
メタバースにおける「距離感」については5章で詳しく解説しますが、今回女性アバターが約8割と極端に優位であったVRChat・バーチャルキャスト・日本については、コミュニケーション時の距離感も「物理現実よりも近くなる」が7割以上と極端に近くなっており、傾向が完全に一致しています。つまりデータから見ても、女性アバターとユーザー同士の距離感の近さには関係がありそうです。
心理学の世界では、物理現実において人と人とがコミュニケーションを取る際の相手との心地よい距離感のことを「パーソナルスペース」と呼びます。パーソナルスペースには文化や状況により大きな違いがあるものの、一般的に成人の場合、女性は男性よりかなり近い傾向があります。また、組み合わせとしても「女性同士」の場合に、異性との場合や男性同士の場合よりもかなり近くなる傾向があると言われています。実際に物理現実で、女性同士で手をつないだり腕を組んだりしているのを見かけることは多いと思いますが、男性同士だと社会通念上なかなか難しいのではないでしょうか。
利用している実感としても、日本のVRChatやバーチャルキャストでは、現実では考えられないような近い距離感で女性アバターどうしいちゃいちゃするようなコミュニケーションが好まれる印象です。逆に、中の人の性別に関わらず、相手の方が男性型アバターを使っていると、どうしてもいつもより余計に距離をとってしまうということはよく聞きます。
やはり、相手との距離が縮まりやすいことが、女性アバターが選ばれる大きな理由の一つであると言えそうです。
このように、アバターによって自由な性別の姿を選べるメタバースにおいて、物理男性が女性アバターをつかっている理由としては、「可愛くなりたい」「感情表現をしたい」「相手と距離を縮めたい」の大きく分けて三つの理由があります。「心身の性別の不一致」を挙げているユーザーももちろんいますが、全体の割合としてはこうした「自己表現」や「コミュニケーション」上の理由から女性アバターを利用しているケースが多いと言えるでしょう。