あとがき


『キミの忘れかたを教えて』という物語は、私の実体験や抱いていた想おもいを礎にしています。私が通っていた中学校では、先輩たちの真似まねをして後輩も音楽を始めるという伝統があり、私も同級生五人でロックバンドを組みました。

 地元の夏祭りや中学の文化祭で演奏したことは、今でも友達と語り合いますし、音楽を仕事にしている友達もいます。

 様々な思い出が詰まった母校は統廃合により、もうありません。

 懐かしい、と感じるような校舎も無くなりました。

 それから数年の月日が経過し、私は就職のために都会へ移住。職務の合間を縫って帰省するたびに、地元の風景は少しずつ、少しずつ、変わっていきました。

 住人が減ることにより、集う場所の衰退も避けられません。

 潰れた店舗の跡地に真新しい葬儀屋が建っていたときは、どことなく寂しさがあったのを覚えています。

 交流のあった地元の人も、私が大人になるにつれて徐々にいなくなっていきます。実子とは別居していた近所のお爺じいさんが孤独死していたのを知りました。

 逆らえない時代の流れだと理解しつつも、もどかしい心境を形にしたい。伝えたい。

 二十代の若造が「何かを書きたい」と願った動機としては充分ではないでしょうか。

 商業的な面は考慮していない企画にも拘かかわらず「こういう良い話がポシャるのはもったいないと思いますので」と、前向きに進めてくださった担当さん。感謝に堪えません。


 旅たび名な川がわという架空の田舎町で紡がれる不格好な恋。

 執筆・改稿していた春先ごろ、シンガーソングライターの石いし崎ざきひゅーいさんがリリースした〝ピリオド〟という曲を聴いていました。

 別れた彼女を想う男の女々しい感情を表した切ない歌は、主人公の修しゆうにも共通するところがあり、私が無意識に雰囲気を重ねていたのかな──とも思います。

 このような悲恋のバラードを鞘さや音ねは好み、修は青春パンクが好きなんですけど、本編ではあまり触れられませんでしたね。

 物語を彩るイラストはフライさんがいい、独特の透明感や色彩を描くことができるのはフライさんしかいない──そう思って担当さんに要望を出したところ、有難いことに引き受けて頂きました。素敵なイラストが届くたび、素直に感動してしまいました。

 フライさん、お忙しい中で本当にありがとうございます。

 この物語は、ここまではプロローグであり、完結はしていません。

 もしかしたら、結末は書かないほうがいいのかもしれません。

 それでも見届けてくれる人がいるのなら、最後まで書き続けたいと思っています。

あまさきみりと