「なんの遊びだ!」
スライムというやつは核を攻撃すれば倒せる。
誰でも知っている常識のようなものだけどスライムを倒して得られるものなどない。
仮にスライムが飛んできて顔に当たったとしてもダメージもなく、軽く手で払えばスライムの直撃も避けられる。
男もフィオスを簡単に払い退けた。
フィオスは飛んでいって床に激突するがそれぐらいではスライムもダメージは受けない。
「はああああっ!」
そして投げ飛ばしたフィオスに隠れて男に接近したジケは思い切り火かき棒を振り下ろした。
「いぎっ……!」
苦痛に歪んだのはジケの顔の方であった。
男の肩に火かき棒は直撃したが、火かき棒は曲がってしまった。
とても硬くて殴りつけたジケの手の方が返ってきた衝撃で痛んでしまったのだ。
「何かしたか?」
腕にまで広がる痺れと痛みでジケは反応が遅れた。
乱雑に顔を殴りつけられてジケはゴロゴロと転がっていく。
「う……」
「ほら、さっさと終わりにしてやる」
まずいかもしれない。男も学ばないはずなく大きな魔法では当たらないと考えた。
子供相手なら大きな威力も必要ない。
質より量。人の頭大のダークボール十数個がジケに襲いかかる。
「吐け、いや、死ね、いや、吐け」
今一番大事なのは命。飛んでくるダークボールを避ける、避ける、避ける。
ミシッ。
脆くなった床板が一枚ジケの足の下で割れる。
そのまま強く踏んで横に移動するはずだったが、床板が割れて力が入らず回避がワンテンポ遅れる。
ギリギリ予定通りダークボールを回避することができたが次はかわせない。
火かき棒を横振りにダークボールを切ろうとするも咄嗟すぎて魔法を切ることに失敗した。
しかし失敗しても構わない。
パッと手を離れて火かき棒は飛んでいってしまうが、ジケは火かき棒とダークボールがぶつかる反動に逆らわず利用して上手く回避した。
「グフッ!」
しかし幸運は長くは続かない。
放たれた魔法は続いていて、かわした先にも飛んできていた。腹部一発、それで動きが止まり顔にもう一発。
かわすことも防御することもできず、魔法をモロに喰らったジケは吹き飛ばされて後ろの壁に叩きつけられた。
叩きつけられた強い衝撃に肺から空気が勝手に出て行く。
痛みが強すぎて攻撃を喰らったところだけでなく全身が痛むように感じる。
歯を食いしばって気を失うことだけは耐えたが、男が近づいてくるのがかすんだ視界に見える。
喉を上がってくるものがあって咳き込むと口から血を吐いてしまう。
「手間かけさせやがって……女の居場所さっさと吐いてもらおう……か!?」
動こうとしてもジケの体は動かない。
ちょこまかと手間をかけさせたジケがようやく大人しくなり、ニヤリと笑った男がどうやってリンデランの居場所を吐かせようか思案しながら歩いていると突然視界が斜めになる。
男を一瞬の浮遊感が襲う。
一階の床に落ちてようやく自分が立っていた二階の床がなくなったのだと男は理解した。
一階の床も腐りかけで落ちて割れたので多少の衝撃が吸収されて痛み以上の体の損傷はない。
見上げると分かる。
床が腐って抜けたのではない。
明らかに何かに切り落とされている。
「何者……!」
「遅い」
何かが床を切った。
その事実に気づいた時にはもう男の首は刎ね飛ばされていた。