
「それで? アレはどうなったの?」
「はい、ギルドからの問い合わせには奥様の指示通りの返答をしておきました。また、派遣予定だった使用人たちについても派遣を取りやめ、その経緯がわからないように細工済みです」
「そう、ならいいわ」
かつてフェリシアが暮らしていた屋敷、その一室で男女が不穏な会話を交わしていた。
女の方は新たに屋敷の女主人となったオリヴィア・ラビウス。
この国の王女として生まれ、何不自由ない環境で
男の方はラビウス家の使用人の一人で、新たに嫁いできたオリヴィアの専属となったオーウェンという男だ。
「それにしても、たかが平民の娘に屋敷を与えようだなんてラビウス侯爵も何を考えているのかしら。偶然、私があちらの屋敷で問い合わせに対応できたから良かったものの、そんな無駄なことをするくらいであれば、私の住むこの屋敷に手を入れる方が先でしょうに」
「まったくです。旦那さまは、たかが平民ごときを気にかけ過ぎです」
そんな勝手なことを言っている二人であるが、ラビウス侯爵の中では王家から押し付けられた不良債権のオリヴィアよりも娘のフェリシアの方がはるかに価値が高い。なので、侯爵としてはむしろオリヴィアの方を辺境に飛ばしたかったくらいだ。
しかし、オリヴィアが王族の、それも今代の国王の妹という立場であること、さらにかつての嫁ぎ先でやらかしていることから、侯爵家の目が届く領都内の屋敷に住まわせるしかなかったのである。
そもそも平民、平民と言っているが、フェリシアは貴族籍を持つれっきとした貴族令嬢である。さらに言えば、フェリシアの母親であるアリシア自身についても、ラビウス侯爵と正式に婚姻関係を結んだ側室の一人だったりする。
その娘であるフェリシアは、
「ところで、アレに回される予定だった予算ですが、本当に私が自由にしてしまっても良いのですか?」
「ええ、構わないわ。
「なるほど。そういうことであれば、ありがたく頂戴いたします」
当たり前のことではあるが、ラビウス侯爵家はフェリシアの生活費や教育費、使用人を雇う費用などの予算を用意していた。
本来であればその予算はラビウス侯爵家の本宅に勤める使用人が管理しているのであるが、貴族としてそれなりの身分を持つオーウェンが担当者に対して予算の横流しを強要したのである。
結果、予算管理の担当者にも幾ばくかの取り分を与えることで、その予算をオーウェンが自由に使えるようになっていた。
「それで? いつまで残しておくつもりなの?」
「そうですね。さすがにアレが成人する頃まで引っ張るのはデビュタントの準備などもあって難しいでしょうし、もしアレを旦那様が学園に通わせようとした場合も、やはりごまかすのは難しいでしょう。ですので、少しもったいないですが、学園に通う準備が始まる前、およそ三年後くらいまでには処分しようと考えています」
「そう。まあ、そのあたりの判断は任せるわ。ただし私の生活に影響がないように、ね」
「はっ、心得ています」
そんな不穏な会話により、フェリシアのあずかり知らぬところで自身に対する勝手な決定がなされていた。
そもそもこの二人の行動など穴だらけなのだが、オリヴィアの
もし、フェリシアが自身で領都の屋敷を訪ねたり、再度の問い合わせを行うことを選択していればすぐに露見していただろう。
けれど、フェリシアはラビウス侯爵家からの返答を疑うことなく信じ、与えられた屋敷でひっそりと生活することを選んでしまった。
その結果、オリヴィアやオーウェンの