トランプ米大統領を生み出したのは、
「インテリの傲慢」と「B層マーケティング」だ。
とうとうドナルド・トランプ大統領が誕生となったね。
最初は単なる泡沫候補と思われていたトランプが、結局、民主党候補のヒラリー・クリントンに勝っちゃったのは衝撃的だったよ。だけどトランプへの投票を「恥ずかしい」と最後まで隠してた「隠れトランプ」のアメリカ人が多かったって話は笑ったよな。
で、まるでそいつらが悪者みたいに言われちゃってさ。メディアが勝手に結果を予想して外しただけなのに、そりゃないだろってさ。
まァ、テレビ討論がまるで「夫婦の痴話ゲンカ」「ご近所トラブル」みたいになってたときから、この結果は予想できてたのかもな。ヒラリー・クリントンがトランプをセクハラ野郎扱いすれば、トランプも「お前のダンナもやったじゃねェか」みたいに言い返してさ。もう世界のトップを争ってる感じじゃない。こうなってくると、よりコント的に面白いのはトランプのほうなんだからさ。
レジオン・ドヌール勲章をフランスにもらいに行った時、オイラが『世界まる見え!テレビ特捜部』(日本テレビ系)でやったトランプの扮装をフランス人たちに見せたんだ。もうバカウケだったよ。ゲラゲラ笑ってた。「よく似てるけど、頭はもうちょっと薄い」なんてツッコミも入ってさ。
まァ、マジメなことをいえば、今回の件は、世界的に「インテリ知識層の限界」みたいなものがやってきてることのわかりやすい例だと思うんだよな。
ニッポンを見たってそうでさ。戦後からこのかた、「教養人」「知性派」と名の付く人は、やたら左がかった意見を言わないと認められなかった。右翼的発言やら、人権軽視やら、「民主主義的なもの」と相容れない思想は、全部「知性がない」というふうに笑われてきたわけだよな。それがいつの間にか「正論扱い」をされるようになってきて、安倍さんみたいな人が総理大臣になって、いつしか世の中の「真ん中」のほうに来るようになったわけだよ。
やっぱり、インテリ層の理想が、あまりにも机上の空論というか、現実感のないものとして捉えられるようになったからだよね。移民や人種の問題、麻薬や拳銃の拡散がここまで来ちゃったら、どんなキレイゴトを並べたって、まるで説得力がない。昔だったら、「移民は追い返せ」なんて主張するのは内在的に憚られるという国民性がアメリカにもあったけど、トランプが堂々と言ってるのを聞いて「もういいのかもな」と国民がみんな思っちまったってことじゃねェかな。
前のオバマ大統領なんてのは、見栄えもいいし、言ってることも立派だし、ノーベル平和賞までもらったけど、「じゃあ何をやったのか」って聞かれたらよくわからない。もしオバマが話す理想に世の中が近づいてたんなら、こんなことにはなってないかもしれないよな。
まァ、もうひとつは「ヒラリーが男にも女にも嫌われちまったな」ってのはあるよね。
ニッポン人に置き換えて考えると、元総理の奥さんが「私も仕事できるから総理やってみていい?」なんて言い出したら総スカンだよね。下手すりゃ夫婦合わせて16年、クリントンに牛耳られるのかって思っちまう。これはニッポン人的な感覚じゃなく、ある程度普遍的な価値観だったのかもしれないよ。
だけど、じゃあ実際トランプが何をやるかといったら、オイラは「何もできないだろう」に一票だね。トランプの危なっかしい演説の数々は、ある程度は本音の部分があるとしても、つまるところ選挙用のパフォーマンスだよ。クリントンという敵の前で「ウケる」と思ったことを言ってるだけでさ。例えるなら、自民党から民主党に政権交代するときに、当時の民主党党首の鳩山由紀夫が、「最低でも県外」なんて言ってやがったのとそれほど変わらないと思うよね。
TPPを止めたり、不法移民の取り締まりを厳しくしたりは多少するんだろうけど、結果的には大きく変わらないんじゃないか。
ヨーロッパもそうだけど、やっぱりアメリカってのは「安い移民の労働力が支えてる」って真実があるからね。移民を全部追い出したって、きっと白人の貧困層「プアホワイト」と言われてる人たちは、その移民と同じような給与水準じゃ働かないよ。
