VRMがもたらした「なりたい自分になれる権利」現在VRMに対応したソーシャルVRサービスも増えており、徐々にメタバースにおける「なりたい自分になれる権利」が確立しつつあります。大きく三つの観点に分けて説明しましょう。
VRMという「共通規格」がうまれたことで、前節で説明した「VRoid Studio」など、モデリングの専門知識がなくても効率的にVRMアバターを制作することのできる「アバター制作ツール」が複数登場しました。これにより自分で簡単にアバターを作ることができるようになりました。
さらに、自分でアバターを作らなくても望み通りのハイクオリティなアバターを手にする可能性も開けました。制作環境が整ったことでアバター制作を専門とするクリエイターが次々と登場、アバターによる経済圏が生まれたのです。現在では、キャラクターデザインが既に決まっていて比較的単純なモデルであれば、フリーのモデラーさんがアバター制作を数万円程度から受け付けている場合もあります。物理現実の美容やファッションにかける金額やアバターのクオリティを考えれば、この価格は格安でしょう。専門技術が一切なくても、思い通りの「自分の姿」を手に入れることができるのです。
VRMという「アバター専用」のファイル形式が生まれたことで、対応サービスでは、もはやユーザーがいちいちアバターとして使うための煩雑な設定作業をする必要は一切ありません。VRMファイルをWebサイトにドラッグアンドドロップでアップロードするだけで、すぐに自分のアバターとして使えるようになりました。必要な設定は全てVRMに内蔵されており、ユーザーは意識する必要がないのです。
さらには、いちいち各サービスにVRMをアップロードするまでもなく、クラウド上のVRMを複数のサービスやアプリで直接利用できるサービスも複数登場しています。このうちの一つが2章の「バーチャルキャスト」で紹介した「THE SEED ONLINE」です。THE SEED ONLINEでは、アップロードしたアバターなどの3Dコンテンツをクリエイターがオンライン販売して収益化する機能なども実装されており、多用なコンテンツが集まっています。
また、THE SEED ONLINEは、クラウド上のVRMを各サービスやアプリが利用しようとした際に、クラウド側でそれぞれの利用に最適化したかたちにVRMを変換する「VRM Modifier(VRMモディファイア)」という先進的な機能を開発しています。例えば、モバイル端末でアバターを利用する際にはポリゴン数を減らして軽量にしたVRMを提供する、などが可能になります。ユーザーがたった一つのVRMファイルをアップロードするだけで、いつでもどこでも最適なかたちでアバターが使えるようになるのです。
VRMに対応したサービスが増えることにより、特定のプラットフォームに縛られず、ユーザーがどこでも自由に自分のアバターを使うことができるようになりつつあります。
現在ソーシャルVRでは、国内では「cluster」「バーチャルキャスト」などがVRM対応しています。「VRChat」は未対応ですが、有志が制作したUnity用のツールを利用すると比較的少ない手間でVRMを持ち込めるようになっています。現時点で「Neos VR」は未対応ですが、将来的なVRM対応がロードマップ上予定されています。
ソーシャルVR以外でも、VRM対応したVRゲームでゲームの世界に自分自身の姿で入ってプレイするようすを配信したり、VRM対応したスマートフォンアプリで現実の風景とアバターを合成してバーチャルキャラクターが現実に訪れたかのようなAR画像映像を制作したり、様々な活用が広がっています。