ホモ・メタバース──人類の進化のてがかりメタバースとは「私たちが生きていく、デジタル世界の新しい宇宙」です。これまで人類は、生まれ落ちたこの宇宙で生き延びるために、四百万年かけてひたすら自分自身を変化(進化)させ続けて来ました。メタバースがもたらす革命は「私たちが生きる空間そのものを恣意的にデザインできる」ということです。それは、人類と宇宙との主従関係が逆転するということです。私たち人類が、宇宙そのものを、自分たちが暮らしやすいように再設計するということです。それは、言わば神を目指す試みです。
2017年、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは、同名の著書の中で「ホモ・デウス(Homo Deus)」という概念を提唱しました。人類は生物工学・サイボーグ工学・AI技術によりいずれ死を克服し、自らを「デウス(神)」、つまり神性を備えた新たな人類種「ホモ・デウス」へと進化させると。その時、これまでの死と肉体に縛られた従来の私たちの価値観は意味を消失し、神としての新しい常識・倫理が誕生すると。
現在起こっているメタバースによる革命は、この人類の進化の「前日譚」であると私は見ています。もちろんメタバースで私たちが不老不死になることはないし、この物理現実世界で病や死を根絶するのは、まだ遥か先の未来でしょう。しかし、限定的とはいえ、私たちが神の力を手に入れたデジタルな仮想世界「メタバース」でなら既にできるのです。私たちの肉体を、自己認識を、社会を、宇宙を再設計することが。それは、物理現実世界で「神」になる前段階です。私たちは果たしてそれに相応しい存在なのか、自らを審判するためのシミュレーションが始まったと言ってもいいかもしれません。
ハラリに習って、私はその世界にいち早く適応し、全く新たな生活様式や文化を示しつつある「メタバース原住民」のことを新たな人類種「ホモ・メタバース(Homo Metaverse)」と呼びたいと思います。その変異を観察することは、人類の行く先のてがかりとなるのではないでしょうか。
今はまだ何もない荒野で、それでも大切な人たちの息遣いをはっきりと感じる、ありのままのメタバースの姿。メタバースとは果たして何なのか。そこで我々は何者になるのか。我々はどこへ行くのか。一人の原住民として、私が本書で伝えたいことはそれだけです。
始まったばかりのメタバースは今まさに進化の最中であり、その実態は今この瞬間も変化し続けています。私が伝えられることは、変わり続けるその世界のほんの入口に過ぎませんが、来る新時代の一端を照らし出し、より良い未来を考えるきっかけになれば幸いです。
バーチャル美少女ねむ