「ファントムセンス」とは何か「ファントムセンス(VR感覚)」とは、「視覚」「聴覚」しか再現されない現在一般的なVR体験中に、本来感じるはずのないそれ以外のさまざまな感覚を擬似的に感じる現象のことです。
感じる感覚の種類や強さには個人差が大きいものの、現在メタバースの数多くの住人から、さまざまなファントムセンスを感じたという例が報告されています。人間の感じる感覚機能のうち代表的なものを「五感」と言いますが、その残り三つである「触覚」「嗅覚」「味覚」はもちろんのこと、「落下感覚」「風の感覚」「温度感覚」などもよく挙げられます。
メタバース内で生活する住人を対象とした体系的な研究が行われるのはこれからの分野ですが、後述するとおり、原理的には脳がアバターの身体を実際の身体と「誤認識」することなどによって起こると考えられます。
なお、「ファントムセンス」と「VR感覚」という言葉はほぼ同じ意味で使われることが多いですし、本書でも特に区別せずに扱いますが、しいて言えば以下のような由来の違いがあります。
「ファントムセンス(Phantom Sense)」:こちらは「幻肢(Phantom Limb)」に着目した表現です。交通事故などで失った身体の欠損部位の痛みを感じる現象を「幻肢痛(Phantom Pain)」などと言うように、物理的には存在しないはずの「幻の」身体部位のことを「幻肢(Phantom Limb)」と言い、それによって感覚を感じる現象のことを指します。VRの登場により、物理的には存在しない「幻の身体」であるアバターの感覚にもこの言葉が使われるようになりました。欧米のソーシャルVRユーザーの間ではこの言葉が使われることが多いです。
「VR感覚」:こちらは「VR(バーチャルリアリティ、仮想現実) 」に着目した表現です。物理的には視聴覚しか再現しないはずの現在のVRにおいて、ユーザーがそれ以外のさまざまな感覚を「仮想的に」に感じる現象のことを指します。日本のソーシャルVRの住人、特にVRChatのユーザーが使い始めて広まった言葉です。