一過性だった「アイス・バケツ・チャレンジ」のくだらなさ。
アレは「不幸の手紙」と変わらない。
ボランティアと言えば、愚の骨頂だったのが、ちょっと前に流行った「アイス・バケツ・チャレンジ」ってヤツだよ。
あんなの、まるで『オレたちひょうきん族』でやってた「ひょうきん懺悔室」だぜ。絵面だけ見りゃ、キリスト様に「バ~ツ!」ってやられて、水をドバッとかぶってるのと同じ。オイラは正直、「いったいこの人たちは何をやってるんだろう」と思っちまった。
難病であるALS(筋萎縮性側索硬化症)の研究を支援するための運動で、指名された人は24時間以内に頭からバケツに入った氷水をかぶるか、100㌦をアメリカのALS協会に寄付するか、あるいはその両方をやるかを選ばなきゃいけないらしい。で、やった人間はさらに3人を指名して、ドンドン「氷水かぶり」の輪が広がっていくという図式でさ。
この運動には、アメリカのブッシュ元大統領、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ、ソフトバンクの孫正義社長、サッカー選手のネイマールにレディー・ガガと、いわゆる「セレブ」たちがガンガン参加したんだよな。有名人がこぞってやってることもあって、この運動に賛同したり、褒め讃えたり、肯定的なニュースばかりだった。
だけどオイラにとっちゃ、こんなものうさん臭くて仕方がない。だからテレビ(『ニュースキャスター』)でも、「指名されても絶対やらない」「カネも払わない」って言ってやったんだよ。別に理屈をズラズラ並べて批判したわけじゃない。オイラは一言だけ、こう言ったんだよ。「何で冷たいのをかぶんなきゃいけないんだよ? オイラは熱湯に入ってカネを取る方だぞ。宗旨がまるで違う」ってね。
説明はいらないかもしれないけど、PTA激怒のオイラの名物企画、『スーパージョッキー』の「熱湯コマーシャル」を引き合いに出して茶化してやったんだよな。ああやって一言のギャグにしてぶった切ることが、ときに100の理屈を並べるより本質を突いちゃうことがあるんでね。だからなのか、その後の反響は思った以上に大きかったよ。あれ以来、記者会見やら色々なところで「アイス・バケツ・チャレンジ批判発言の真意は?」って聞いてくるんだよな。確かにテレビじゃサラッとしかこのテーマに触れられなかったんで、オイラの抱いた「違和感」の正体を詳しく話してみたい。
まァ、これがもしバラエティ番組の企画だっていうんなら別に目くじら立てることもない。オイラなら、この「氷水かぶり」をもうちょっとヒネって、さらに面白くしてやろうって思うんでさ。
たとえば、「あの有名司会者Oさんや有名作曲家Kさんが〝かぶってる頭〟に水をかぶる〝Wカブリ〟に挑戦!」なんて企画なら大笑いだぜ。そこに「アソコがかぶってる〝下半身カブリ〟のオイラも参戦!」なんてくだらないオチまでつけちゃうぜってね。
だけど今回は、お笑いじゃなく「チャリティー活動」なのにこういうキャッチーな体裁をとっていることがまずうさん臭いんだよな。オイラに言わせれば、こんなキャンペーンで氷水かぶるなんて、ヅラかぶるより恥ずかしい。
あのシステムって、一見して明るく爽やかそうに見えるだけで、中身は昔流行った「不幸の手紙」とまったく変わらない。「氷水をかぶるか、さもなくばカネを払え」なんてのは親しい人間に突きつける話じゃないだろう。付き合いの薄い人間ならなおさらだ。こんなに失礼な話はないよ。「参加は自由」ってのも、このニッポンじゃ単なる建前だね。この国じゃ、オイラみたいに「やんねェよ、バ~カ」なんて言えるヤツはごく一部でさ。ほとんどの人は周りの空気を読んで、「やっといたほうがいいのかな」って流されちまう。同調圧力にトコトン弱いニッポン人にとっちゃ、半ば強制されてるようなもんだよ。
