本章では、メタバースが引き起こす経済の革命について、ミクロ経済・マクロ経済の両面から理論的解釈を試み、「分人経済」「超空間経済」という、従来の物理現実における経済の常識を根底から覆す、二つの大きな革命が迫っていることを明かしました。さらに、現在黎明期のメタバースで起こっている、実際の「分人経済」「超空間経済」の可能性を示すさまざまな事例を紹介しました。また、それらによってメタバースで生まれる新しい職業についても考察しました。
1492年、コロンブスがアメリカ大陸を発見すると、大航海時代が始まり世界の経済規模は爆発的に増大しました。メタバースは人類の経済圏が大きく広がる新たな「新大陸」と言えるでしょう。
人々の多様な経済参加を促し、経済の舞台である空間自体を自由にデザインできるメタバースは、これから私たちの経済を大きく変えていくでしょう。より多くの人が幸せになれる世界をきっと作れるはずです。本章で紹介した、物理現実の常識では「魔法」としか思えないようなメタバースの可能性を考えれば、今後メタバースで本格的な経済が回りはじめると、それがいずれ全人類のクリエイター化を加速し、経済を空間の限界から解放する革命になることは間違いないと私は考えています。
メタバースでは、私たちは一つ上の次元にシフトし、社会の豊かさを母なる地球の限界から解き放つことができるのです。
COLUMN
ところで、現在巷ではメタバースのビジネス活用というと、メタバース内の会議などのオフィスワークが挙げられることが多いですが、私はそういった方面での利用拡大にはとても時間がかかると考えています(もちろん長期的には普及すると思いますが)。
理由は簡単で、単に物理現実でできることをそのままメタバースに置き換えてもあまり意味がないからです。例えば職場の人とチームビルディングをするなど、積極的に心理的距離を縮めたい局面などでは、5章で説明したようにメタバースの空間性が極めて有効ですが、単なる情報交換のための通常の会議ならビデオ通話でやったほうがはるかに楽だし効率的です。
ちなみに、私を含めて長時間メタバースの中で生活をする住人は、メタバースに入っている最中も色々な作業をするので「バーチャルデスクトップ」というソフトを使うのが一般的です。VRゴーグルを通して見る自分の視界に、パソコンのデスクトップやウインドウを好きな場所に好きなだけ表示することができます。言ってみれば、自分にしか見えない画面が物凄く大きいスマホを、自分の周りに好きなだけ浮かべておけるようなイメージです。物理現実のスマホは画面がとても小さいし、持ってると手が疲れるし、歩いているときなどいちいちしまわないといけないのでとても不便だと思っています。
メタバース内で音楽ライブをしているときの私は、監督としてスタッフにチャットで指示を出したり、司会をするために進行表を見たり、自分が歌手として歌うための音源の操作などもしないといけないので、視界がウインドウで埋め尽くされます。
