配信を軸にした新たなコミュニケーションのしくみバーチャルキャストには、配信を行ったり盛り上がったりするためのしくみが全て揃っています。
バーチャルキャストの配信のための仮想空間は「スタジオ」と呼ばれています。各種カメラに加えて、パソコンの画面を仮想空間内で表示するディスプレイや、YouTubeやニコニコ動画の動画を流して実況したりBGMとして使ったりするための動画プレイヤー、小道具のホワイトボードや漫才のためのハリセンなど、動画配信に必要なありとあらゆるものが全て標準装備されています。まるでテレビ局の撮影スタジオのようで、これが無料で使えるのは本当に驚きです。設定によりますが、スタジオには最大16名まで入ることができます。
配信におけるコラボレーションを促進するために、二つの非常に特徴的なしくみを実装しています。
一つは「凸(とつ)」と呼ばれる配信者同士のコラボレーションのしくみです。当然ながらスタジオには、必要なスタッフやゲストだけを入室させるための入室管理機能があるのですが、「凸」では見知らぬ他の配信者のスタジオに乱入することができます。メニューを開くと現在配信中で凸を許可している配信者の一覧が表示され、見知らぬ人の配信に自由に乱入できます。これにより、有名VTuberが突然自分の配信にやってきたりと、配信者どうしの思わぬコラボが生まれ、独自のカルチャーを生み出しています。
もう一つは、配信者と視聴者が空間の壁を超えてインタラクションができるしくみです。配信を見ている視聴者がコメントをすると、コメントが漫画の「吹き出し」などの3Dアイテムとなって、仮想世界に降ってきます。Twitterと連携して、ツイートや画像を降らせることもできます。配信者はこれらを触ったり掴んだりすることができ、物理世界から仮想世界にリアルタイムに干渉できる摩訶不思議な体験を実現しています。また、課金アイテムである「Vギフト」も用意されており、視聴者が課金することによって「花束」や「くす玉」などのアイテムを仮想世界に出現させて配信を盛り上げることができるようになっています。Vギフトの収益は、ニコニコ生放送などと配信プラットフォーム経由で、手数料を除いて配信者に還元されるしくみになっていて、配信の収益化が可能になっています(名前が似ていますが、clusterの「Vアイテム」は仮想空間内の来場者がパフォーマーに向けて3Dのアイテムを投げつけるしくみだったので、これとは別の概念です)。
スタジオの見た目は「ロケーション」と呼ばれており、他のソーシャルVRの「ワールド」と違って基本的にあくまで見た目が変わるだけで、床の高さや壁の概念がなかったりと、配信に特化しているゆえにある程度割り切られた仕様になっています。
そのかわり、アイテム(VCI)と呼ばれるインタラクティブに触ることのできる3Dオブジェクトを自由に作って持ち込むことができる画期的なしくみを実装しています。たとえば、実際にゲームが遊べるラケットと卓球台などを、スタジオに自由に呼び出して使うことができます。
さらに、仮想空間内で完結する、優れた「経済性」を実現しています。仮想空間で利用するアイテムを管理するための「THE SEED ONLINE(ザ・シードオンライン)」と呼ばれるクラウドサービスを提供しており、ここに「アバター」「アイテム」「ロケーション」などのコンテンツを自由にアップロードしたり、他人に販売することもできます。無料で公開されているものも多く、わざわざ自分で作らなくても、たいていのものは全てここで揃ってしまいます。
コンテンツの購入はWebサイトだけでなく仮想空間内でも行うことができ、たとえばイベントで見つけたアイテムや人が使っているアイテムをすぐにその場で購入する、と言ったことも簡単にできてしまいます。ただし、現時点ではこうした「コンテンツ」の販売に特化しており、Neos VRのように「サービス」に対してお金を払うしくみはありません。
規約が整備されており、個人・法人問わずライセンス契約なしでほとんどの商用利用が可能な点も大きな長所です。
また、Neos VR同様に「アイトラ(眼球認識)」「顔トラ(表情認識)」や10点「フルトラ(全身認識)」などの高度なトラッキング機能や、アバター同士のインタラクションに対応しており、高い表現力と没入性を実現しています。また、clusterと同様にVRMで好きなアバターを簡単に持ち込めます。
最後に、なんと言ってもインターフェースが非常に洗練されています。他のソーシャルVRは、四角いメニューがただ3D空間に浮かんでいるだけのようなものが多く、操作の仕方がわかりづらかったり、お世辞にも使いやすいと言えないものがほとんどです。バーチャルキャストは、選択肢が自分を中心にリング状に表示される「リングメニュー」など、3Dの空間性を生かしたインターフェースで小気味よく直感的に操作することができます。ここからシードオンラインにアクセスしてさまざまなアイテムを仮想空間に実体化させる感覚は、アニメに出てくる召喚術師になったようで、クセになってしまう程によくできています。