このように、ユーザーが増えたと言っても、プレイ時間や年齢、性別の偏りを見る限りでは、現在のメタバースの住民はかなりアーリーアダプターに偏っているということは言えそうです。ただし、それだけに如実に未来のメタバースの在り方を表してる可能性があるとも言えるでしょう。

調査の結果、このような「メタバースに住んでいる」レベルで利用している「メタバース原住民」たちを含め、ソーシャルVRユーザーは、物理現実とは異なるさまざまな興味深い文化や生活実態を示すことがわかってきました。私のようなVTuberなど情報を積極的に外に発信しているような人ばかりでは決してなく、みなさん物理現実とは違う世界で比較的ひっそりと暮らしています。秘境の奥地で暮らす人々のようなイメージでしょうか。その知られざる生態については、4章以降で詳しく解説していきます。

COLUMN

「VR睡眠」で毎日が修学旅行

一人暮らしの方など、夜寝る時や朝目が覚めた時に一人で寂しい。そんなふうに思ったことはありませんか? ソーシャルVRでは、VRゴーグルを被ったままみんなで仮想空間の部屋に集まって眠る「VR睡眠」という文化があります。信じられないと思いますが、メタバース原住民の間では割とメジャーな行為の一つです。修学旅行のように、寝ている間も他の人と一緒にいることで多幸感を得ることができます。特に、寝る前にみんなで話ができること、睡眠中に他の人の可愛い寝息が聞こえてくること、そして朝起きたときに他の人の可愛い寝顔が見れることが嬉しいとよく聞きます。また、VRならではのメリットとして、見ず知らずの相手とでも比較的安全に一緒に睡眠をとることができます。

特にVRChatユーザーには日常的にVR睡眠をしている人が一定数存在します。今回VRChatユーザーの「一回あたりプレイ時間」で「6時間以上」の人が11%もいるのはVR睡眠が一つの原因かもしれません。なんと中には毎日VR睡眠をするという猛者もいます。そういう人は、夜「みんな、ただいま」と仕事を終えて家に帰ってきてから、朝「みんな、行ってきます」と仕事のために家を出るまでの間は、トイレに行くとき以外はずっと仮想空間に入っているそうです。

難点として、現在のVRゴーグルは当然ながらこんな利用方法は完全に想定外のため被っていると寝苦しくなりやすく、慣れていないとかなり熟睡しづらいことが挙げられます。ゴーグルの後頭部に突起物があって体勢が安定しづらいため、大きめのビーズクッションを枕代わりにしてゴーグルごと頭を埋めるなどの工夫が必要です。VRChatではアバターに強制的に寝転んだ体勢を取らせるしくみが備わった「VR睡眠専用」のワールドも多数存在します。3章で解説する「フルトラ」と呼ばれる技術を使って、寝ている間もアバターの身体に自分の寝相を完全に反映している人もいます。

私は靴下をはいているだけで寝れなくなってしまう繊細な人間なので、VRゴーグルを被ったまま寝るなどとても考えられないです。一度だけライブ配信で実験的に試してみたことがありますが、確かに修学旅行的な楽しさがあり夜中まで盛り上がったものの、かなり寝苦しくて睡眠が浅くなってしまい、いまいち疲れがとれませんでした。