなかったし――」
ブツブツとつぶやき始めたその声を無視して、エルフの少女は精神を集中させ始める。
「ねえねえ、ソナちゃん――」
「……」
「ソナちゃんってば――」
「……」
「ソーナーナちゃーん!」
虚空から響く声が執拗に彼女へと語り掛け、その集中を乱す。
「あれは、ソナちゃんがまだ、ぴちぴちの100歳の時でした――」
「ええい、うるさい! ハルたちが無事か、確かめればいいのだろう!」
とうとう根負けしたエルフの少女は、深い深いため息をつくと、虚空へと目を向ける。
「やったぁ! さすがソナちゃん。頼りになるぅ!」
「……まあ、私もいろいろと確かめておきたいと思っていたからな。ちょうどいい機会だ」
「いろいろ?」
「ここ最近の地脈の乱れの原因に、あの乱暴者を
「うーん。ちらっと見た限りでは、悪い人じゃなさそうだったけど……」
少し前の出来事を思いだし、そうつぶやく声だが、エルフの少女は首を横に振る。
「いや、ハルならまだしも、お前の判断は当てにならん」
「えぇー……」
当てにならないと言われ、虚空から不満げな声が
「ねえねえ、ソナちゃん」
「今度は何だ?」
「もしもだけどね? もしも、あのダンジョンのマスター君が、悪い人だったり、ハルちゃんたちの秘密を知っていたりしたら――」
「そんなの、決まっているだろう?」
エルフの少女は、はるか遠く、『黒軍の大穴』が位置する方角へと視線を向ける。
「
そう告げる少女の声は、まるで氷のように冷たかった――