
2021年時点の全世界の電子商取引市場が500兆円規模なので、もし本当にそれに匹敵する程の市場が生まれるのであれば、まさに現在「インターネットで生きていく」ことが当たり前になっているように、10年以内に「メタバースで生きていく」ことが当たり前になりそうです。
しかし、フロンティア時代の現在のメタバースは、まだ貨幣経済が成立していない旧石器時代の荒野のようなものです。2章で詳しく解説したとおり、現時点のソーシャルVRは機能面でも経済的な部分はまだ進化の途上であり、規約的にも個人の商用利用が全面的に許可されているとは限りません。個人がメタバース内でコンテンツ・サービス・お金を完全に自由に交換して、メタバース内の経済活動で「生きていく」ためのしくみが整っているとはまだ言えません。
また、経済活動には最低限の人口のボリュームが不可欠です。現時点ではまだソーシャルVRユーザーの人口もせいぜい全世界で十数万人規模で、メタバース内で本格的な個人間経済が回るための十分な母数が存在するとは言えません。この荒野を開拓するのは、新大陸・惑星の開拓に等しい一大事業です。欠けているピースが山積みです。
したがって、私はエマージェン・リサーチ社のレポートが示す程の短期間でメタバース経済が急拡大することにはやや懐疑的な立場です。おそらくザッカーバーグもこの数字に自信があるというよりは、株主が納得する数字をひねり出してきたというのが本当のところではないでしょうか。現在私たちになくてはならないインフラであるインターネットも、1992年に日本初のプロバイダがサービスを開始してから、スマートフォンやFacebookが登場して国内の普及率が80%を超えた2013年までに、実に21年もの歳月を要しています。
しかし、長期的な目線で見た場合、メタバースが既存の経済をひっくり返す革命であることを私は確信しています。相応の時間を要するとは思われるものの、経済的なインパクトは現在想定されている規模感では決して済まないでしょう。さて、なぜメタバースは私たちの経済にとって革命となるのでしょうか。