そうなると企業も競争力が落ちて、世界に太刀打ちできなくなる。そんなことになりかねないワガママを、アメリカで力を持ってる人たちが許したりしないよな。あんまりひどけりゃ、マジで暗殺されちゃう国だからね。
まァ、個人的にはトランプってのはけっこうクレバーなんじゃないかと思ってるけどね。共和党も周辺のスタッフに優秀なヤツをつけてガチガチに固めるだろうし、きっと「大統領らしく」進めていくことになるだろうよ。
「ニッポンや韓国を守ってやる必要はない」「核軍備したらいいじゃないか」なんて言ってるのも、したたかな計算なんじゃないかってさ。北朝鮮との危機を煽って、緊張をわざと高めておいて、ニッポンと韓国に武器を売りつけるという作戦かもしれないぜってね。
オバマ─クリントンの民主党ラインに比べりゃ、トランプは北朝鮮に強い態度で接しないって見方が多いけど、どうだかね。きっと時々、あの金正恩を「なんだあの髪型は。オレの自然なヘアスタイルを見習え」とか言って、挑発するんじゃないの。
だけど正直なところ、アメリカってのは、本当にまだまだスケールのデカい国でさ。やっとしゃべれるけど、2016年はハリウッド映画版の『攻殻機動隊』の撮影で大変だったんだよ。ハリウッド女優のスカーレット・ヨハンソンと、ニュージーランドやらで共演してきたんだよな。もう、撮影現場でのカネのかけ方から、宣伝費用に至るまで、ニッポンとは比べものにならないよ。オイラの映画なんて、100本くらい軽~く撮れそうな勢いでさ。
で、プロデューサーが、「ロスとかニューヨークじゃ試写はしない」みたいなことを言ってたんだよな。そういう都会でウケたって意味はないんだって。試写をやって反応を見るんだったら、そういう大都市じゃなくて、とんでもない田舎の映画館だって。つまり「アメリカの田舎者にウケる映画が一番ヒットするんだ」って意味らしくてさ。
カネはかけるけど、カネと情報を持ってる知識層じゃなくて、トランプに投票したような人たちを、そもそもターゲットにしてるってことなんだよ。マーケティングをして、ワザとそうしてるわけ。
これを聞いて「ああ、トランプの選挙戦ってのは理に適ってたんだな」と、ミョーに納得しちまったよ。
そう言えば、オイラはゼンゼン知らなかったんだけど、担当編集者のアンチャンが仕入れてきた情報によれば、ネット上じゃ「トランプが大統領になるのは、ニッポンでビートたけしが大統領になるようなもの」って論調があるんだって?
オイラが「核武装しちゃえ」とか「ジジイ・ババアを姥捨て山に」なんてヒンシュク丸出しのネタをやってるうえに、トランプと一緒で過去にスキャンダルを山ほど抱えてるってことで「似てる」って声が出てきてるらしいんだけどさ。
別に「なるほど」と納得するのは勝手だけど、この論はひとつ大きなことを忘れているよ。オイラは若い頃から「笑いのネタ」としてこういう話をしていて、要はこういう極端な話で「政治」やら「社会」のヘンな部分を横から突っついているわけだよ。一方でトランプは、「政治」という土俵に乗っかって、大マジメに極論を言ってるわけだよな。
これってたとえ同じ「極論」を説いていたとしても、そのスタンスは真逆だぜ。こっちはお笑いだから許されるんであって、トランプみたいに拳を振り上げたことなんてないんでさ。そのことに気がつかなきゃダメだよ。
だけど、その説に乗っかって、オイラが「トランプに倣ってオイラも!」って極端な政策で選挙に出たら笑うよな。
トランプの移民排斥に対抗してどうすりゃいいんだ? 「足立区と他の東京23区の間に『足立区の壁』を築く」って感じか? バカヤロー、オイラが足立区側で締め出されちゃうじゃないかって(笑)。あとは、山形人排斥運動だな。ビートきよしさんみたいな田舎くさいのを、東京から全部追い出しちゃうというね。
う~ん、自分で言ってて情けなくなってくるぜっての! ジャン、ジャン!