日本バーチャルリアリティ学会が2011年に刊行したVR技術の教科書『バーチャルリアリティ学』では、当時注目されていたセカンドライフを前提として、メタバースを以下の四要件を兼ね備えたオンラインの仮想空間として定義しています。現在語られるメタバースと比べると足りない部分もありますが、非常に明快に整理されており理解しやすいので、まずはこれを見ていきたいと思います(それぞれ最後の括弧は私が独自に付け加えた注釈)。

  1. ① 三次元のシミュレーション空間(環境)を持つ(「空間性」)
  2. ② 自己投射性のためのオブジェクト(アバタ)が存在する(「自己同一性」)
  3. ③ 複数のアバタが、同一の三次元空間を共有することができる(「同時接続性」)
  4. ④ 空間内に、オブジェクト(アイテム)を創造することができる(「創造性」)

さらに同書では、セカンドライフで行われ始めた経済活動(「経済性」)に注目。また、当時まだ一般向けに発売されていなかったVRゴーグルが将来的に普及し、現実と同じように仮想空間を体験(「没入性」)できる技術進歩に大きく期待していました。後述しますが、この「経済性」と「没入性」は現在ではメタバースの必須要件として語られることが多いです。

しかしこの後、当時のインターネット環境の制約やパソコンのスペックの低さ、またFacebookなどSNSが普及したことによりセカンドライフのブームは一時失速、ザッカバーグのMeta宣言まで「メタバース」は一般的には長らく忘れられた言葉となっていました(なお、セカンドライフはその後も着々と進化を続けており、現在では当時と同等規模までアクセス数は回復しています)。