「こいつはエクレア。俺の娘で、まぁ、見てわかると思うが冒険者だ」

「よろしくね」

 サンダースから改めて娘の紹介を受ける。僕に挨拶してくれたエクレアは、背中に鉄槌を担いだ女の子だ。

 結構小柄なんだけど、持っている武器はかなり重そうだね。

 そしてなんというか、胸部も中々重そうな……うん。つまり大きい。

「──お前どこ見ている?」

「い、いえ別に!」

「スピィ~?」

 サンダースに射抜くように睨まれ詰問された。す、鋭い。

 慌ててごまかしちゃったけどスイムが肩の上で、なになに~? と聞くように鳴いていた。

 気持ちを落ち着かせるためにスイムを撫でる。

「スピィ♪」

 スイムもご機嫌だ。僕も平常心を取り戻す。

「……フンッ。トール家の血筋か、うちは雷の紋章持ちが多くてな。こいつも例にもれず雷持ちだが俺と同じで複合属性なのさ」

「へぇ。凄いんだね」

 改めてサンダースがエクレアについて教えてくれた。複合属性持ちはただでさえ珍しいのに、親子揃ってなんてね。

「ふふん。私は雷と槌のハイブリッド属性なのよ!」

 エクレアが得意顔になる。重そうな鉄槌を所持しているのも紋章の影響なんだね。

「そういうわけだ。娘もこれで気が荒い方だからな。下手なことしたら潰されるぞ」

 サンダースが僕に警告するように言ってきた。それは怖い──。

「もうパパってば。大丈夫だよ私は怖くないからね♪」

「はは──」

 微笑んで、そうアピールしてくるエクレア。鉄槌を振り回す姿が想像できないぐらい良い笑顔だ。

「とにかく、お前の力が本物なのはわかった。水の威力もな」

 サンダースがそう伝えてきた。どうやら試合のおかげで魔法について理解を得られたらしい。

「良かった~。なら水が重いのも──」

「待て。お前の魔法は理解したが、今後それはあまり他言するな」

 やっと水の真実を知ってもらえるかと思えば、サンダースから口止めされてしまった。

「それはどうして?」

「──ま、一旦俺の部屋に戻るか」

「なら私もいい?」

 サンダースが部屋に来るよう促してきた。エクレアも同席したいって目をキラキラさせている。

「いや、なんでお前が?」

 怪訝そうにサンダースがエクレアに聞いた。確かにエクレアは飛び入りで話に参加してきたようなものだもんね。

「私、この子に興味湧いちゃった。ねぇ、君パパとの話が終わったら私とデートしない?」

「は、はい?」

「スピィ?」

 僕が、どうして一緒に来たがるのかな、なんて思っていると、この子なんだかとんでもないことを言い出したよ!

「なるほど──どうやらお前とは、別の意味でもしっかり話し合わないといけないみたいだな」

 サンダースが拳を鳴らし空気が異様に重くなった。凄いプレッシャーを感じる。

 僕からは何も言ってないのに……。

「もう! パパすぐ力に訴えるんだから。そういうところ駄目だよ。それに、私だってもう子どもじゃないんだからね!」

 ゴゴゴッと、とんでもない威圧を撒き散らすサンダースをエクレアが叱咤した。この人にここまで言えるあたり流石娘だとは思うけど、こっちに飛び火しそうで怖い……。

「──俺からすればお前はまだ子どもだ。大体、お前こいつのことなんて何も知らないだろうが!」

 サンダースが語気を強めて言った。確かに、そう言われると僕も、初対面でなんであんな誘いを受けたのかとても謎だ。

 本当だとしたらとても光栄ではあるんだけどね、って、うわ! またサンダースに睨まれた! 心の中読まれているの!?

「あら、私だって冒険者の端くれよ。パパとの戦いを見れば、自分にとって必要な相手かそうでないかがわかるわ」

 サンダースの圧が高まる中、なんか凄いこと言われている気がする。必要に思われるのは嬉しいことなんだろうけどね。

 エクレアは可愛いし、近くにいるとなんか凄くいい香りが──。

「それに、この子もなんだか可愛いし!」

「スピィ~♪」

 すると、エクレアが肩に乗っているスイムを撫でた。スイムも喜んでるね。

「この子、名前あるの?」

 エクレアが僕にスイムについて尋ねた。

「スイムっていうんだ」

 僕にとってかけがえのない存在となっているスイムに、興味を持ってくれるのは喜ばしいことだよ。

「へぇ~。スイムちゃんよろしくね!」

「スピィ~♪」

 エクレアに挨拶されて、スイムが嬉しそうにプルプル震えている。最初の目つきでちょっとキツそうなイメージもあったけど、話してみると親しみやすい子だね。

「とにかく、いいでしょパパ? 今後のために大事なことよ!」

「駄目だ駄目だ! デートなんて許さん!」

 エクレアが改めてサンダースに許可を取ろうとする。

 だけど、僕とのデートには大反対といった様子だ。肝心の僕は何も言えず、オロオロしているよ。

「いいじゃない、別に。大体、デートといっても一緒にダンジョンに潜ろうって話だし」

「どこだろうとデートなんて、は? ダンジョン?」

「ダンジョンだよ?」

 エクレアの返しにサンダースが目を丸くさせた。それにしても、デートと言うから僕も驚いたけどダンジョン……そうか、ダンジョンの話だったんだ。でも、それって──。

「お前、それデートじゃなくてただのダンジョン探索だろうが!」

「そうとも言うわね」

 サンダースが僕の思ったことを代弁してくれた。エクレアはあっけらかんと返事していたけど。

「はぁ。もう面倒だ、行きたきゃ好きに行ってこい」

 デートの真実を知って気が抜けたのか、結局サンダースが折れた形だね。

「やったぁ! だからパパだ~い好き♪」

「ば、馬鹿野郎。とにかく行くぞ」

 許可を貰ったエクレアが喜んでサンダースの腕に飛びついた。

 すると、ちょっと顔を赤くさせてサンダースが歩いていく。やっぱり、父親は娘には弱いんだね。

 親か──。正直、僕にはあまりいい思い出がないから、仲がいいのはちょっと羨ましいかな──。

「どうしたの? 早く行こっ?」

「ふぁッ! う、うん!」

 エクレアが僕の顔をのぞき込んできて驚いたよ。凄くドキッとした。改めて見ると、凄い美人なんだよねエクレアって。

 とにかく、僕は改めてサンダースの部屋に向かった。

「何度も往復させて悪いな」

「いえ。問題ないです」

 部屋に通されて、サンダースが謝ってくれた。僕としては、ギルドマスターに会えただけでもいい経験だし問題ないけどね。

「そうか。ま、お前の実力はわかったからな。そういえば今はランクいくつだった?」

 マスターが僕のランクを確認してきた。エクレアが見ている中、まだ低ランクなのはちょっと恥ずかしいけど素直に答える。

「Eランクです」

「じゃあ今日からDな」

「え!」