これまで見てきたように、「名前」や「アバター」と比べるとまだ難易度が高いものの、メタバースでは、さまざまな加工音声を用いた「声コスプレ」によって、物理現実の自分の肉声とは違う、自由な声で喋ることが徐々にできるようになりつつあります。

現在のメタバースでは「中の人」の物理性別を問わず、特に美少女のような可愛らしい声「kawaiiボイス」を出したいという欲求が非常に大きく、それが技術開発への大きなモチベーションになっています。機械を用いて声を加工する「ボイチェン」もボイストレーニングにより理想の声を出す「両声類」も、現時点では難易度が高いものの、メタバース住人の圧倒的な欲求を背景にさまざまなイベントが行われており、豊かな技術を楽しむこと自体がメタバースの重要な文化の一つになっています。誰でも簡単に理想の声が出せる技術も各所で研究が進んでいます。

メタバースでは「声」という音響世界のアイデンティティをデザインすることによって、「なりたい自分」で「喋って」自由に生きていくことができるようになりつつあります。それこそがアイデンティティを自在にデザインして「なりたい自分」になれるメタバース世界を完成させるための最後の鍵なのです。