『笑っていいとも!』のテレフォンショッキングが、「友達の輪」で出演者をつないでいくって建前をとってたのに、出演者が電話で相手に「はじめまして」って言っちゃって、「何だよ、仕込みじゃねェか」ってバレちゃったことがあったけどさ。なんだかアイス・バケツ・チャレンジにも、それと似た軽薄さを感じるんだよな。
何もオイラはチャリティー活動そのものを否定しているわけじゃない。今回の件だって、ALSって病気の存在が世間に広く知られるって効果はあったと思うしね。ただし本音を言えば、「なぜALSだけを特別扱いしなきゃならないのか」って疑問はある。ニッポンではALSは医療費の全額を公費で負担してもらえるわけだし、ひとつの病気にだけこういうことをやっていたらキリがなくなるんでね。もっと他にも優先して寄付をするべきところはあるはずだよ。
もうひとつ気になるのは「カネの使い途」について詳しく論じられてないことだ。氷水をかぶった人たちは「自分が払ったカネがどう使われるか」ってことをしっかり調べてから参加したんだろうか。
ちょっと前、「ホワイトバンドキャンペーン」ってのがあった。腕に着ける白いゴムバンドを買うと、そのカネが発展途上国の貧困層に回されるっていう話だった。だけど、その一方じゃ「売上金の使途が不明瞭だ」って批判もあったわけでね。
今回のアイス・バケツ・チャレンジで寄付を集めている団体はマトモなのかもしれないけど、少なくとも運動に参加した有名人は自分の払ったカネの何%が本来の目的のために使われるのかは知っておく義務があるし、それすらしないで参加しちゃいけないだろうな。
もしかしたら、ほとんどが宣伝費やらロビー活動に使われて、実際に救うべき人たちに渡っているのは収益の1割、2割程度ってこともありうるわけだからね。そういう実態をきちんと把握しないで、こういう活動の広告塔になるのはかえって無責任だよ。
あんまり自分では言いたかないけど、オイラはゾマホンの母国のベナンで7か所ほど学校を建てた。所ジョージと2人で自動車も4台寄付して、それからも食料援助をできる限り続けてる。ボランティアを真剣にやるってことが、どれくらい大変なのかはそれなりにわかってるつもりだよ。
それなのに、今さら「水をかぶってカネを出せ」なんて言われたって困る。「そんな単純なもんじゃねェ」って文句の一つも言いたくなる。別にブームに便乗しなくたって支援するべきものは支援するし、カネを出すときは出すよ。だからこそ、こういう一過性になってしまう可能性が高いイベントに踊らされちゃダメだって思いは常にある。
このなんとも言えない「軽い美談」に、すぐ飛びついて、そしてすぐに飽きてしまうのがニッポン人だ。東日本大震災の時だってそうだった。震災直後は、いろんな芸能人が被災地に行って、ステージで歌ったり炊き出しをやったりしていた。でも震災から3年経って、そんな話はめっきり聞かなくなっちまった。
被災地の人たちを本気で助けたいなら、今こそ行かなきゃダメなんだよな。震災から時間が経って、ドンドン報道が減ってしまっている今こそ、芸能人は被災地に行って注目を集めたり、本当に困っている人たちの日常をサポートしてあげるべきだ。でも、オイラも含めてそうするヤツはほとんどいない。そんなんじゃ、「あれはただのブームだったのか」「売名行為だったんじゃないか」と批判されたって仕方がないよ。
アイス・バケツ・チャレンジもまさにそうだ。みんなでワーッと盛り上がって、「カネの行方」「他に救うべき人たち」のことまで頭が回らない。結果的に、メディアに消費されるニュースのひとつでしかなくなってしまう。
まァ、ニッポン中でよさこい祭りをやったり、阿波踊りをやったり、サンバカーニバルをやったり節操ないお国柄だから仕方ないのかもしれないけど、派手なものに一気に流れるこの「軽さ」は、最近ちょっとヤバい。
大人の男たちには、そんな流されやすいこの国の危険な雰囲気を、どこかで感じ取っていてほしいと思うけどね。