日本における「バ美肉」文化地域別で見ると、特に日本において女性アバターが78%と突出して優位でした。これは日本でメタバースに先駆けて登場した「バ美肉」カルチャーの影響によるものが大きいと思われます。
2017年末、「キズナアイ」ちゃんをはじめとした「VTuber」が突如大きなブームになりました。「VTuber(語源はバーチャルYouTuberの略)」とは、リアルタイムでアバターを動かして動画配信やライブ配信を行う「アバターを使った配信者」のことです。VRを用いている場合もありますが、カメラで物理肉体の表情や身体の動きを検出し、パソコンやスマートフォンの画に写ったアバターの姿を動かして配信する方法が主流です。
このVTuberの一形態として注目されたのが「バーチャル美少女受肉」略して「バ美肉(ばびにく)」というカルチャーでした。これは主に、一般個人が美少女アバターとボイスチェンジャーなどを使って美少女キャラクターとして配信活動を行うことです。「中の人」は物理男性である場合も物理女性である場合もあります(中の人が男性であることを遠回しに示す際の隠語としても使われることもあります)。いままでアニメや漫画の世界で「見て楽しむ」ことしかできなかった美少女に「なれる」という新しい文化として定着しました。
インターネット上では古くから「男性が女性のフリをして活動をする」という行為はありましたが、相手を騙しているというニュアンスが強く「ネカマ」と呼ばれネガティブに扱われがちでした。海外では現在でもそういう風当たりが非常に強く、日本ほど気軽にできるものではありません。「バ美肉」は「中の人」ではなく、あくまで生まれた「美少女」にスポットを当てた、ポジティブな言葉として捉えられたことが非常に画期的だったのです。
この文化があったことが、現在日本のメタバース界において物理性別にこだわらないアバターの利用がいち早く広まり、次節で解説するボイスチェンジャーなどにも抵抗がなく、豊かな表現が受け入れられることにつながっていると私は考えています。今では配信に限らず、ソーシャルVRなどメタバースで美少女として活動することも「バ美肉」と呼ばれるようになっています。
ただし、中の人の性別を示す含みと語感の強烈さから「バ美肉」と呼ばれるのに抵抗がある人も中にはいます。誰もが使いやすい優しい響きの言葉として、私は「ココロコスプレ」という言葉を提案しています。