「…………」
耳を塞いで目を閉じていた。
これが紳士として取り得る彼にとっての最大限のエチケットだった。
「……カイト。……話がある」
「ほがっ!? わ、分かった! 話は聞く! もう耳は塞がない! だから少し離れて!!」
「……カイトはやっぱり面白い。……初めて会った時も私は裸だったのに」
「そうだね! その時も俺、ちゃんと慌てたよね!?
シエラは構わずに話を始めた。
それが意外と重要な内容なので、カイトも真剣な表情を取り戻す。
「……今後の方針について考えるべき。……事態はそれほど猶予がない。……もっと言えば、割と差し迫っている」
「それは確かに。俺も考えてるよ。だけど、既に帝国の敵扱いされているアルゴートに味方してくれる都市があるとは思えないんだよ」
胸の話を全て忘れて、バシャバシャと飛沫をあげて広い浴槽で泳いでいたネイアが何の気なしに呟いた。
「別に人間にこだわる必要ないじゃない。多種族でも候補に入れたらー?」
「……なるほど! それは良い考えだ! よし、早速執務室に戻って立案を!!」
勢いよくカイトが立ち上がるのと同時に、ネイアが領主様の股間に顔をぶつける。
「ふぎゃぁぁぁぁぁぁっ!! あ、あんたぁ、なんてことすんのよぉ!?」
「ひぃやぁぁぁぁぁぁっ!! こっちのセリフだよ! ひ、酷いじゃないかぁぁぁっ!!」
カイトは半べそをかきながら浴場を飛び出した。
普通、このシチュエーションならば男女の反応が逆なのではと思わずにはいられない。
体の疲れは癒されたものの、露天風呂が少し苦手になったカイトなのだった。