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MetaのVRゴーグル戦略

Meta Quest2はCPU・メモリー・ストレージ・ディスプレイなど、基本構成はスマートフォンとよく似ており、部品の性能は10万円程度の発売当時のハイエンドスマートフォンと概ね同等のものです。さらに、技術の詳細は後述しますが、6DoFやインサイドアウトトラッキングを実現する多数のセンサー、レンズや一対のコントローラーなど、スマートフォンには存在しない様々な部品が必要です。これはどう考えても原価割れの価格設定であり、売れば売るほど赤字が広がっているはずです(相当のボリュームが出た今は単価が下がりダメージは少なくなっているかもしれません)。

もはや競合他社は低価格帯のボリュームゾーンでは全く勝負になりません。私が公式アンバサダーを務めるHTC社の「HTC VIVE」は、2021年にライトハウストラッキング・5K解像度の高精細・120度の高視野角を持つPCVR「VIVE Pro2」をフルセット約18万円で発売、ハイエンド(高付加価値)路線にシフトしました。

例えばゲームハード業界は後でソフト販売で利益が見込めるため、赤字覚悟でハードのシェアをとる戦略も見られますが、現時点のVRコンテンツはゲームのように成熟した巨大産業ではなく大きな利益は見込むべくもありません。おまけに、FacebookはVRゴーグルという新しい市場を開拓するため、巨額のマーケティングキャンペーンを行っています。

なぜMetaはそれほどまでにVRゴーグルの普及に投資するのでしょうか。

現在世界的な影響力をもつ超巨大IT企業群「ビッグ・テック」(GAFA)のビジネス戦略を改めて振り返ると、Googleの「Android」・Appleの「iOS」・Amazonの「Alexa」なと、Meta以外の企業はハードウェアとOSを抑えていることがわかります。これらはもはやサービスという次元を超えて現代の生活になくてはならないインフラとして、これら企業の存在を盤石なものにしています。一方MetaはハードウェアやOSを握っておらず、メインの事業は「Facebook」「Messenger」「Instagram」といったSNSサービスであり、常にユーザー離れと世間の厳しい批判に悩まされる立場です。

そのMetaが、現状彼らがもっている「ソーシャル」という強みを最大限に活かすことができる、次世代のインターネットの可能性こそが1章で説明した「メタバース」なのです。なんとしてでもメタバース時代のハードウェアとOSを手中に収め、次のインターネットの覇権を盤石なものにしたいという強い思惑が見て取れます。失敗すれば「次」はありません。その覚悟の証が新社名である「Meta」であり、2014年当時まだVRゴーグルのプロトタイプを作っていたばかりの「Oculus」を買収し、今日まで巨額を注ぎ込んで世界一のVRゴーグル事業として成長させた狙いなのです。