また、メタバースを名乗るサービスの中には、仮想空間の「土地」をNFTで売買できるタイプのものが一部あります。2021年11月には「一週間あたりのメタバースの土地の売買総額が1億ドル(約100億円)を超えた」として大きな話題になりました。

こういったサービスには「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」や「Decentraland(ディセントラランド)」などがあります。これらは、パソコンの画面内で仮想空間のアバターを操作できるのみでVR対応などもしておらず、「⑥アクセス性」「⑦没入性」の観点から考えると、本書で定義するところの「メタバース」には当たらないと考えられます。特に「The Sandbox」については誤解した報道が非常に多いですが、2021年11月時点では期間限定のα版テストをしている段階で、まだ正式サービスインしていません。まだ入ることのできない、一人の住民もいない仮想空間の「土地」が、期待値だけで高額でやりとりされている状況はなかなか凄まじいものがあります。

そもそも、2章で説明するソーシャルVRなどでは、アクセスする空間はユーザーが思うがまま無限に実体化できますし、どこにでも誰のところにでも瞬時に移動できることが仮想空間ならでは大きなメリットになっています。つまり、物理世界と違って、メタバースには「土地」や「土地の値段」という概念が必ずしも存在するわけではありません。

中には、Metaによるメタバースのブームに便乗して、利用実態のない仮想空間の土地を「これからはメタバースの時代。早く買わないと高騰して買えなくなってしまう」という論調で売っているケースも見受けられます。全てがそうだとは決して言わないですが、売買を行う場合は、きちんと利用実態や将来性があるか見極めた上で行いましょう。なお、2章で紹介するMetaが開発中のソーシャルVR「Horizon Worlds」にも当然ながら「土地の値段」という概念は存在しません。私は仮想空間の「土地」よりも「ワールドの広告表示権」が今後メタバースで大きな価値を持つ巨大産業に発展すると予想しており、6章で解説します。

ただし、メタバースの要点の一つである「経済性」を考えると、アイテムやサービスをプラットフォームを超えて取引するための「お財布」や、アカウントに取引履歴を蓄積して私のような仮想キャラクターに信頼を生み出し経済活動に参加できるようにするしくみは極めて重要です。長い目で見た場合には、仮想通貨やブロックチェーンがそれを実現するための根幹技術として発展していく可能性は大いにあると考えています。