肉を打つ鈍い音と共に、力の抜けたシグルドの身体は人形のように吹っ飛ばされる。
そして……壊れたような笑い声は、そこで途絶えた。
動かなくなったシグルドを見て、タクミは息をついてから魔具に通信を入れる。
「カリン、そっちの様子はどうなった」
『……血は失ったけど、血管と傷口の縫合は終わったわ。クロリスの話じゃ生体反応も安定したみたいだから――』
『ウォオオオオッッ! クノン教官ッ!! 我々はいつまで痛みに耐えるのですかッッ!!』
『いい……いいぜェおいッ!! この痛みだけでオレは天に昇っちまうぜェェェェッ!!』
『……バカとアホがうるさい』
『本当にうるさいんですけどぉっ!? ボクはまだ心音
『おや、クノン様。まだ安静にしていた方がいいですよ。
『バカとアホが
魔具の向こうから殴打する音と
「……まったく、相変わらず騒がしいな」
『ほんとにね。待っててあげるから、あんたも早く帰ってきなさいよ』
そんな言葉と共に、カリンからの通信が切れる。
「ああ……ちゃんと、お前たちのところに帰るさ」
◇
空を
リヒテルト王城の会議室で、各国の代表たちは一部始終を眺めていた。
「なんだ……今のは、一体なにが起こった……ッ!?」
光の粒子となって消えていく神獣を眺めながら、ケリンズが言葉を震わせる。
暗雲を
その光景に誰もが言葉を失っていた。
そして、ヤコルは
「アリッサ
「はい。
冷静に、アリッサは
「少人数での神獣の討伐例は、英雄国家シュトラーゼ以外には存在していません。だからこそ、うちの第一席であるアルフェンが直々に亜人たちを眺めに来訪したんです」
来訪した理由を語ってから、アリッサは表情を険しくする。
「ですが、神獣が復活したという前例はありません。まして……討伐した神獣を従えるなど、およそ人に為せることではありません」
突如現れた神獣は、何者かに命じられて空の暗雲を消し去った。
神域に至った獣を従える存在。
「それに……私たちシュトラーゼが確認していた神獣六体。そのどれもが七年前から消息を絶っています。そしてその後、一度も姿を現していません」
「ま、待て……それはつまり――」
「『不滅の炎骸』の件からして、おそらくリヒテルトの亜人たち、そして……神獣を従える者が六体の神獣を
アリッサの言葉を聞いて、ケリンズは口を開けたまま
神威の一撃によって全てを葬り去る神獣。
その神獣たちを――リヒテルトは七体保持している。
「正直に申し上げます。英雄国家シュトラーゼの第一席から十席、そして国を挙げたとしても、複数の神獣を同時に討伐することは不可能です。同時に
神獣を狩った経験があるアリッサだからこそ、リヒテルトの戦力を明言できる。
『ゲーム』の提案を
圧倒的なまでの戦力差。
力同士の対決など、タクミたちには『ゲーム』という遊びにすらならない。
「うぁぁぁぁ……てか、リヒテルトがこんな戦力を持ってるなら私たちとの協力関係も解消ですよね!? あ、アルフェンが『ゲーム』を受けた理由ってこれかっ! 話せよっ! そんな重要なことなら話してから帰れよぉぉぉぉぉっっ!!」
アリッサが頭を
「なるほど。
ラクリアの言葉に賛同するかのように、各国の代表たちは
そんな面々に向かって、ラクリアは
「それでは
夕闇の廊下を歩きながら、今回の件について思考する。
「エドガルドの様子を見に来たつもりでしたが――思わぬ収穫でした」
そう呟いてから、鳥籠に向かって言葉を紡ぐ。
「アルフレッド、今日は
無機質な
そして、自信に満ちた
「女神の代行者……タクミ、ですか」
その名を口にしながら――ラクリアは口元に笑みを作る。
「彼が新時代の英雄となれたらいいですね――アルフレッド」
旧時代の英雄の名を口にしながら……ラクリアは夕闇へ溶けるように歩んでいった。