はじめての分人経済学第一に、メタバースが引き起こすミクロ経済の革命「分人経済(Dividual Economy)」について論じます。
従来のミクロ経済学では「個人(Individual)」(や世帯や法人)を経済を構成する最小単位と考え、その行動や意思決定がどのようになるかを扱ってきました。特に近年は、この「個人」こそが経済の主役になる「個人経済圏=クリエイターエコノミー」という考え方が非常に注目を集めています。動画やライブの配信などを行うYouTuberをはじめ、個人クリエイターが増加して経済規模が莫大になってきており、NeoReachとInfluencer Marketing Hubの共同調査によれば、2021年5月時点で全世界のクリエイターエコノミーの総市場規模は約1000億ドル(=約10兆円)にものぼると推定されています。SignalFire社が2021年に発表したレポートによると、自分を「クリエイターである」と認識している人は世界で5000万人にものぼり、少なくとも200万人以上がフルタイム以上の収入を得ています。こうした状況を背景に注目されているのが「クリエイターエコノミー」です。それは、企業が作ったコンテンツを個人が消費するだけの従来のモデルではなく、人々自身が個人クリエイターとしてコンテンツを生産する双方向経済モデルのことです。
ところが4章では、メタバースで「名前」「アバター」「声」の三つの軸で自分自身のアイデンティティを自由にデザインし、心の中の多様な側面「分人(Dividual)」に姿かたちを与えて、「なりたい自分」として人生を送ることができること、また、複数のアイデンティティを分人として切り替えて人生を自在にデザインできるようになることを論じました。メタバース時代のミクロ経済においては、この「分人」こそが「個人」に変わる経済の最小単位となるため、分人の目線で経済を捉える「分人経済学(Dividual Economics)」が最も重要な考え方になってきます。
分人が作り出す新たな経済「分人経済」とは、先ほどのクリエイターエコノミーのさらに先にあるもので、「究極形」であると言ってもいいでしょう。従来のクリエイターエコノミーは、活躍できる個人がどうしても一部のクリエイターに限られるという問題がありました。しかしメタバースでは、私「バーチャル美少女ねむ」自身がそうであるように、自分の中のクリエイターとしての側面を自由にデザインして取り出し、姿かたちを与えて活動させることができます。私は昼間は物理現実で、ごく普通の人間として目立たないように働いていますが、職場の方は誰も私の正体を知りません。知られていたら美少女アイドルなんてとてもできませんよね。このように、どんな事情があっても、自由に自分の才能や可能性を見つけて多面的に経済参加することができるのです。日本においては、私のような「VTuber(バーチャルYouTuber)」は分人経済の最もわかりやすい例であると言えます。
また、メタバースでは従来企業が莫大なコストをかけないと作れなかったようなクリエイティブも、個人で簡単に実現できます。
メタバースがもたらす「分人経済」は人々のクリエイター化を加速します。5000万人どころか、全人類80億人がクリエイターになる世界を作れるのです。個人の経済参加の機会が多種多様になり、経済は大きく活性化されるでしょう。
それでは、現在黎明期のメタバースで起こっている実際の「分人経済」の可能性を見ていきましょう。