iconメタバースはオンラインゲームのことではない

『ファイナルファンタジーXIV』をはじめとするマルチプレイヤー参加型のオンラインゲーム(MMO)や『あつまれ どうぶつの森』では、もはやゲームと関係のないコミュニケーションを目的としてプレイするユーザーも多くいます。ユーザー間の恋愛や、アイテムの交換による経済活動も行われており、これらもメタバースであるという主張もあります。

しかし、「②自己同一性」の観点で言うと、ゲーム内のアバターはカスタマイズの自由度はあるものが多いですが、ほとんどの場合あくまでゲームタイトル(IP)の世界観の中での「キャラクター」としての自由度であり、その姿のアイデンティティを維持したまま他のゲームの世界に行くことはできません。また、基本的にアバターの著作権はゲームの運営会社に帰属し、プレイヤー自身のものにはなりません。例えばソーシャルVRでは、私は自由にデザインしたアバターを自分の分身として持ち込み、複数のプラットフォームで使いまわしたり、そこで撮影した自分の写真をブロマイドや写真集として売ったりすることを当たり前のようにやっていますが、そういったことは現在のオンラインゲームだと難しいです。先述の『バーチャルリアリティ学』でも、オンラインゲームとメタバースは別のものとして説明されています。

「④創造性」の観点でも、基本的にゲーム内のコンテンツは運営が提供するもので、ユーザーが生成するコンテンツ(UGC)も中にはありますが限定的です。

さらに「⑤経済性」から見ても、現在のプロゲーマーは基本的に動画配信や大会の賞金など、あくまで物理現実世界で収入を得ています。ユーザー同士の経済という意味でいうと、ゲーム内のアイテムがオークションサイトなどで売買されることが多いのは事実ですが、これはゲームの利用規約に違反した犯罪行為であることがほとんどであり、発展性のある経済であるとは言えません。

「⑦没入性」についても、VRに対応しているタイトルはまだごく一部です。対応していてもユーザー同士のコミュニケーションではなく、一部コンテンツが体験できるのみ、と言ったものが多いです。

ただし、大規模マルチプレイヤー参加型のシューティングゲーム『フォートナイト(Fortnite)』を提供するアメリカ・Epic Games社CEOティム・スウィーニーなど、今後オンラインゲームがメタバースとして進化していくと主張している人もいます。実際に『フォートナイト』では人気アーティストのライブイベントをゲーム内で実施したり、アパレルブランドNIKEのアイテムを購入して自分のアバターに着せることができたり、従来のゲームの枠を超えた用途が徐々に広がっているのは確かです。

子供向けゲームプラットフォーム『Roblox(ロブロックス)』を提供するアメリカ・Roblox社CEOデイビッド・バシュッキもそのように主張しています。『Roblox』はクリエイターがゲームやアバターなどのコンテンツを販売できる「経済性」がすでに非常に大きな市場になっていますし、VR対応ゲームの開発環境の提供も進めています。